第222話 アクムス王国

 この活気!

 この熱気!

 この賑わい!


「おぉ〜!」


 どこもかしこも人! 人! 人!!

 真っ直ぐ続く、馬車が何台も横に並んで倒れそうなほどに広い道の両脇には、多種多様な多くのお店や商会が立ち並ぶっ!!


 後ろを振り返れば……日光がキラキラと反射して綺麗な、どこまでも続く雄大な海っ!

 世界最大規模と名高い港には、めちゃくちゃ大きな船が何隻も!


 そして、この道の最奥

 緩やかな小高い丘の頂上に鎮座する、この街並みを一望できるであろう白亜の美しい王城!


「ここが……」


 商業、流通の中心地、商人の聖地と呼ばれ。

 この国で手に入らない物はない、とすられ謳われる……


「国土の多くを海に面した海洋商業国家!

 四大国が一国……アクムス王国が王都フェニルっ!!」


「ソフィー、そんなところでポケーっとしてたら迷子になるよ?」


「むっ」


 失敬な……私はもう12歳! 迷子になるほど子供じゃないもん!

 いやそれ以前の問題だわ!


 なにせ私はこう見えても、Sランク冒険者の1人だし!

 王子妃教育も既に終わらせて、王妃教育も終了間際まで進めている天才と名高い才媛!!


「うんうん」


 この私が迷子なんて、あり得ないわ!


「あり得ないけど……」


 確かに人通りがすごいし……私が迷子になんてなるはずがないけど、まだ護衛依頼は終了してないわけだし、一応フィル達のそばにいないと!


「ふふっ、お姉様はアクムス王国に来るのは初めてですか?」


「えっ? あのっ、はい……」


 わ、私としたことが!

 フィルとルミア様だけじゃなくて、リアットさん達もいるのに……あんな! あんな姿を見せちゃうなんてっ!!


「そ、その……リアットさん? どうか今見たものは、内密に……」


「ふふっ、わかりました。

 けど……すごいですよね、私も初めて来たときは驚きました。

 この活気もですが、特に移動方法が」


「そうなんです!

 噂には聞いていましたけど、まさか本当にこんな移動方法が確立されているなんて!!」


 確かにアクムス王国は他の四大国に比べたら国土は狭い。

 まぁ他の四大国に比べたらってだけで、無論それなりに広大な国土を誇っている。


 そんなアクムス王国に入国したのは、わずか30時間ほど前。

 にも関わらず! 既にこうして、アクムス王国の王都フェニルに私達がいる理由……


「王都であるフェニルを中心に、各都市を繋ぐ転移門っ!!」


 ただでさえ転移門の設置は、普通に転移魔法を使うよりも難しいのに!

 その転移門をこの規模で! しかも、国中に張り巡らせているなんてっ!!


「もうすごすぎます!!」


 この転移門だけをとってみれば、魔法大国である魔導学園都市王国にも引けを取らない魔法技術!!


「かの若き次世代の英雄と名高いSランク冒険者ソフィー様に、そう言っていただけるとは光栄です」


 なんか執事っぽい服装だけど……この隙のない佇まい。

 見た目は好々爺って感じだけど、ルスキューレ家の執事長であるバルトと似た雰囲気がする。


「えっと、失礼ですが貴方は……」


「っと、これは失礼いたしました。

 私はセバス、陛下の命で皆様をお出迎えに参上いたしました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る