第266話 脱出
「ヒィッ! や、やめっ、来るなっ!!」
ベル様の冷たい微笑みを見て、腰を抜かしたように倒れ込んだペルセ・ベランが声を上げながら身を捩って後ずさる。
「ふふふ〜」
そんなペルセ・ベランを楽しそうに見ながら、一歩ずつ歩みを進めるベル様。
う〜ん、これってどうなんだろ?
教団、光の使徒の最高幹部たる十使徒の1人のくせに、今のペルセ・ベランの姿が情けなすぎるのは……まぁ仕方ないと思う。
だってアイツはベル様の、
見た目はちょっと幼さの残る美少女にしか見えないけど、ベル様は七魔公の一角である
何百年も存在し、悪魔達の住う悪魔界を統治している強大な大悪魔!!
そしてなにより! レヴィアさんやルミエ様いわく、悪魔公は全員が冷酷無慈悲な存在らしい。
つまり! これからペルセ・ベランは悲惨な末路を辿ることになる、と思われるんだけど……
果たして、美少女が人間を惨殺するような場面をまだ子供の生徒達に見せてもいいものか?
情操教育によろしくないんじゃないかな?
「う〜ん」
はっ! それ以前に、今この場でペルセ・ベランが始末されちゃうと非常にまずいっ!!
「あ、あの!」
ペルセ・ベランからは拉致した生徒達の居場所を聞き出す必要があるっ!
「どうかしましたか〜?」
「えっとですね……」
さぁ! 頑張れ私!!
この状況で口を挟むとか、自殺行為に等しいかもしれないけど……既に賽は投げられたっ!!
ここは堂々と! 生徒達に先生の威厳を見せつけつつ、どうにかベル様を説得してペルセ・ベランを始末するのを待ってもらわなければ!!
「ふむふむ、なるほど〜。
安心してくださいね〜」
「へっ?」
「ここは私がご主人様より任せられたダンジョンですよ〜?
既にソフィーちゃんが救出しようとしていた生徒くん達は、保護済みなのです!!」
な、な、なんですとぉ〜!?
ちょ、ちょっと待って! ドヤ顔をして胸を張ってるベル様は、この場所に現れた瞬間から一度もここから離れてない。
にも関わらず、既に拉致された生徒達を救出済みって!?
「ふっふ〜ん! 私は魂を覗くことができる
魂を覗くということは、その者の思考や記憶、全てを知ることができるということ」
と、いうことはつまり……
「あの人間の魂を覗いて、生徒くん達の居場所を突き止めることなんて容易なのです〜」
「おぉ〜!」
さすがはレヴィアさんの同僚たるベル様!!
そんなことまでできたなんてっ!
「たとえば〜」
パチンッ!
「ギャァッ!!!?」
何気なく指を打ち鳴らしたベル様の背後で、天を衝くような絶叫が鳴り響く。
「こんなふうに! 魂を覗けば、こっそり逃げようとしているゴミを捕まえることも簡単にできちゃうんですよ〜」
「あっ、あぁぁっ! 私のっ、私の足がぁっ!!
痛い! 痛い、痛い、痛い、イタイイタイィィっ!!」
泣き叫んで絶叫するペルセ・ベランの足は……うん、これはR18指定だわ。
足が折れてるとか、切断されてるとかのレベルじゃない。
何かもっとこう……強力な力で無理やり捻りながら握りつぶされたような……
あとで生徒達のカウンセリングをしてもらうように、マリア先生に頼まないと。
「もう〜! 勝手に逃げようとしたら、ダメじゃないですか〜。
貴方には〜、しっかりと自身が犯した罪を償ってもらわないとダメなんですからね〜」
「ヒュー、ヒュー……い、いや、だ! やめっ、て、もう、これ以上は、やめぅぐ!?」
「はいはい、うるさいので少し黙っていてくださいね〜。
それ以上喚くのなら、一度首をへし折っちゃいますよ〜?」
顔面蒼白で涙と鼻水を垂れ流し、地面に水溜りを作ってプルプルと震えるペルセ・ベラン。
哀れすぎるけど……まぁ、自業自得としかいいようがない。
「私はこのゴミを処分する必要があるので、お見送りはできないですけど〜。
入り口にマリアちゃんが来てるみたいなので、ソフィーちゃん達を外まで送ってあげましょう〜」
「えっ、ありがとうございます?」
ん? ちょっと待って、とっさにありがとうございますって、いっちゃったけど。
いったいどうやって外まで移動す……
「じゃあ、また後で会いましょうね〜」
ベル様の声が聞こえた瞬間……
「えっ?」
一瞬にして視界が切り替わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます