第264話 この罪は重いですよ?
虚空に浮かぶ少女……ふわっとした薄い綺麗な緑色のショートボブの髪をした美少女が、眠たそうに細められた金色が混じったようなブラウンの瞳を擦りながら私達を睥睨し……
「ねぇ〜、そこの人間。
なにをしてるのか、私に教えてくれますか〜?」
白衣を着た男。
この場で一番大人っぽい見た目のペルセ・ベランへと視線を向ける。
この押し潰されそうな重圧とともに……
「ぅぁ……」
「むぅ〜、この私の質問を無視するとは。
人間のくせに生意気ですよ〜?」
ある程度は強いとはいえ、ペルセ・ベラン自身の実力はギリギリAランク冒険者と同格って程度。
この重圧を真正面から向けられて、まともに答えられるわけがない!!
少女の重圧を真正面から受けて、パクパクと口を動かすだけで答えないペルセ・ベランに、少女がぷくーっと可愛らしく頬を膨らませて眠たそうな目でペルセ・ベランを睨む。
まだ若干幼さが残る美少女だし、普通ならこんな可愛らしい姿を見れば和む場面なんだけど……この重圧。
そして! 虚空に浮かぶ少女の背中に広がる、漆黒の翼がそれを許さない!!
それにそもそも……生徒達もあの少女がこの場における絶対者だと。
自分達なんて簡単に皆殺しにできる存在だと、本能で理解してるだろうしね。
「ふぅ〜」
しかし、レヴィアさんに聞いてた通りだ!
七大迷宮には、迷宮を管理して守っている守護者。
大海ではレヴィアさんで、当然ここ大罪にもダンジョンを管理して守っている守護者が存在するわけで。
その守護者こそ……漆黒を翼を持ち、圧倒的な重圧を放ちながら眠たそうな目で虚空から私達を睥睨するあの少女。
その正体は……ルミエ様ですら、圧倒的といわしめる実力を誇る存在。
悪魔達が住う悪魔の世界。
悪魔界を強大な力で統治する存在にして、悪魔の中でも最高位に位置する大悪魔。
七魔公と呼ばれる悪魔公が
「ベル様」
七魔公の中でも一番マイペースな、子爵位の悪魔公。
「むむっ、どうして私の名前を知ってるんですか〜?」
「お初にお目にかかります。
ベル様のことを知ってるのは、レヴィアさんからお聞きしたからです」
「レヴィアちゃんから?」
「そ、そうです。
レヴィアさんから、ベル様のことを聞きました」
「ん〜あっ!」
「わっ!?」
「ということは! 貴女がソフィーちゃんですね!」
び、びっくりした〜。
いきなり虚空に浮かんで私達を睥睨してたベル様の姿が消えて、私の目の前に!!
「レヴィアちゃんやご主人様から話は聞いてますよ〜。
へぇ、貴女がソフィーちゃんですか〜!」
「えっと……」
さっきまではお昼寝を邪魔されて、ちょっと不機嫌そうだったのに……雰囲気が違いすぎて困惑するんですけど!
重圧も綺麗に霧散してるし。
「けど……どうしてソフィーちゃんがここに?
ここはちょっと危ないんですよ〜?」
「はっ!」
そ、そうだった。
今は教団の最高幹部である十使徒の1人、ペルセ・ベランとの戦闘の真っ只中! こんな呑気に話してる場合じゃない!!
「実は……」
「な、何者ですか! 貴女はぁ!?」
「むむっ! 煩いですよ〜?
私は今、ソフィーちゃんとお話ししているんです! 邪魔をしないでもらえます〜?」
「っ〜!!」
おぉ……さすがはレヴィア様と同じ七大迷宮の守護者にして、七魔公と称される大悪魔たる悪魔公の
一睨みでペルセ・ベランを黙らせちゃうとは!!
「えっと……実はですね。
あの男、光の使徒と名乗る組織の最高幹部である十使徒の1人なんですけど。
あの男にこの場所まで、私の生徒達と一緒に転移させられちゃったんです」
「転移? このダンジョンの中にですか〜?」
「はい。
それに……アイツは学園の生徒を拉致して、このダンジョン内のどこかで非道な実験もしてるようなんです」
「非道な、実験……私の、このダンジョンの中でですか?」
「断定はできませんが、おそらく」
「へぇ〜。
なるほど、なるほど〜」
ニコニコと笑みを浮かべたベル様がゆっくりとペルセ・ベランへと振り返り……
「まさかちょっとお昼寝している間に、そんな事態になっちゃっているなんて〜。
ふふっ、よくも私のダンジョンを汚してくれましたね〜? 人間、この罪は重いですよ?」
さっきまでとはまるで違う。
激しい怒りの波動が駆け抜けた。
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