第223話 衝撃の事実!!

「……」


 どうしよう、落ち着かない。

 なんかちょっとソワソワしちゃう……!


「お姉様? どうされたのですか?」


「えっ! い、いやなんでもない……よ?」


 いや! なんでもないわけないじゃないっ!!

 というか! なんでリアットさんもサイラスもフィルも! みんなそんなに冷静でいられるのっ!?


 王城から迎えに来てくれたことはいい。

 今回の依頼の依頼主がアクムス王国の現国王陛下だってことは、ガルドさんから聞いて知ってたし。


 まぁ確かに、わざわざ王城から使者を迎えに出してくれるとは思ってなかったけど……別に、そこに驚きはしない。

 私が落ち着かないのは……


「……」


「ソフィー様、どうかなさいましたかな?」


「い、いえ、なにも……」


 目の前で朗らかに微笑んでいるこの人っ!

 だってセバスだよ! セバスっ!?

 そんないかにもな名前を名乗られて、動揺するなって方が無理があるわっ!!


 それに加えて、この馬車……じゃなくて魔導車!

 完全に車じゃんかっ! しかもただの車じゃなくて……黒塗りのリムジンっ!!


 いやまぁ、確かにシートの座り心地は抜群だし。

 揺れもほとんどなくて、めっちゃ居心地はいいよ?

 けど……けど! こんな状況で落ち着けるはずがない!!


「……」


 なのに! なのにっ! なんで、みんなそんなに落ち着いてるのっ!?

 私がおかしいの? 私が変なのっ!?


「お姉様? 本当に大丈夫ですか……?」


 っ! 私としたことが、リアットさんに心配をかけちゃった!

 お、おお落ち着け私!


『まったく……ソフィー、私達は仮にもSランク冒険者なのよ?

 このくらいの待遇なんて、むしろされて当然よ』


 ル、ルミエ様……! そ、そうだ! 私とフィルとルミエ様はSランク冒険者。

 このくらいのVIP待遇を受けても不思議じゃない!


「ふぅ〜大丈夫です」


 よし、このまま聞け! 聞くんだ私!!


「あの……セバスさん、1つお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「勿論でございます。

 何なりとお聞きください」


「で、では……セバスさん、その……セバスってお名前は本名なのでしょうか?」


 聞いちゃった!

 やばい! なんかちょっとドキドキしちゃう!!


「ふむ、なるほど……」


 なるほど?


「いや、失礼。

 残念ながら、セバスは私の本名ではございません」


「えっ、そうなんですか?」


 てっきり本名だと思ってたけど……


「はい、セバスというのは役職の名称。

 王宮内の使用人達を統括し、陛下の補佐をする者に与えられる、代々引き継がれて来た称号のような物なのです」


「へぇ〜、なるほどなるほど……ありがとうございます!

 おかげでスッキリしました!」


 セバスって名前がセバスさんの本名じゃなかったのは、なんかちょっと残念だけど……


「お役に立てたのであれば幸いです。

 もっとも、私の現在の本名はセバスチャンですので、皆からは愛称としてもセバスと呼ばれております」


「……へっ?」


「ですので皆様もどうか、私のことはセバスとお呼びください」


 セ、セバスチャンっ!

 セバスじゃなくて、本名がセバスチャンっ!?

 ちょ、ちょっと待って! さすがにそれは想定外すぎるんですけどっ!!


「では、これからも変わらずセバスさんと呼ばせてもらいます」


 えっ! えっ!?

 ちょっとフィル! セバスチャンだよ! セバスチャンっ!!

 この衝撃の事実に、なにその薄い反応はっ!?


「おっと、そうこうしている間に到着したようです」

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