第280話 2人の目的

 本題、か。

 確かにこんなことで時間を無駄にしてる場合じゃなかった。

 なんだかんだで、一緒にソファーに座って、なぜか抱きしめられていたけど……


 フランさ……フラン先輩とオネットさんは、学園を守護するためにマリア先生が展開していた結界を破壊した襲撃者。

 フラン先輩達がなんでこんなことをしでかしたのか、その目的を聞き出さないと!


「そうですね。

 フィルももうすぐ戻ってくると思いますし」


 当然、フラン先輩達も私達がそちらの目的を聞き出そうとしていることには気づいてるはず。

 状況的に優位に立っているのは、圧倒的に私達!


 だってこの場所には私とルミエ様とフィル、Sランク冒険者パーティー〝トリニティ〟と、大賢者たるマリア先生がいるわけだし。

 戦力的にフラン先輩達に勝ち目はない。


 とはいえ……仮にも世界三大学園の一角であるオルガマギア魔法学園を襲撃してくるくらいだし。

 相当の覚悟と理由があって、実行に移したはず。


 それにフラン先輩とオネットさんは、人類最強の一角に数えられるSランク冒険者。

 そう簡単に学園襲撃の目的をはいてくれるとは思えな……


「本題って?」


「へっ?」


「「はぁ……」」


 フ、フラン先輩?

 マリア先生とオネットさんは呆れたようにため息をついてるし、この微妙な空気は……



 ガチャ



「お待たせしました……って、何かあったのですか?」


 まぁ、そう聞きたくなるのもわかる。

 だってこの部屋には凛とした表情の私を省けば、呆れたようにため息をついてるマリア先生にオネットさん。

 そして……そんな2人を見て、顔を顰めて首を傾げてるフランさんが、扉を開けたらいたわけだし。


 まぁなんにせよフィル! ナイスタイミング……っていっていいのかはわからないけど、とにかく! よくぞ戻ってきた!!

 この期にこのいたたまれない、なんともいえない微妙な空気を払拭しなければ!


「こほん! と、とにかく!!

 フィルも戻ってきたことですし、先程マリア先生がおっしゃっていた通り、早速本題に入りましょう」


 よし! これで軌道修正できたはず!!

 とりあえず……今のフラン先輩の反応で、そう簡単に目的を白状するつもりはないことはわかった。

 となれば! こっちも本腰を入れていこうじゃないっ!!


「むむっ! ソフィーちゃんもだけど、さっきから本題ってなんのことを言ってるの?」


 ほほう、やっぱりシラを切るつもりのようですね。

 私の巧みな話術、で目的を聞き出すのもいいけど……どのみちフラン先輩達に逃げ道はないわけだし!

 ここは面倒な駆け引きはなしでいってやるっ!!


「ズバリ! フラン先輩とオネットさんはいったいなんの目的で、世界三大学園に数えられる我が校。

 オルガマギア魔法学園に襲撃してきたのか、です」


 ふっ、シリアスな雰囲気を醸し出しながら、完璧に決まったわ!!


「えっ?」


「っ!!」


 むふふ! フラン先輩達もこんなに直球で聞かれるとは、さすがに思ってなかったみたいね。

 これで逃げ道はなくなった! さぁ、どうでるっ!!


「あはは! もうソフィーちゃん、なに言ってるのさ〜。

 私達は学園を襲撃なんてしてないよ?」


「……へ?」


 フ、フラン先輩? 学園を襲撃してないって、でも実際にフラン先輩が学園の守護結界を破壊してるわけだし……


「えっ? えっ?」


 ど、どういうこと!?


「まったく〜、どうして私達が学園を襲撃したなんて思ったの?」


 どうしてもなにも、だってフラン先輩が……


「えっと、その……」


 なにこれ!?

 学園の結界を破壊したから襲撃だと思ってたけど違うの!? 私が間違ってるの!?


「本当にフランがすみません。

 この子は短絡的と言いますか……あんな事をしておいて言い訳にしかなりませんが、本当に襲撃の意思はないんです」


「ちょっと! 私のどこか短絡的だっていうの!?」


「実は、私達はとある目的のためにこの学園を訪れたのですが」


「えっ! 無視っ!?

 無視とか酷くないっ!?」


「校門での手続きをしている間に、フランがふらっと姿を消して……」


「気づいた時には、私が展開している学園の結界を破壊していたと」


「……はい。

 そしてなぜこの子がそんな行動に出たのかというと、恐らくですが……手続きをしている時に担当の方が、結界を通るための許可が必要になるため少し時間が欲しいとおっしゃって」


「そっ! だから手っ取り早く、私が結界を破壊してあげたってわけ!!」


「と、言うわけです……」


「「「……」」」


 得意げにふふん! と胸を張ってるフラン先輩。

 反対に疲れたような表情で目頭を押さえて、項垂れるオネットさん。


 なるほど。

 さすがは冒険者ギルド総括グランドマスターたるガルドさんをもってして、個性の塊といわしめるSランク冒険者だわ……


「まぁ、結界の件はわかったわ。

それで、貴女達が我が学園に来た理由はなんなのかしら?」


「それは……」


「ちょっと前にこの地で強大な魔を感知したからだよ」

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