第283話 なぜ戦う必要が?

 ちょっとどうすればっ!

 フラン先輩もオネットさんも武器に手をかけて、臨戦体制で身構えちゃってるじゃないですかっ!!


 いやまぁ……いくらフラン先輩達が世界に名高いSランク冒険者とはいえ、レヴィア様達に勝てるとは思えないけど。

 レヴィア様とベル様に軽くあしらわれる未来しか見えないけども!


 そういう問題じゃないっ!!

 もし仮に、もしここで! フラン先輩、オネットさんとレヴィア様、ベル様が激突すれば……周囲にもたらされるであろう被害は想像を絶するっ!


「え、えっとですね!」


 ここは学園内にある応接室。

 つまり、近くには生徒達も大勢いるわけで……オルガマギア魔法学園の一生徒として!

 そしてなによりも先生として!!


 こんな場所で人類最強の一角に数えられるSランク冒険者と、間違いなくこの世界でもトップクラスの実力を持っているだろう悪魔族デーモンの支配階級に位置する悪魔公デーモンロード……七魔公の衝突なんて。

 それだけはなんとしてでも回避しなければっ!!


「これはですね……」


 な、なんでいえば、この場を穏便に収められるっ!?


「そうですね。

 私達は悪魔族デーモンです」


「レヴィアちゃんの言う通りです〜」


「レヴィア様! ベル様っ!!」


 なんでそう落ち着いてるんですかっ!?


「ソフィーちゃん達とどういう関係なのかは知らないけど……貴女達が! いや、お前達が悪魔だっていうのなら関係ないっ!!

 お前達はこの場で私達が倒すっ!!」


「フラン、油断したらダメよ。

 さっきの転移、この2人は他の悪魔共とは格が違うわ」


 そう! 私も冒険者になるときに受けた特別推薦試験とかで、悪魔族デーモンと戦ったことはある。

 けどオネットさんがおっしゃる通り、レヴィア様とベル様は他の悪魔族デーモンとは文字通り格が、次元が違うっ!!


 現在明らかになっている悪魔族の階級は5つ。

 下から順に最下級ベビー下位レッサー一般ノーマル上位グレーターそして最高位アーク

 このうち、私が特別推薦試験で倒したのは下から二つ目の下位悪魔レッサーデーモン


 それでも冒険者ギルドで定められている危険度はAランク。

 厄災級に数えられ、単騎で都市に甚大な被害をもたらせる脅威とされているほどに、悪魔族デーモンとは危険で強大な存在なわけだけど……


「わかってる!

 おそらく私達が感知していた強大な魔の気配はコイツら……けど今度は逃がさないっ!!」


「えぇ! もちろんよっ!!」


 まずい! なんとかして、双方の衝突を回避しないと!!

 確かに悪魔族には5つの階級が存在し、悪魔間でのこの階級差は一部の例外を除いて絶対的な意味を、力の差を持つ。

 ここまでが現在判明していることだけど……


「待ってくださいっ!」


 レヴィア様とベル様いわく、悪魔族デーモン……古くは悪魔種と呼ばれていたらしい、この種族には基本的に5つではなく、6つの階級が存在する。


 そして、その6つ目の階級こそが……レヴィア様とベル様が位置する階級。

 最下級ベビーから最上位アークの5つの階級の……


 精神生命体である悪魔族が住う、魔界もしくは悪魔界と呼ばれる異空間に存在する全ての悪魔達を統治する、たった数名の爵位持ちの大悪魔。

 それこそが悪魔公デーモンロードと呼ばれる存在。


 その危機限度は文句なしの神災級。

 特Sランクに数えられ、しかも他の神災級の存在の中でも悪魔公デーモンロードは最高位に位置する存在!

 ルミエ様ですら勝てないと断言するほどの存在なのだ!!


「まずは落ち着いて話を……!!」


 このままだと周囲への被害もだけど、レヴィア様とベル様の気分次第でフラン先輩とオネットさんが殺されちゃうっ!!


「悪いけど……いくらソフィーちゃんのお願いでも、そのお願いだけは聞けないよ」


「えぇ、ソフィーさんとあの悪魔共の関係はわかりませんが。

 この場であの悪魔共は確実に抹殺します」


「っ〜!」


 取りつく島もないっ!

 いったいどうすれば!? こうなったらもう、マリア先生やフィル、ルミエ様と一緒にフラン先輩達を力ずくで拘束するしか……


「お遊びならば、お付き合いますが……貴女達となぜ戦う必要が?

 私達に戦う必要も理由もないと思いますが?」


「「は?」」


 えっ? レヴィア様……?


「そうだよね〜。

 遊んで欲しいっていうなら付き合ってあげちゃうけど〜、その人間達と戦う理由がないもんね〜」


 ベ、ベル様まで……これはいったい、どういう……?

 

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