第285話 ただの八つ当たり

「えっ……」


 レヴィア様、なにを……レヴィア様もフラン先輩とオネットさんが。

 Sランク冒険者〝破炎〟と〝七色の魔女〟が悪魔狩りデーモンハンターだってことは、以前から知ってたみたいだし。


 2人が悪魔狩りになった理由。

 フラン先輩達の過去にあった、悪魔族デーモンとの因縁……2人が背負っている業も、たった今フラン先輩本人の口から語られた。


 フラン先輩とオネットさんが悪魔族を憎悪する理由は、レヴィア様とベル様を倒そうとする理由は明白!

 なのにフラン先輩達の事情を聞いてなお、なんの関係がって!


 いやまぁ、レヴィア様やベル様の気持ちもわからなくはないけども!

 そんないい方しちゃうと、また火に油を注ぐ結果に……!!


「貴様ぁっ!!」


「フラン! 落ち着いてっ!!」


 ほら! やっぱりっ!!

 フィルとマリア先生は諦観したようすだし、ルミエ様に至っては面白そうに観戦モード!

 私だけでどうやったらいいのっ!?


「あっ! なるほど、なるほど〜。

 私わかっちゃったかも〜」


「ベル、なにがわかったのですか?」


「ふふふ〜ん、あの人達が私達を敵視する理由〜」


「あぁ、それですか。

 どうやら彼女達は私達を、自らの故郷を滅ぼした悪魔とやらと、悪魔族デーモンというか理由で一括りにして同一視しているようですね」


「むぅ〜、レヴィアちゃんひど〜い!

 なんで先に言っちゃうのよ〜!!」


 ベル様ったら……って! 和んでる場合じゃないっ!!

 レヴィア様とベル様を見てたら、いつも通りすぎるやり取りで和んじゃいそうになるけど……


 片やフラン先輩とオネットさんは、武器を構えて魔力を迸らせて殺気立ってるし。

 今はまさに一触即発の状況なんだから!!


 フラン先輩達の過去を聞いちゃったし、もうこれ以上フラン先輩を止めることは……できそうにない。

 となれば私にできるのは、周囲への被害を可能な限り軽減することのみっ!!


「まぁとりあえず、座ってお茶でも飲みませんか?」


「なにをっ!」


「貴女達が悪魔を憎悪する理由はわかりました。

 しかし……同じ悪魔族デーモンだからといって、我々を貴女達の故郷を滅ぼしたという悪魔と同一視されては困ります」


「そうだよ〜! 私達は善良な悪魔なのにね〜」


「ふざけるなっ!!

 貴様ら悪魔に善良な者などいるものかっ! お前らは卑劣で残虐で、人を弄んで痛ぶる事を好む外道だ!!」


「えぇ、現にあの悪魔は私達の故郷を滅ぼした。

 しかもあんな非道な事まで……それがお前達、悪魔族が下劣な存在だという何よりの証拠です」


「では聞きますが、私達が貴女達になにをしたと?」


「だから貴様らは私達の……」


「それは私達がした事ではありませんよね?」


 そう、確かにフラン先輩達の故郷を滅ぼしたのは悪魔族だったんだろうけど……その悪魔は当然だけどレヴィア様達じゃあない。


「貴女達の言い分では、私達が悪魔族だからと敵視されているようですが……私達は貴女達になにもしていない。

 これは揺るがない事実です」


「うんうん!」


「貴様らは悪魔だろうがっ!!」


「話が進みませんね。

 ソフィーちゃんが嫌がっているから、戦いたくはないのですが……」


 レヴィア様っ!


「そうですね……貴女達の言い分では、全ての人間も……いえ、人間こそが悪となりますよ?」


「「は?」」


「だってそうでしょう。

 貴女達は我々が貴女達の故郷を滅ぼした者と同じ、悪魔族だから悪だと言っているのですよ?

 ならば仮に殺人を犯した罪人が一人いれば、その者と同じ人間である貴女達は全員が悪ということになります」


「そもそも! 悪魔族わたしたちがこの世界に生まれた原因も、人間共の卑劣で下衆な愚行が原因。

 貴様らに我らを非難する資格はない」


「「っ!!」」


 ベ、ベル様が……なんか怖い。


「って! ことに、そっちの言い分だとなっちゃいますよ〜?」


 いつものベル様に戻った……


「とにかく、悪魔族だと一括りにして敵意を向けるのはやめていただけますか?

 我々悪魔にも個々の意思があり、感情があり、考えがあります」


「そのとお〜り!」


「貴女達がやっていることは、私達から見れば……ただの八つ当たりの大量虐殺。

 貴女達の故郷を滅ぼしたという悪魔のそれと、なんら変わりない行動です」


「「っ……!!」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る