第15章 訪問者編
第271話 ごめんなさい
私は今……窮地に立たされている!
ふかふかなベッドの上で、背中に挟んだふわふわなクッションにもたれて上半身を起こしてる状態で……視線を握りしめた手元に落として息を殺す。
「ふふふ」
「っ!」
静まり返った部屋に、どこかおっとりとした笑い声が鳴り響いて、思わず肩がビクッと震える。
さっきから冷や汗が止まらない。
最年少のSランク冒険者として。
孤高の悪役令嬢として、あまりにも情けない姿を晒しちゃってるわけだけど……
「お嬢様」
こればっかりは仕方がないっ!!
だって……
「これはいったい……どういう事でしょうか?」
ニッコリと微笑んでるはずなのに! 目が全然笑ってないファナが!!
有無をいわせない声音のファナが怖いんだもんっ!!
「そ、それは、その……」
どうして! どうして、こんなことになっちゃったのっ!?
ことの始まり10数分前……
「ふぅ〜、さすがにちょっと疲れましたぁ……」
『ふふっ、お疲れ様』
徹夜で私が最強に至るための計画!
昨日の夜に密かに開始した魔力供給機関創造計画の進捗が、区切りのいいところまで順調に進んだこともあって穏やかな朝を迎えた。
このままのペースで進めば、明日中には計画の大部分が完成する!
けどさすがに疲れたからお昼寝でもしようかな〜、なんて考えていたとき……
コンコン
突如として鳴り響いたノック! これが全ての始まりだった。
「ソフィー、僕だよ。
どうしてもソフィーに伝えたい事があって……ソフィーが怒っているのはわかってる。
だからこのままでいいから、僕の話を聞いて欲しい」
いつになく元気のないフィルの声が扉の向こうから聞こえ……
「本当にごめん!」
「えっ……」
「昨日ソフィーに無視されるようになった理由を考えたんだ。
ソフィーが起こるのも当然だよね、僕達はかけがえのない仲間で友達なのに……」
ひどく後悔してるようなフィルの声。
「僕がレフィア神聖王国の王子だって事がバレると、ソフィー達の態度が変わるんじゃないかと思って心配だったなんて。
ソフィー達を信じていなかった事だし、ソフィーが怒るのも当然だ」
確かにそう遠くないうちに謝りに来るとは思ってた。
思ってたけど……まさかこんなに早く来るなんて想定外もいいところ!!
私が困惑している間にもフィルの言葉は続き……
「前にそんな経験があった……なんて、何の言い訳にもならない。
ミラさんにも既に、この事は説明して謝罪もした。
ソフィー……今まで黙っていて、本当にごめんなさい」
こう見えて私の魔力感知の精度はかなりのものだし、Sランク冒険者として気配の察知にも長けていると思う。
だからこそわかる、わかってしまう……フィルが部屋の前で一歩も動かずに、ずっと頭を下げ続けることが。
「もう、仕方ないか……フィル、仕方ないから許してあげる。
だから入ってきていいよ」
とまぁ、そんな感じで絆されてしまって、フィルと仲直りしたのはいい。
問題はこのあとっ!
「ソフィー、また何かやってるみたいだけど……」
さすがというべきか、当然というべきか。
私の異変を感じ取ったフィルに……
「ふっふっふ〜ん! 教えてほしい?」
「それはまぁ」
「そこまでいうのなら仕方ない!
ファナ達には内緒にしてね? 実は今、徹夜で魔力量を増やすための実験をしてたのです!!」
胸を張って我が計画を自慢してやってるときだった。
「徹夜、ですか?」
「っ!?」
一瞬で静まり返って、いいしれない緊張感が張り巡らされ……
「ファ、ファナ……」
「おはようございます、お嬢様」
部屋の扉の前に悠然と佇む、メイド服に身を包んだファナが……ニッコリと笑みを浮かべた。
というわけで、冒頭に戻るわけだけど……
「私共と安静になさるとお約束してくださったのに、徹夜なさったのですか?」
「そ、そのですね、これにはわけが……」
「お嬢様」
「えっと、その……ごめんなさい」
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