第248話 話を始めましょうか

「さて……」


 さっと服にシワがないかを確認して、目の前の扉をノックする。

 なんといっても、これから会うのは……


 オルガマギア魔法学園の学園長にして、四大国! 魔導学園都市王国を統べる女王陛下!!

 約400年前の大戦にてその実力を発揮し、英雄と呼ばれる大賢者マリア先生なのだからっ!


 確かに、マリア先生との付き合いは長い。

 もはや大国の国王様って感じより、魔法の師匠や先生ってイメージが強いけど。

 マリア先生は正真正銘! 一国の、それも四大国の国主!!


 ルスキューレ公爵家の娘として! 仮とはいえ……第一王子の婚約にして次期王妃として。

 下手な格好で、マリア先生に会うわけにはいかないのである!!


「どうぞ、入って」


「失礼します!」


「失礼します」


 マリア先生の声に従って、目の前の扉。

 オルガマギア魔法学園にある学園長室の扉を開けて、優雅な所作で部屋に入り……


「オルガマギア魔法学園、特別名誉教授ソフィア。

 ただいま参上いたしました!!」


 我ながら完璧なカーテシーを披露するっ!

 うんうん、親しき仲にも礼儀ありっていうし。

 マリア先生に個人的に呼ばれたのならともかく、学園長として呼ばれたからにはこのくらいは当然!!


「ふふっ、楽しそうね」


「っ!」


 こ、この声は……


「ルミエ様っ!!」


 ど、どうしてルミエ様が、マリア先生のお部屋に?

 いや! そんなことよりも……


「ルミエ様〜!!」


「あら、いきなり抱きついてくるなんて、まだまだソフィーは甘えん坊ね」


 ちょっと揶揄うようにいわれちゃったけど、細かいことは気にしない!

 だって!


「もう! 今までどこに行っていたんですか!!

 心配したんですからっ!」


 ルミエ様は昨日の朝から帰ってなかった!

 確かにルミエ様は私なんかよりも遥かに強いし、ルミエ様が誰かにやられるとは思えないけど。


 それでも! もしかしたらお散歩の途中に誰かに襲撃されて、怪我をしてるのかもしれないし。

 とにかく! 心配なものは心配なのだ!!


「ふふっ、ごめんなさいね。

 ちょっと用事があったのよ」


「用事ですか?」


「そう」


 ルミエ様がまる一日もかかる用事……


「ルミエ様、その用事って……」


「こほん。

 ソフィーちゃん、ルミエがいて嬉しい気持ちはわかるけど……私達がいる事も忘れないでくれるかしら?」


「っ!!」


 わ、私としたことがっ!

 マリア先生に呼び出されて来たのに、ルミエ様がいたからついついそのことを失念してた……!


「す、すみません……」


「まったく……ソフィーちゃんは自由奔放というか、なんというか……まぁ、それがソフィーちゃんのいいところでもあるのだけど。

 やっぱりあの人の影響かしら?」


 あの人?

 アルトお兄様こことかな?


「まぁいいわ。

 それよりも、ソフィーちゃんも好きに座って」


「はい!」


「ふふっ、そじゃあ今回ソフィーちゃん達を呼んだ理由。

 ソフィーちゃんが受け持つ授業について、話を始めましょうか」

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