第242話 創世魔法

 ざわつく会場。

 動揺する者、怪訝そうな顔をする者……そして羨望の眼差しを送ってくる者!

 そんな新入生達の前に立つのは……


「こほん、はじめまして」


 何を隠そうこの私っ!!


「ご入学、おめでとうございます」


 優雅に! それでいて誰をも魅了するような妖艶な笑みを浮かべて、言い放つ!!

 ふっ、出だしは完璧だわ!


 昨日の夜にファナ、ミネルバ、ルミエ様と一緒に練習した甲斐があった。

 きっと新入生のみんなは男女を問わず、妖艶で美しい私の魅力に魅せられて、頬を赤く染めて……


「お姉様……なんて可愛らしいのかしら……!」


 あ、あれ? おかしいな……可愛らしい?

 いま、新入生代表として最前列に座ってるリアットさんの声が聞こえた気がしたけど……き、気のせいだよね?


 美しい! とか、綺麗! とかならわかるけど、孤高で妖艶な悪役令嬢たる私に対して、可愛らしいなんて……

 ない! それはないわ〜。


 うんうん、今のは聞き間違いに違いない!!

 そんなことよりも! 生徒兼教師である特別名誉教授として、マリア先生に新入生達への挨拶を任されたのだ。

 しっかりとやり切らないと!


「私の名前はソフィア。

 このオルガマギア魔法学園に在学する皆さんの先輩であり、学園長にして魔導学園都市王国の女王陛下でもあらせられる大賢者マリア様の第一魔塔に所属する大魔導士でもあります」


 ざわざわと、結構どよめいてるけど……新入生達が困惑するのもわかる。

 だって私の立場って相当特殊だもん。


 まず魔法使いにはいくつかの称号、その実力によって肩書きが存在する。

 普通に魔法使いだったり魔法士だったり魔導士や大魔導士、アルトお兄様の賢者、マリア先生の大賢者もそう。


 私の称号である大魔導士とは、魔法使いが持つ称号のなかでも、特別枠である賢者や大賢者を除いて最高位!

 本来ならオルガマギア魔法学園を卒業した者の中でも、魔塔に所属する一部の者だけが名乗ることを許される称号なのだ。


 にも関わらず、まだオルガマギア魔法学園に在籍しているのに魔導士の称号を名乗っている。

 この時点で、相当に特殊なわけだけど……これだけでは終わらない!!


「そして特別名誉教授として、皆さんを指導する先生でもあります」


 おぉ〜、さっきまでとは比べ物にならないどよめきが!

 ふっふっふ〜ん! 私はオルガマギア魔法学園始まってはじめての、特別名誉教授でもあるのだよ!!


「静粛に」


 指を打ち鳴らすと同時に、魔力の波動が大講堂内を駆け巡り……新入生達が息を飲んで押し黙る!


「皆さんが困惑するのもわかります。

 どうして私のような小娘が? と思っている方もいるでしょう」


 現に私はまだ12歳。

 この新入生達の中には歳上も結構いるだろうし。


「ですので、皆さんのご入学を祝い。

 余興の一環として、この場で私の力の一端をお見せしましょう……」


 一気に魔力を解き放ち……使うは数日前に完成させた魔法っ!!


「創世魔法」


 瞬間──周囲の景色が入学式の会場である大講堂から、私が作り出した亜空間。

 小世界へと切り替わった。

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