第257話 転移先は……

「これは……」


 さっき地面に浮かび上がった巨大な魔法陣。

 間違いない、あれは転移の魔法だった。

 つまり、私達は全員まとめてどこかへ転移させられたわけだけど……


「ソ、ソフィア先生、これって……!?」


「アメリアさん、落ち着いて」


 まぁ、いきなり違う場所に。

 それも真っ暗な場所に転移させられて、しかも視界が真っ黒に染まったら動揺するのも当然か。


 アメリアさんは今年の次席入学者で、魔法の実力も魔法に対する知識も豊富で、優秀な生徒とはいえ……歴戦の冒険者ってわけじゃなく、戦場にも出たことがない実戦経験に乏しい子供。


 しかも視界が真っ黒に染まってるんだから、いくら将来有望な生徒達といえども動揺するなって方が無理がある。

 むしろ、動揺してパニックに陥ってる他の生徒達と比べると、アメリアさんは比較的落ち着いてる方だと思う。


 まっ、実際には明るい場所から、いきなり暗い場所に転移したから目が慣れてないだけで、真っ暗ってわけじゃないんだけど……パニックに陥ってる生徒達にとっては、そんなことは些細なことだろうし。


「お姉様、これはいったい……」


「リアットさん」


 さすがはリアットさん! 一度魔王に狙われた経験があるだけあって、この状況下でも取り乱してない!!


「私もまだ状況は理解できてませんが……」


 とにかく! まずはパニックになってる生徒達を落ち着けさせないと。


「フィル」


「了解」


 フィルが油断なく、鋭い視線で周囲を警戒しつつ……


「憩いの光」


 魔法を発動させた瞬間、フィルを中心に温かな淡い光が波状に広がる。

 この魔法、憩いの光は精神を落ち着かせてリラックスさせる効果を持つんだけど……


「ふ〜む」


 やっぱりフィルが使う魔法ってなんか全部、ちょっと神聖な感じがするんだよな〜。

 絶対にフィルの方が天使に相応しいと思うのに……


「お姉様?」


 おっと、今はこんなことを考えてる場合じゃなかった。


「こほん! 皆さん、まずは冷静に。

 突然のことで混乱するのはわかりますが、ひとまず落ち着いてください」


 よし! フィルの魔法のおかげで、かなり冷静になってくれたみたい。


「とりあえず点呼をとります。

 全員、集合して整列してください!」


 転移させられると同時に周囲に結界を展開してるから、ひとまずは安全だと思うけど……油断はできない。

 早急に状況を把握しないと。


「ソフィー、どう思う?」


「かなりまずい……かな?」


 ここがどこなのか、断言はできないけど。


「多分だけど、ここは……」


「お姉……ソフィア先生、整列完了しました!」


「わかりました」


 さすがはオルガマギア魔法学園に入学できる、将来有望な生徒達!

 点呼だけど、さすがにこの場にいる全員の名前を呼んでたらかなりの時間がかかるし。

 ここは……魔力感知で割愛してっと。


「ふぅ、どうやら全員ちゃんと揃っているようですね」


 バラバラに転移させられたりしてたら最悪だったけど、とりあえずは一安心だわ。


「さて……既に理解していると思いますが、見ての通り私達はどこかに転移させられました」


 しかも、私の予想が正しければかなり面倒な場所に。


「ソフィア先生、このはいったい……」


「断言はできませんが……おそらく七大迷宮が一角、大罪の中です」


 さて、どうしたものか……

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