第282話 いまなんて……?

「いま、いきなり……」


「こんな事って……」


 まぁ……フラン先輩とオネットさんが唖然としちゃうのも無理はない。

 だって本当に突然、一切なんの前兆もなく転移して現れたわけだし。


 転移魔法を使うと、本来は転移先の空間に存在する魔素エネルギーが前兆として揺れ動く。

 たとえそれがどれだけ熟練した者でも、私やアルトお兄様でもそれは変わらない。


 転移先の空間に存在する魔素をどれだけ動かさずに転移するか、それで転移魔法における術者の技巧が見て取れるといってもいい。

 熟練した者であればあるほど、魔素の動きは小さくなる。


 けどそれはあくまでも小さくなるだけであって、ゼロになるわけではない。

 よって! Sランク冒険者として優れた感知力を誇るであろうフラン先輩達が、突然現れたレヴィア様達に驚くのは至極当然!!


「ふふっ」


 だがしかしっ! ルミエ様やマリア先生。

 そして……七魔公と称される悪魔公デーモンロードたるレヴィア様やベル様は、まったく魔素を動かさずに転移することができる!!


 レヴィア様とベル様いわく! 精神生命体にして自らの魔力によって肉体を構築する悪魔族デーモンは、この世界で最も魔法の扱いに長けた種族!!

 そしてレヴィア様達クラスともならば、当然のように魔素すらも支配下に置いているのだとか。


 つまり! 周囲の魔素を完全に支配下に置いているレヴィア様達には、まったく魔素を動かさずに転移することなんて容易いであるっ!!

 私も初めてこの話を聞いたときは、それはもうびっくりし……


「ん?」


 ちょっと待って。

 周囲の魔素を支配下に置けば、なんの前兆もなく転移することができるってことは……今の私なら、その気になればできるんじゃ……


「ふふっ、その通りですよ」


「っ!! マジですかっ!?」


 本当ですか! レヴィア様っ!?


「えぇ、もちろん。

 まぁ尤も、多少の練習は必要でしょうけど……ソフィーちゃんなら、すぐにできるようになると思いますよ」


「っ〜!!」


「ふふふ〜! 今日はソフィーちゃんが到達者になったお祝いも兼ねてるんだよ〜!

 プレゼントも期待しててね〜!!」


「レヴィア様、ベル様!

 ありがとうございますっ!!」


 確かにレヴィア様もベル様もよく遊びに来てくれるけど、お2人揃って来ることはあまりないから不思議に思ってたけど……まさか私が到達者になったことを知って、わざわざお祝いに来てくれてたなんて!!


「ちょっと今、聞き捨てならない事が聞こえたんだけれど……」


「ふふっ、2人の言ってる事は事実よ」


「あの、到達者ってなんなんですか?」


「まぁいいわ。

 到達者については……後でソフィーちゃんから直接聞きなさい。

 今はそれよりも……」


「ちょっとなんの話をしてるのかはわからなけど、貴方達だれっ!?」


「はっ!」


 わ、私としたことが、ついついこの状況のことを失念していた!

 なんらかの因縁があって悪魔を追う悪魔狩りであるフラン先輩とオネットさん、そして大悪魔であるレヴィア様とベル様が同じ室内で対面しちゃった!!


「ど、どうすれば……」


「あら、貴女達は見ない顔ですが……なるほど、人間にしてはそこそこ強い方ですね」


「う〜ん、フィルくんと同等くらい?」


「マリアさん、この方達は?」


「Sランク冒険者の2人で、貴女達に用があって来そうよ」


「ちょっ!」


 マリア先生っ!? なにをいってるんですかっ!!


「初めまして、私はオネット。

 七色の魔女と呼ばれるSランク冒険者です。

 それでこちらが……」


「フランです!

 私も破炎って二つ名で呼ばれてる、Sランク冒険者です!!」


「七色の魔女に破炎……あぁ、悪魔狩りデーモンハンターをされているSランク冒険者の方ですか」


「おっ、私達のことを知ってるの?」


「もちろんです」


 よかった。

 さすがは聡明なレヴィア様! これならレヴィア様とベル様が悪魔の中でも、最高位に位置する悪魔公デーモンロードだってことがフラン先輩達にバレる心配は……


「私はレヴィア。

 いと尊き御方にお仕えする七魔公が一柱ヒトリにして、悪魔界を統べる大悪魔に数えられる伯爵位の悪魔公デーモンロードです」


「「「えっ……」」」


 レ、レヴィア様、いまなんて……?


「同じく〜! いと尊き御方にお仕えする七魔公の一柱ヒトリで、子爵位の悪魔公デーモンロードです〜。

 よろしくお願いしますね〜!」


悪魔公デーモンロード……」


「貴女達が、悪魔……」


 ベル様まで!?


「「っ!!」」


 あぁ、もうっ! なんでバラしちゃうんですかっ!!

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