第278話 Sランク冒険者

 いきなり上空から急下降してきて、頭を下げるボンッ! キュッ! ボンッ!! な、青い髪をした美女。

 そして、そんな謎の美女に頭を押さえて、頭を下げさせられているフランさん。


「……うん」


 なにこの状況?


「えっと……フィ、フィル、どうしよう?」


 もうちょっと意味がわかんないんですけど。

 フランさんが私達の先輩で、破炎の二つ名で呼ばれるSランク冒険者で、学園の襲撃犯で。

 そらでそれで……


「と、とりあえず! フランさんと貴女には、詳しく事情を聞かせてもらいますからねっ!!」


 いくらフランさんが先輩であろうとも、この学園を襲撃してきた事実は変わらないんだし!

 私のやるべきことも変わらないっ!!

 いま私がやるべきことは……


 学園の結界を破壊して、私の平穏な日常を奪い去ったフランさんとその仲間と思しき謎の美女を捕縛!

 そして、なぜ学園を襲撃したのか、その理由と目的を聞き出すことっ!!


「ちょっと! オネットねぇ、いきなりなにするのっ!?」


「いいから! フランは黙ってなさい!!

 あれだけ勝手なことはしないようにって言ってたのに、とょっと目を離したらこんな騒ぎを起こして……」


「っ!?」


 ま、またしても華麗に無視されただとっ!?

 フランさんも、あのオネットって美女も……んん〜?


「オネット……?」


 ちょ、ちょちょちょちょっと持ってっ!

 その名前にもものすご〜く、聞き覚えがあるんですけどっ!?


「ね、ねぇ、フィル」


「なに?」


「フランさんが、あの人のことをオネットって。

 聞き間違いかな?」


「いや、確実にそう言ったね」


 だよね! 聞き間違いじゃないよねっ!?


「じゃ、じゃあだよ?

 あ、あの人って……まさか?」


「まぁ……破炎のフランと行動を共にしてるみたいだし、間違いないと思うよ」


「っ〜!!」


 となると! となるとだよ!?

 この青い髪の美女が! 今目の前にいること人が! フランさんと言い合いをしてること人こそがっ!!


「あ、あの!」


「あっ! そうだった、ソフィーちゃん達にも紹介するよ。」

 この実にけしからん身体をしてるのはぇっ!?」


「もうフランは黙っていてください」


「またまたぁ〜、恥ずかしがっちゃってぇ〜!」


「いいですね?」


「あっ、はい……すみません」


 おぉ〜! あのフランさんを一睨みで黙らせた!

 わかる! わかるよ! やっぱり美女の睨みって、有無をいわさない迫力があるもんね。


 お父様もよく、お母様に叱られて同じような光景になってるし。

 揶揄ってやろうって顔だったフランさんが、思わず謝っちゃうのも仕方がない。


「こほん、改めまして、私はオネットと申します」


「知ってます!

 Sランク冒険者が1人、七色の魔女オネットさんですよねっ!?」


「ふふっ、有名な白銀の天使さんに知ってもらえてるなんて、光栄です」


「ほぇ〜っ!!」


 オネットさんが! 七色の魔女が私のことを知ってたっ!!


「はいはい。

 ソフィー、少し落ち着いて」


「はっ!」


 そ、そうだった。

 オネットさんが私のことを知ってくれてたってことは、確かにうれしい。

 それはもう小躍りしたいくらいに嬉しいけど……


 そのオネットさんと、フランさんが。

 2人のSランク冒険者が、学園の襲撃者だというに! 今は敵だということは変わりない!

 取り乱してる場合じゃない! 気を引き締めないと……!!


「この度はこのおバカが。

 私のパーティーメンバーがご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんっ!!

 私達に敵対の意思は一切ないんです」


「へっ?」


 敵対の意思はないって……まぁ確かにフランさんも全然本気じゃなかったみたいだし。

 そのあとはなんかめっちゃフレンドリーな感じだだけども。


「それはいったいどういう……」


「むっ! ちょっと〜、さっきからおバカおバカって、流石に失礼じゃないかなっ!?」


「おバカだから、おバカと言っているの」


「なにを〜! ちょっとけしからん身体をしてるからって、調子に乗って!!」


「なにを言ってるのよっ!

 身体つきのことは関係ないでしょうっ!?」


 おおう、また言い合いが始まってしまった。


「……ふむ」


 なるほど。


「Sランク冒険者は実力は確かだけど、その分自分勝手というか、キャラが濃い人が多いって聞いてたけど……なんか納得した」


「そういうソフィーも大概だと思うけどね?」


「えっ? 今なにかいった?」


「いや、なんでも」

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