第279話 本題に入りましょうか?

「あ、あのぉ……」


 なにこれ? なんなのこの状況?


「あぁ〜! ソフィーちゃんのお肌スベスベェ〜!!」


 恍惚とした……とろけたようなだらしない表情で、私に抱きつくフランさん。


「ちょっと! フランっ!!」


 そんなフランさんを叱りつけて、私から引っぺがそうとしているオネットさん。


「うへへ! ほっぺた、もちもちぃ〜!」


「もう! フラン、いい加減にしてくださいっ!!」


 そして……


「あはは、ソフィーはモテモテだね」


「ふふっ、本当ね」


 そんな私達を微笑ましそうに見てるフィルとマリア先生っ!

 あれから、マリア先生が仲裁に現れて、とりあえず全員で応接室に移動したのはいい。

 けどもう一度いう、なにこれっ! なんなのこの状況はっ!?


「……」


 というか! 見てるんなら助けてよっ!!

 この視線に! 私の助けを求める視線に気付いてないはずがないのにっ!!


「フィル、お茶の準備をお願いできるかしら?」


「わかりました」


「うっ……」


 この薄情者っ!

 フィルもマリア先生も薄情だわ! この状況で、私の助けを求める視線に気付いてるくせに、知らないふりをするなんてっ!!


 マリア先生は……仕方ないけど、フィルめ! 覚えてなさいよ〜。

 絶対に! 絶対にあとでミラさんとか、ファナとか、ミネルバに報告してやる!!


「ふふふふふ」


 私を見捨てた罪は重いのである。


「あれ? なんかちょっと悪寒が……気のせいかな?」


 フィルめ……本当にお茶の準備をするために部屋を出ていきやがった。

 これで、私を見捨てたフィルが、あとでミラさん達から詰められる未来は確定したわけだけど……


「う〜ん」


 今更だけど。

 本当に今更だけど、フィルは四大国が一角にして、ネフェリル帝国と並んで超大国と称される、レフィア神聖王国の第一王子。


 つまりは王族の中の王族!

 なんだけど……そんな立場にも関わらずお茶の準備をさせられてる。

 しかも当人も当然のように行ってるって、どうなんだろ?


「んん〜? ソフィーちゃん、どうかしたのかな〜?」


「いえ、別に大したことではないのですが……」


 って! そうじゃない!!

 フィルが超大国の王子様なのにお茶汲みをしてることも結構な問題だけど、今はそうじゃなくて……


「あ、あの! フランさん」


「ダメダメ! 言ったでしょ?

 私を呼ぶときはフラン先輩って呼ぶように!」


「す、すみません。

 それではフラン先輩」


「ふふっ、な〜に?」


 そんな満面の笑みを浮かべて、大変楽しそうにしてらっしゃるところに、こんなことをいうのはなんか大変申し訳ないんですけど……


「そろそろ離してほしい、です」


「……」


「あ、あの? フラン先輩?」


 急に黙り込んでどうし……


「オネットねぇ!」


 おぉ〜、見事な速度でヒシッ! ってオネットさんに抱きついた!!


「ちょ、ちょっと! フラン!?」


「今の! 今の見たっ!?

 ちょっと恥ずかしそうに、それでいてちょっと申し訳なさそうにモジモジするソフィーちゃんの姿っ!!

 やばい、私もうソフィーちゃんと結婚する!」


「へっ?」


 け、結婚?

 こう見えて、仮とはいえ私には婚約者がいるんですけど。

 いや、その前にフランさんと私は同じ女性同士だし……


「はぁ……仕方ないわね。

 ソフィー、少し落ち着いて」


「ル、ルミエ様!」


「っ!! いきなりとんでもない美女がっ!!

 ちょっとオネットねぇ、今の見た!? 今の見てたっ!?」


「フラン、貴女も少しは落ち着いてください。

 重ね重ねうちのおバカさんが、申し訳ありません……」


「いえ」


 まぁ……Sランク冒険者達は良くも悪くも個性の塊! って、冒険者ギルドの総括グランドマスターであるガルドさんもいってたし。


「それよりも紹介します。

 こちらは……」


「ルミエよ」


「私達のパーティー〝トリニティ〟の一員です」


「やはり貴女が白帝……私はオネット、こっちのおバカ何フランです」


「ちょ! おバカって!!」



パンッ!!



「はい! そこまでよ」


 おぉ〜! さすがはマリア先生!!

 地味にカオスと化していたこの場を、魔力を乗せた拍手一回だけで一瞬で黙らせた!


「お互いに自己紹介も終わったようだし……フィルが戻ったら、そろそろ本題に入りましょうか?」

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