第216話 逃がさない!

 轟音と共に地面が爆ぜて、爆炎と土煙が舞い上がる。


「どうだ!?」


「やったか!」


 ほほ〜ん、今の攻撃はこの人達がね……しかし、心外だわ!


「ふふふっ」


 どうだ? やったか?

 むふふっ……そんな、もはやテンプレとすらいえるフラグを立てちゃって!


「こ、この声はっ!?」


「ま、まさか!」


 おぉ〜! 敵とはいえこの人達、本当にいい反応をしてくれるわ!!


「この程度の攻撃で、この私をどうにかできるとでも思ったか!」


 魔法で土煙を吹き飛ばしつつ、背中にリアットさんを庇ってドドンっ!!

 ふっ、我ながら完璧に決まったわ!!


「くそっ!」


「今のを防ぐのかよっ!?」


 しかし……どうりでフィルとルミエ様の帰りが遅いわけだわ。

 まさか見回りの途中で夜襲に気づいて、敵と応戦してたとは。


 私としたことが、いくらリアットさんと話してたとはいえ、気を抜きすぎたわ。

 この私が夜襲を受けていることに、全く気づけなかったなんて……


「貴方達のことは拘束させてもらいますよ?」


 この失態は、働きで返すっ!

 この襲撃者達を……魔王が一柱ヒトリ、灰燼の魔術師ルイーナの手下を捕まえてやるわっ!!


「さっきのガキといい、どうなってやがるんだ!?」


「まずいぞ、もし失敗なんてしたら……」


「……」


 ふ、普通に無視されたっ!?

 うぅ〜! リアットさんが見てるのにっ……! よ、よくもやってくれたわねっ!?

 この私を無視した罪の重さを教えてあげるわっ!!


「おい嬢ちゃん、さっきの攻撃をどうやって凌いだのかは知らないが……そいつを俺達に渡すのなら、お前は見逃してやるぜ?」


「無駄な抵抗はしない方が身のためだぞ?

 さっきの魔法は範囲は狭いが、その威力は広域殲滅魔法にも匹敵する。

 その魔法を防ぎきったのは褒めてやるが……もう限界なんだろ?」


 まぁ、確かにさっきの魔法の威力は申し分なかった。

 それこそ常人が生身で受けたら、肉片すら残らないと思うし。

 広域殲滅魔法に匹敵する威力っていうのも、あながち間違ってはいない……けど。


「ふふっ」


 私のことを、見逃してやる?

 無駄な抵抗はしない方が身のため?


「まったく、私も舐められたものだわ」


 これでも一応Sランク冒険者の一角に名を連ね、若き次世代の英雄と謳われる存在なのに!

 いずれ最強へと至る者なのにっ!!


「むぅ」


 マリア先生や皇帝陛下のような、伝説に語られる英雄には程遠くても、これでもちょっとは有名になったと思ってたのに……!


「ソフィア様! ソフィア様!」


「リアットさん?」


「仮面をつけてらっしゃらないから、彼らもソフィア様が誰なのか理解していないのではないでしょうか?」


「あっ」


 な、なるほど……だからこの反応なわけね!

 つまり! 私の名声が轟いてないわけじゃない!! はず……


「なんの話を……」


「こほん、愚かな襲撃者さん達。

 これでも……まだそんな余裕が保てるかな?」


「「なっ!?」」


 むふふっ、驚いてる、驚いてる!

 ふふん〜! これでもSランク冒険者ソフィーこと、この私の外見はフィルとルミエ様よりも広く知れ渡っている!!

 これは自惚れなんかじゃなくて、ただの事実なのだ!


「私が誰なのか、わかった?」


 まぁ理由は知らないけど……とりあえず! これで、私が誰なのかを。

 自分達がいったい誰が守っている存在に手を出したのかを、この2人も理解しただろう。


「その仮面! その銀の髪!

 まさかお前はっ……」


「なら、さっきのガキと女の2人は……!

 くそっ! Sランク冒険者共がいるなんて想定外だっ! ここは一度撤退するっ!!」


 撤退、ね。


「行くぞっ!」


「ああ!」


 バサッ! っと、2人の背中から黒い蝙蝠のようや翼が広がり、空中へと舞い上がる。


「へぇ〜」


 あれが魔人族の翼か。

 魔人族は一見普通の人間と外見は変わらないけど、人間よりも魔力量が多くて、その魔力を物質化することで翼を作り出すことができる。


 確かに速い。

 もしなんの事前情報もなかったら、取り逃してたかもしれないけど……残念ながら、昼間の襲撃でお前達が魔人族である可能性は想定済みなのだよ!!


「逃がさない!」


 飛び去る2人に向けて手を翳し……


「縛雷」



 バチィッ!!



 耳をつんざく雷鳴が轟き、青白い雷が迸った。

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