第247話 例の件

 あれから……たらふく!

 それはもう満足できるまで! フィルがちょっと……というかドン引きするくらいにスイーツを満喫した!!


 あのお店のスイーツ全種類制覇という目的も達成したし!

 それはもう非常に有意義な……じゃなくて、しっかりとミラさんとフィルにはお礼をするっていう任務を果たせた!


「……」


 だというのに……


「むぅ〜」


 ミラさんと別れてから、ずっとフィルが無言で見つめてくるんですけどっ!?


「もう! さっきからなにっ!?」


 私の顔になにか、さっきまで食べてたクリームがついたらしてる……ことはあり得ない!

 だって私は才媛と名高い公爵令嬢にして、いずれ月の女神と称されることになる悪役令嬢だし!!


 確かにオルガマギア魔法学園から出て、街を歩くにあたって変装はしてるよ?

 白銀の髪は金色に、紫の瞳は青色になってるし。

 でも……フィルは何回も、私の変装した姿を見たことあるじゃん!!


「いや、ごめん。

 ただ……ソフィーの身体のどこに、あの量のスイーツが入るのかと思ってね……」


 私の身体って……


「フィルのえっち」


「ちょっ! それは誤解だからね!?」


 ぷぷっ! あのフィルが!!

 確かに数ヶ月ほどフィルの方が誕生日は早いとはいえ、同い年である私を!

 パーティーリーダーである私を! よく子供扱いするフィルが焦ってる!!


「こほん! まったく〜、フィルはわかってないね」


 確かに! 私とミラさんはスイーツをいっぱい食べた。

 あのお店のスイーツ全種類を制覇したほどだし、フィルの疑問もわからなくもないけど……


「スイーツとかお菓子は別腹っていうように、甘い物が好きな年頃の乙女なら無限に食べられる!!

 もっとも、それは己との戦いに勝利して、境地に至った者のみが手にすることができる特殊能力だけど!」


 そう、この能力を手にするには己との戦いに……カロリーという名の強敵に打ち勝たなければならない!

 無論! 私とミラさんにとっては、その境地に至ることなんて容易なんだけども!!


「へ、へぇ……そうなんだ」


「そうなんです!」


 だからフィルはドン引きしてたけど……私とミラさんがあのお店のスイーツ全種類を制覇したことは、まったくもって不思議でもなんでもない。

 至極当然なことなのだ!


「っと、それよりも……マリア先生はなんの用だろ?」


「あぁ、例の件じゃない?」


「やっぱり、フィルもそう思う?」


「まぁオルガマギア魔法学園でも、初めての事だからね」


 確かに……それにそれ以外にマリア先生に呼ばれる理由に心当たりはないし。

 ということは、やっぱりフィルのいう通り例の件のことかな〜?


「しかし……ソフィーの特別講義、かぁ〜」


「ふふん!」


 例の件……それは! オルガマギア魔法学園で初の学生兼先生たる特別名誉教授である私が受け持つ特別講義っ!!

 でも、それならなんでフィルも一緒に?


「う〜ん、ちょっと心配だね」


「えっ、なにが?」


「ソフィーが受け持つってところだね」


「はぁ〜、まったく……フィルは失礼なんだから」


 私のどこに心配する要素があるの?

 確かに魔法の実験で教室を吹き飛ばしちゃったり、フィルとの手合わせで訓練場を半壊させちゃったりはしたけど……


「と、とにかく! なにも心配することはない!! はず……それよりも早くマリア先生のところに行こう!」


「あはは……わかったよ」

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