第272話 到達者

「ふふふ……」


 燦々と照りつけていた太陽は沈み、静謐な月光が淡く世界を照らす。

 既に外は静寂に包まれ、夜の帳が下りたオルガマギア魔法学園の一角。


 学生寮……ではなく、魔塔所属の大魔道士でもある私の、第一魔塔にある研究室自室の寝室のベッドの上にて!

 膝の上に猫ちゃんサイズになったルミエ様を抱いて、不敵に笑うっ!!


「さてと……では! これより、計画をこっそり再始動しようと思います!!」


 どどんっ!!

 ふっ、我ながらビシッと宣言が決まったわ!


『あら、今朝ファナに怒られたばかりなのにいいのかしら?』


「ふふふ、ルミエ様。

 確かにファナには怒られましたけど……」


 めちゃくちゃ怖かったけど!!


「あれしきの事で、この私が屈するとでも思ってるんですか!?」


『その割に声が小さいけれど』


「うっ……」


 だ、だってファナとミネルバ、あとついでにウェルバーも扉で繋がってる隣の部屋にいるんだもん。

 ファナ達に聞こえないように、小声になっちゃうのは仕方がない。


「と、とにかく! これから、ファナ達にバレないようにこっそりと計画を再開します!!

 ルミエ様、昨日みたいに補助をお願いします」


 昨日も徹夜したけど、その気になれば眠気なんて魔法で抑え込めるし。

 そもそも! 今日のお昼は、たっぷりとお昼寝したから問題はないっ!!


『ふふっ、仕方ないわね』


「では……始めます!」


 私の魔力供給機関創造計画。

 それは一部の高位の竜種ドラゴンが持つドラゴンハートと呼ばれる、膨大な魔力を秘める魔力を創り出して貯蓄する機関を模したものを私の身体に作ること。


 昨日はその機関の大元となるものを丹田に構築した。

 圧縮した魔力を空間魔法で作った特殊な空間に、循環させることで魔力を貯蓄する!


 そして……ここからがこの機関の真骨頂っ!! 体外の、世界に満ちている膨大な自然の魔素エネルギー

 これらを体内に取り込み、自分自身の魔力として置き換える。


 こうすることで、膨大な魔力を生み出すことができるわけだけど……これには1つ、大きな問題点が存在する。

 それは自然の魔素エネルギーを取り込むにあたって、自然の魔素を感じとり、干渉する必要があるということ。


『ほら、もっと意識を自分の丹田に。

 そして、身体の周りに満ちている魔素に集中しなさい』


「はい!」


 自然の魔素を感知して干渉するということは、自然そのものに……世界に干渉する必要があるということ他ならない!

 まぁ、それができちゃうからこそ、竜種ドラゴンは最強の種族と呼ばれてる訳なんだけども。


 とにかく! 本来なら世界に満ちている自然の魔素に干渉することは困難を極める。

 自然の魔素を知覚できても、干渉することなんてまず不可能……けど……


「すぅ〜はぁ……」


『そう、その調子よ』


 私は違う!!

 魔闘法・イカズチで、雷そのものと! 自然の一部と化すことができる私にとって、自然の魔素に干渉することなんて容易いことなのであるっ!!


『道は私が作って導いてあげるから、ソフィーは自然の魔素を体内に……昨日丹田に作った貯蓄機関に取り込んで、自身の魔力へと変換する事に集中しなさい』


「わかりました」


 ルミエ様が作ってくれた道を通って、私の丹田に送り込まれてきた自然の魔素を……昨日作った機関に吸収っ!

 そして……


「できた!」


 私自身の魔力として昇華するっ!!



『ぴろん!

 称号・到達者を獲得しました!』

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