第241話 弩級の問題児

「にゅふふ〜」


「ソフィー……だらしない顔になってるよ?

 それににゅふふって……」


「ふふっ、でもそんなソフィーちゃんも可愛いわ〜!」


「いやまぁ、それは否定しませんけど。

 一応ソフィーは教師って立場でもあるんだから、そんなだらしない顔をしてたら生徒達にナメられるよ?」


「むっ」


 失敬な! 一応とはなんだ、一応とは!!

 私はオルガマギア魔法学園の学園長にして、四大国が一角に数えられる魔法大国!

 魔導学園都市王国の女王陛下でもあるマリア先生直々に、特別名誉教授に任命された立派な教師なんだから!!


「こほん! フィルくん、先生である私にそんなことをいってもいいのかね?」


「うわぁ……横暴だ」


「ふふ〜ん、この通り! 私だってやろうと思えば偉そうな先生を演じられるんだよ?

 それに……私の実力もわからずに、私のことをナメる人にはナメさせておけばいい」


 だって……


「あとで力で黙らせればいいだけだもん!」


 この学園では外での地位も身分も関係ない! 実力こそ全てなのである!!

 調子に乗ってる貴族出身のお坊ちゃまなんて、けちょんけちょんにしてやるわ!


「そもそもSランク冒険者にナメてかかる人なんていないと思うけど……」


「確かに……」


 まっミラさんのいう通り、これでも私はSランク冒険者として有名だし?

 私をナメてかかってくる人なんていないかもしれないけど……それならそれで問題ない。


 とにかく! イストワール王国では王城でも、王立学園でも常に完璧な公爵令嬢として。

 第一王子の婚約者であり、未来の王妃に相応しい言動を求められる。


 だから素ですごせるのは、お家公爵邸だけなんだけど……ここでは違う!!

 ここオルガマギア魔法学園では、学園内で知り得た情報を許可なく漏洩してはならないってルールがある。


 それもただのルールじゃなくて、契約魔法で縛られた破ることのできないルールが!

 つまりっ! この学園の中だったら、周囲の目を気にすることなく素ですごせるのである!!


「ふむむっ!」


「あら、ソフィアさん」


「あっ! カミラさん、おはようございます」


「おはようございます。

 しかし……相変わらずギリギリね」


「生徒会長! そうなんですよ。

 ソフィーちゃんが全然来ないから、私達も心配で……」


 ちょっ! ミラさん!?


「ミラさん、私はもう生徒会長では……」


「いえ! 私達にとって、カミラ先輩はずっと生徒会長です!!」


 それはわかる!

 私達が入学したときに生徒会長だったカミラさんには……色々と迷惑をかけちゃった自覚がある。


 魔法の実験で教室を吹き飛ばしちゃったときとか、フィルとの手合わせで訓練場を半壊させちゃったときとか。

 なにかと問題を起こしては、カミラさんは後始末を手伝ってくれた。


 今では私と同じく、マリア先生の第一魔塔に所属する魔導士で、オルガマギア魔法学園の先生の1人だけど。

 私達にとって生徒会長といえば、カミラさんだもんね!


「まぁ貴方達という弩級の問題児のおかげで、どんな生徒も問題児に見えなったのは認めるけど」


「「「……」」」


 ま、まずい! 今カミラさんと目を合わせたらまずいっ!

 なんとかこの話題を逸らさなければ!!


「そ、それより! 今日は楽しみにしててくださいね!!」


「露骨に話を逸らしたわね」


「そ、そんなことありませんよ?

 とにかく! 入学式が始まっちゃいますし、そろそろ中に入りましょうか!!」


 今年の主席入学者であるリアットさんの答辞も聞かないとだし!!

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