第244話 行きましょうか
「まったく……だから無理をしたらダメだっていったのに」
「ソフィーちゃん……大丈夫?」
若干呆れたような顔で苦笑いを浮かべるフィル。
心配そうな顔で私を覗き込んでくるミラさん。
そして……
「うぅ……気持ち悪いぃ〜」
オルガマギア魔法学園の保健室。
そのベッドの上で、悶え苦しむこの私っ!!
「頭が! 頭が割れるぅ……!!」
いつもなら呆れてるフィルに、文句をいってやるところだけど……今はそれすらままならないっ!
どうしてこんなことになってしまったのか。
どうしてオルガマギア魔法学園始まって以来の天才と称される私が!
この学園の特別名誉教授であり、マリア先生の第一魔塔に所属する大魔道士!
そしてSランク冒険者の1人にして! 世間一般でいう人類最強の一角たる私が!!
こんなに無様に、ベッドの上で悶え苦しむことになるなんて!!
「こんな……こんな、ことを、してる暇はない、のに……!」
私はオルガマギア魔法学園の生徒でもあるけど、特別名誉教授でもあるのだ!
先生として私の役目を、しっかりとやり遂げなければ!!
なのに……吐き気と頭痛がぁ!
私がこんな目にあってある理由。
全ての始まりは10分ほどまえの、入学式での挨拶にまで遡る……
あのとき下手にナメられないため。
絡まれたり、面倒ごとに巻き込まれたりしないために、私の実力を新入生達に周知するためのデモンストレーションとして、私が使った創世魔法。
あの魔法は歴とした1つの世界を創造する。
まさしく神の御技といえる魔法なわけだけど……そんな神の領域を魔法で再現するためには、当然それ相応の魔力が必要となる。
それこそ……現在学園に在学する全生徒の中でもぶっちぎりの魔力量を誇る私ですら、こうして魔力切れになってしまうほどに!
てなわけで、こんなことになってるわけだけども……
「早く、行かないと」
「はいはい、ストップ。
もうすぐファナが来るから、それまでは無理をして起き上がろうとしないで、大人しく寝てようね」
「うぅ〜」
うまく身体に力が入らないから、私のことを子供みたいに寝かしつけようとしてくるフィルに抵抗できない!
「フィル、私もここにいるって事を忘れないでね。
ソフィーちゃんが珍しく弱ってるからって、ソフィーちゃんを手篭めにしようとしたらダメよ?」
「ちょ! ミラさんっ!?
いきなり何をいって……!!」
「ぷぷっ!」
フィルったら、ちょっと悪い顔をしたミラさんに揶揄われてやんの!!
孤高の悪役令嬢たるこの私を、子供扱いするからそうなるのだ!
「っぅ〜!」
あ、頭がぁっ! 気持ち悪い……!!
フィルのことを笑ってる場合じゃなかった! 私にはリアットさんに学園を案内してあげるって約束もあるのに!!
「ファナぁ〜」
早く、早く来てぇ〜!!
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美しき広大な都市を望む白亜の巨城。
その城の中でも限られた者しか立ち入る事の許されない、特別な空間。
「さて……こうして皆に集まってもらったのは他でもありません」
中央に設置された長細い円卓を囲う、数名の者達の最奥。
玉座のような椅子に腰掛けていた人物が、閉じていた目をスッと開く。
「つい先ほどのアレを皆も感じたでしょう?」
金色の瞳で円卓を囲う者達を見渡し……
「さぁ……行きましょうか」
薄らと輝くようなプラチナブランドの髪をした男が、誰もが見惚れるような笑みを浮かべた。
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