第12章 アクムス王国編

第221話 目的地

「まぁ! では、あの名称はお姉様が?」


「そうです! 以前はあの都市も含めて、冒険者ギルド本部と呼ばれていました。

 そこで! 私が冒険者ギルド総括グランドマスターであるガルドさんに提案して、アバンというあの都市の名称を決定したのです」


 あれは私がSランク冒険者になったときだから、まだ1年半くらいしか経ってないにも関わらず、もう既に世界中で定着した冒険者の都市アバンって名前。

 何を隠そう! この私が考えた名前なのだよっ!!


「お姉様、凄いです!」


「ふふ〜ん!」


「はぁ……」


 いや〜! 昨日とは打って変わって、なんて気楽で楽しい時間だろう!!

 昨日はリアットさんに正体がバレないように必死だったから、心身共にめちゃくちゃ疲れちゃったけど……


 もう既にバレちゃってるんだから、バレないように気を使う必要は存在しないっ!!

 変に気負う必要がなくなれば……これはもやは! お友達であるリアットさんやフィル、ルミエ様達との楽しい旅行!!


 まぁもちろん、護衛依頼を受けてるわけだし。

 今はお仕事の真っ最中なわけだから、ちゃんと周囲への警戒は怠らないけど……それはそれ、これはこれ!

 これは気持ちの問題なのである!!


「だから、仮にもパーティーリーダーである私に対して、呆れたようなため息をつかない!!」


「あはは、ごめんごめん。

 別に呆れてたわけじゃないよ? 2人が昨日とは打って変わって、想像以上に仲良くなってたからついね」


 まっ! 私とリアットさんはお友達だからね!!


「けど……一応まだ護衛依頼中だから、油断はしたらダメだよ?」


「むっ」


 公私の切り替えはちゃんとやってるもん!


「それならちゃんとやってるじゃん……こうして、馬車もちゃんと手に入れたし」


 本来リアットさん達が乗ってた馬車は……昨夜の襲撃時に私が、配下を依代に顕現した魔王ルイーナに向けて放った大魔法!

 白炎・息吹ノヴァに巻き込まれて、文字通り消滅してしちゃったけど……


 幸いフィルが馬だけは保護してくれてたから、馬達は無事だったし。

 近くの街まで転移で移動して、私のポケットマネーでちゃんと馬車を購入して弁償した!


 しかも! こうして馬車内部の空間を魔法で拡張して、保護魔法まで施すオプション付き!!

 サイラスはずっと無言で気に入らないようだけど、リアットさんはすごく喜んでくれたから細かいことは気にしない!


「しかし……本当によろしかったのですか?

 ソフィー様に馬車を購入していただいて、さらにこれほどの魔法まで……」


「気にしないでください」


 こう見えて、私には冒険者として稼いだ結構な個人資産があるのだよ!


「ですが……」


「ふふっ、では……」


 サイラス達には聞こえないように遮音結界を展開してっと!


「これは私からリアットさんへの、口止め料ってことにしてください」


「もう……わかりました。

 ではこの馬車は、ありがたくいただきます」


「ふふっ、ええどうぞ!」


 結界解除!


「なんの話をしていた?」


「っ!」


 昨日からずっと黙り込んでたサイラスが喋った!

 ど、どうしよう……


「まぁ! お兄様、乙女の内緒話を聞こうだなんて、無粋ですよ!!」


「っ! そういうつもりでは……」


 おぉ〜! リアットさんっ!!


「あっ、そういえば……お姉様、1つお聞きしてもいいでしょうか?」


「なんでしょうか?」


「ルミエ様はどちらに……?」


「えっ? そ、それは……」


 普通に猫ちゃんサイズの姿で私の膝の上にいるんですけど……さすがにそれをいうわけにはいかないし。

 う〜ん、ど、どうしよう……


「あっ、そろそろ、見えて来たね」


 フィルっ! ナイスタイミングっ!!


「あれが僕達の目的地。

 四大国が一角……流通の中心地にして商人の聖地、アクムス王国だよ」

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