第227話 海、太陽、ビーチっ!

「おぉ〜!!」


 どこまでも続く青い海!

 さんさんと照りつける太陽!

 真っ白で綺麗なビーチっ!


「ふふ〜ん!」


 そ、し、てぇ〜……うら若き少女達と絶世の美女達の白い肌っ!!


「……」


「っ……!」


 うんうん! やっぱり海に来るなら水着に着替えないとね!!

 むふふっ、サイラスったら真っ赤になっちゃって! 結構初心で可愛いところがあるじゃん!!


 ん? 女性の水着姿を見て、顔を真っ赤にしながら視線を逸らすサイラスのこの姿。

 なんかちょっと既視感が……


「あっ!」


 そういえば、乙女ゲームの中でこんなスチル? 場面があったような。

 あれは確か……


 そうだ、学園の長期休暇にヒロインや他の攻略対象達と海に行くエピソードがあって、今のサイラスの反応は初めて女性の水着姿を、ヒロインの水着姿を見たときのだ!!


「ふむふむ」


 だからなんか既視感があったんだ。

 あ〜スッキリした! ……ん? それってつまり、ヒロインの立場を奪っちゃったってことじゃ……


 ま、まぁ! 細かいことは気にせずにいこう!!

 もともとシナリオ通りに断罪される気はまったくないし、ちょっとくらいストーリーが変わっても問題ない。


 けど……サイラスはいいとして、やっぱりフィルは淡白な反応だわ。

 昨日はアルバ様が用意してくれた部屋で長々と、自分の好きな人は女性で、私の考えてることは勘違いって説明されたけど……


「ふむ」


 なんの反応もなく、ただ普通に私達を見てるだけなところを見ると……やっぱり怪しい。


「お、お姉様……」


「ん? リアットさん、どうかしましたか?」


「あの、その……これは、さすがに恥ずかしいです……」


「か……」


「か?」


「可愛い〜っ!」


「わっ! ちょっ、お姉様っ!?」


 恥ずかしそうにモジモジするリアットさん、可愛すぎるっ!!

 もうギュッとしちゃう!


「あっ、あのっ……」


「ふふふ、大丈夫ですよ」


 貴族令嬢たる者……というよりも淑女は殿方の前で、むやみに素肌を晒すべきじゃないって考え方は確かにある。

 けど昔と比べたら、世界的に女性の服装とかに関する考え方は大きく変わったのだ!


 まぁ古臭い考え方が根付いてるイストワール王国では、ミニスカートとかですらはしたないっていわれるけど。

 今では普通にミニスカートをはいた女の子達が街中を歩いてるし、ビーチでは水着を着る。


 つまり! 依頼とはいえビーチにいるんだから、こうして私達が水着に着替えるのは至って当然なのだよ!!

 それに普通の服だと濡れちゃって、海で思う存分に遊ばないし。


「よく似合ってますよ?」


「うぅ……」


 まぁでも、リアットさんの気持ちもわかる。

 私も初めて水着を着たときは恥ずかしかったし。

 とはいえ……問題はそこじゃない。


「リアットさん、本当にここにいるつもりですか?」


「も、もちろんです!

 お姉様達の戦いをしっかりと、この目に焼き付けなければなりませんから!!」


 海竜に追われて逃げてきたとはいえ、クラーケンは仮にも特Aランク。

 災禍級に数えられ、大海の怪物と恐れられる存在。

 このビーチにいたら危ないんだけど……


「アルバ様も」


「無論! 依頼者として、しかと見届けさせてもらうわ」


 アルバ様はアクムス王国の国王陛下なわけだし。

 アクムス王国として、それでいいのかな?


「残念ですが、陛下は昔から一度言い出したら聞かないので」


 まぁ……うん、セバスさんもこういってるし、別にいいのかな?


「むっ」


「ソフィー、来たわよ」


「わかってます。

 フィル!」


「オーケー」


 軽くフィルが肩をすくめた瞬間──



 ドゴォォォオッ!!!



 耳をつんざく轟音が鳴り響き……突然、視界を覆い尽くす波の壁が立ち上がった。

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