第258話 当然です!

 私の言葉を聞いて、どよめく生徒達。

 まぁ気持ちはわかる。

 だってダンジョンとは本来、外部と隔絶された空間。


 外部との連絡はもちろん。

 直接ダンジョンの外から中へ、もしくはその逆の中から外へ転移することなんて不可能とされてるわけだし。


「こほん!」


 咳払いでみんなの注意を集めて……


「皆さんの気持ちはわかります。

 しかし……私は、私達はこれまでに何度も、このダンジョンに潜ったことがあって、ここは七大迷宮・大罪の中にそっくりなんです」


 しかも……これをいっちゃうと、余計にパニックになるかもしれないから今は生徒達にはいわないけど、ここは七大迷宮・大罪の中でもかなり深層の方だと思う。

 まぁあくまでも、現在到達している階層の中でだけど。


「七大迷宮・大罪は全部で70階層からなるとされているダンジョン」


 その名の通り人間が持つとされる大罪が試練として待ち受けるダンジョンであり。

 各階層でそれぞれ違った状態異常が、常時その身に降りかかる。


「現在到達している最高階層は36階層。

 第1から10階層は嫉妬、第11から20階層は傲慢、第21から30回層は憤怒,

 そして第31から36階層、おそらく40階層までは怠惰の試練が待ち受るとされています」


 ちなみに私達が攻略したことがあるのは32回層までで、最高記録の36回層までは行ったことはないんだけど……それはともかく!


「そしてここは、恐らくダンジョン内にいくつかあるセーフティーゾーンでしょう」


 なんか……というか非常に見覚えがあるし。

 多分だけど30階層のボス部屋の前にあるセーフティーゾーンだと思う。


「そして……私がここが七大迷宮・大罪の中だと考える一番の理由は……」


 昨日の夜中の一件。


「現在学園で発生している生徒の失踪問題。

 その犯人がダンジョンに潜んでいると思われることです」


 その犯人が私達をダンジョンの中に。

 自分のテリトリーに転移させたと考えると、話に筋が通るし納得できる。


「まっ! でも心配する必要はありません!!

 念のために周囲には転移すると同時に結界を展開してますし、転移する直前にマリア先……こほん、学園長に連絡済みですから」


 ふっ、私は抜かりない女なのだよ!!


「すぐに学園からの助けが来るはずです」


 とはいえ……ここが本当に30階層なら、救助が来るにしてもそれなりの時間がかかる。

 そして救助が来なければ、当然生徒の不安が募る。


 けど……いくら優秀とはいえ、この人数の生徒達を連れてダンジョン内を移動するのは危険すぎるし。

 ここで助けを待つのが最善なんだけど……う〜ん、困った。


「それに……」


 けど! 先生である私が弱音を吐くわけにはいかない!!

 たとえ苦しくても、生徒達の前では無理をして悠然と笑みを浮かべるのが先生なのだ!!


「皆さんの前にいるのはこの私ですよ?

 皆さんの先輩にして先生、第一魔塔に所属する大魔道士として……」


 一度言葉を切って生徒達の顔を見渡し……


「人類最強の一角であるSランク冒険者、白銀のソフィーの名にかけて! 何があろうと皆さんのことは守り抜いて見せましょう!!」


 余裕に溢れた笑みを浮かべて言い放つ!!

 ふっ! 完璧に決まったわ!


「クフフ! それは面白い!!」


「「「「「「「「っ〜!!」」」」」」」」


 突然背後から鳴り響いた声に、生徒達が息を呑んで振り返る。


「本当にこの私から、その雑魚共を守り切れるでも?」


「当然です!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る