第224話 アクムス国王

「えっ?」


 到着ってもう?

 あっ、本当だ! 知らないうちに、王城がもう目の前にっ!

 アクムス王国が王都フェニルの様子を見ようと思ってたのに……


 私達がいた王都フェニルの転移門から、王城までは結構な距離があったはず。

 話には聞いてたけどアクムス王国の魔導車、恐るべしスピードだわ!


 というか! まだこっちはセバスチャンの衝撃から、立ち直ってないんですけど!?

 い、いや! 落ち着け! 落ち着くのだ私っ!


「ふぅ〜」


 私は天下のSランク冒険者ソフィー!

 依頼者とはいえ、相手方に動揺を悟られるわけにはいかないっ!!


「ふふっ、お姉様でも緊張なされることがあるのですね」


「えっ!」


 これはただ精神状態を落ち着かせるための深呼吸であって、断じて緊張はしていない!


「いや……リアットさん、今のは緊張というよりも、くだらない……」


「フィル?」


 なにを口走ってくれちゃってるのかな?

 それにっ! セバスチャン事件は、全然くだらないことなんかじゃないもん!!


「ま、まぁそんな事よりも……セバスさん、そろそろ行きましょうか」


「ほほっ、畏まりました。

 では皆様、お足元を気をつけてお降りください」


 おぉ〜、すごい! ドアが自動開いた!!


「お嬢様、お手を」


 さすがは四大国が一角に数えられる、アクムス王国の王城に仕える使用人達を統括する人物!

 佇まいと所作も洗練されてるし、なにより紳士だわ〜。


「ありがとうございま……」


 えっと……なにこれ?


「ソフィー?」


「お姉様?」


 確かに私達は世界でも10数名しか存在しない、Sランク冒険者だし。

 セバスさんが迎えに来てくれたみたいに、VIP待遇を受けるのはわかる。


「もう! お姉様ったら、いったいどうなさった……」


「あはは、なるほど。

 これは流石に……」


 わかるけども……


「Sランク冒険者、白銀の天使ソフィー。

 Sランク冒険者、光天のフィル。

 Sランク冒険者、白帝のルミエ様。

 そして私が招待したリアット・エドウィン殿と兄のサイラス・エドウィン殿」


 ずらっと、綺麗な庭園に整列した使用人達!

 そして……


「ようこそ! 我らがアクムス王国へ」


 豪奢なマントを羽織り、頭上には輝く王冠。

 最奥で朗らかな笑みを浮かべる人物……!


「私はアルバ・ジョン・アクムス。

 貴殿らに依頼を出し、我が国に招待した者であり……現アクムス王国の女王よ!」


 まさか……まさか! 四大国の国王陛下自ら、私達を出迎えるなんてっ!!


「さぁ! こちらへ!

 貴殿らを歓迎する宴の準備をしているわ!!」


「へ、陛下! もう少し国王としての威厳を……」


「まぁまぁ、細かい事はいいじゃない。

 本当なら、こんな重たいマントや王冠を着けるのも嫌なのに、こうしてちゃんと着けているんだし。

 それでいいでしょう?」


「陛下!!」


 ……うん、これは何というか。


「えっと……」


 大国アクムス王国の現国王陛下が、女性ってことは知ってたけど……


「ほほっ、驚かれたかもしれませんが、ああ見えて陛下はとても優秀なお方なのですよ」


 それは……そうだろうけど。

 アクムス王国という大国の国王陛下が、あんな性格の方だったなんて!

 なんかもっとこう……冷静沈着で威厳に満ち溢れた感じを予想してたから、さすがに想定外すぎて驚きだわ。


「さぁ! 宴を始めるわよ!!」

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