第284話 2人の業

 レヴィア様もベル様も、そんなことをいっちゃうと……


「貴様っ! 私達をおちょくってるのっ!?」


「巫山戯るのも大概にしなさい!!」


 ほら! やっぱり火に油を注ぐことになっちゃったじゃないですかっ!

 フラン先輩もオネットさんもめっちゃ怒ってるんですけど! いますぐにでも飛びかかりそうなほどに殺気立っちゃってるんですけどっ!!


「み、みなさん! 落ち着いてっ!!」


 というか! ルミエ様は……まぁいいとして、なんでフィルもマリア先生もそんなに落ち着いてるのっ!?

 ここで双方が衝突すればどんなことになるのかくらい、わかってるはずなのにっ!


「フィルもなんとかいって!」


「いやそう言われても……事ここに至っては、部外者である僕達がどれだけ言葉を尽くしてもあまり意味はないと思うよ?」


「フィル……」


「まぁ……フランとオネットはともかく、残念だけれど私達ではこの2人を止めるのは不可能。

 ここまできたらもう、なるようにしかならないわ」


「マ、マリア先生まで……って!」


 ちょっと待って!

 マリア先生今なんとっ!?


「マリア先生でもレヴィア様とベル様を止めるのは不可能っ!?」


 前々から約400年前にあった世界中を巻き込んだ大戦、聖魔大戦においてその力を奮い。

 その武勇は400年経った今でもなお、世界中に轟いている大英雄!


 世界三大学園の一角であるオルガマギア魔法学園の学園長にして、四大国が一角に名を連ねる魔導学園都市王国を統べる女王陛下。

 大賢者と謳われるマリア先生!!


 そんなマリア先生と、単独で人類を滅亡させられるだけの力を持つとされる存在である特Sランク、神災級。

 その中でもルミエ様をもってして、最上位に位置するといわしめる大悪魔!


 七魔公と呼ばれているらしい、悪魔界を統べる七柱の悪魔公デーモンロードが二柱!!

 伯爵位の悪魔公であるレヴィア様と、子爵位の悪魔公であるベル様。


 確かに前から戦ったらどっちが強いんだろうって、地味に気になってはいたけども!

 こんなにあっさりとマリア先生が! 人類の大英雄が負けを認めるなんてっ!!


「それに……ソフィーちゃんといる時の態度からは想像できないでしょうけど、彼女達は残虐非道で無慈悲な大悪魔よ。

 彼女達とはもう二度と戦いたくないわね」


「へっ?」


 礼儀正しい常識人で私を甘やかしてくれるレヴィア様と、和やかな雰囲気でマイペースなベル様が残虐非道で無慈悲……?


「それは聞き捨てなりませんね。

 ソフィーちゃんに変な事を吹き込まないでいただけますか?」


「そうだよ〜! 私達のどこが残虐非道で無慈悲なの〜?

 ベルちゃん、断固抗議します〜!」


「はぁ……とりあえず、やり合うのは勝手だけど、私の学園に被害を出さないようにしてもらえるかしら?

 特に今は……貴女達もわかっているでしょう?」


「えっ?」


 なになに? どういうことっ!

 マリア先生の意味深な言葉はなにっ!?


「当然わかっています」


「もちろんで〜す」


 えっと……マリア先生とレヴィア様達の会話についていけてないのは私だけかな?


「フィル、どういうことかわかる?」


「さぁ? 見当もつかないよ」


「だよね」


 というか! それ以前にこの状況をどうにかしないとっ!!


「それで……貴女達2人は確かに人間にしては、それなりに強いようですが、本当に私達と遊びたいのですか?

 私としては、特に貴女達と争う理由もないのですが」


「ね〜」


「ふざけるなっ!

 私達をなめるのも大概にしろよっ!!」


「フラン、落ち着いて。

 冷静を欠いたら悪魔共なら思う壺よ」


「はぁ、困りましたね。

 そもそも、なぜ貴女達は私達を敵視するのです?」


 なぜって……フラン先輩とオネットさんは悪魔狩りデーモンハンターを生業とするSランク冒険者。

 それに悪魔族との因縁が……


「なぜだと!!

 いいだろう、教えてやる!」


「フランっ!」


「私とオネットねぇは同郷。

 そして私達は幼い頃、お前達に悪魔に……卑劣な悪魔に! 私とオネットねぇの故郷は滅ぼされたっ!!」


「「……」」


 やっぱり、そんな因縁が……これが死に物狂いで実力を伸ばし、Sランク冒険者にまで上り詰めたフラン先輩とオネットさんが背負う業。


「それだけじゃないっ! 私達の故郷を滅ぼした悪魔は、わざと私とオネットねぇだけを見逃した。

 私達の目の前で私達の両親を、妹を、弟を……家族をなぶり殺してっ!!」


「フラン、フラン! もういいわ、それ以上はもう……」


 あんなに天真爛漫って雰囲気だったフラン先輩が、呼吸を乱して涙を流して……そんなフラン先輩を抱きしめるオネットさん。

 なんで声を掛ければ……


「なるほど、貴女達の事情はわかりました。

 ですが……それと私達が争うことになんの関係が?」

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