第215話 夜襲ですっ!

「な、なんのことでしょう?

 私はただの冒険者ですよ?」


「Sランク冒険者が、ただの冒険者のはずがありません。

 それに……今更それは、少し無理がありますよ?

 なにせ、先程しっかりとお返事なさいましたし」


「うっ……」


 そ、それは……確かにSランク冒険者といえば、世界でも10数名しかいない最高位の冒険者。

 真偽はともかく、人類最強の一角と目される存在だし。

 はっきりとリアットさんに答えちゃったけどもっ……!!


「ですが……そうですね。

 ソフィア様がそういうつもりなら、私にも考えがあります」


「か、考え?」


「ふふっ、ソフィア様ってしっかりなさっているように見えて、意外とぬけていらっしゃいますよね。

 さっきも私が声をお掛けしたときに、変な声をあげてらっしゃいましたし」


「ッ〜!!」


 やっぱり聞かれてたっ!!

 仮にもSランク冒険者が、話しかけられたことにびっくりしてあんな声をあげちゃうなんて……恥ずかしすぎるっ!!


「ソフィア様が認めてくださるまで、私が知っているソフィア様の可愛らしい一面を全て話します!

 そうですね……まずは、甘い物が大好きだということから話しましょうか」


「リ、リアットさん! ちょっと落ちつい……」


「他の皆様の前では、完璧な淑女を演じてらっしゃいますけど……私や他の親しいご友人だけの場では、それはもう目を輝かせて!」


「ぅ〜!」


「他にも普段はお茶を飲んでらっしゃいますけど、本当は甘いココアがお好きなのもとっても可愛らしいと思います!!」


 な、なぜそれをっ!?

 ココアが好きってことは公爵家者と、オルガマギア魔法学園のお友達以外にはいったことないのに!


 確かに貴族令嬢のお友達の中でも、リアットさんとは仲がいいけど……まさか、私がココアが好きだって事実を。

 いや、甘い物が好きだってことを見抜かれるなんてっ……!


 甘い物が好きだなんて、冷静沈着でクールな悪役令嬢に似合わないし。

 周囲にバレないようにしてたのに……なんたる観察眼っ!

 まだ12歳なのに! リアットさん、恐ろしい子っ!!


「普段は完璧な淑女を演じていらっしゃるのに、気を許している者達の前でだけ見せる年相応のお姿が本当に愛らしくて。

 いつも私達はソフィア様のお姿に癒されているのですよ?」


「うぅ、リ、リアットさん……も、もう……」


「次はソフィア様は意外と可愛らしい物が……」


 ま、まだあるのっ!?

 い、いったい、いつまで続くのかな……








「あとは義妹であるミネルバ様と……」


「も、もう許してぇ……!」


 リアットさんが話し始めて30分ほど。

 もう限界! これ以上は、恥ずかしすぎて耐えられないっ!!


「白状する!!

 白状しますから! もうこれ以上は……!!」


「あら、まだまだこれからでしたのに」


 うぅっ……まさかリアットさんに、こんな一面があったなんて!


「それでは、お認めになられるのですね?」


「……はい」


 とりあえず仮面を外して……


「こ、こんばんは」


 やばい! なんていえばいいのか、わからないっ!!


「えっと、その……今まで隠していてごめんなさい」


「ふふっ、本当はもう少しソフィア様の可愛らしいさについて話したかったのですが……仕方ありませんね。

 ちゃんと教えてくださいましたし、許してあげます」


 さ、さっきも、まだまだこれからっていってたけど……まだ話すつもりだったんだ……


「はっ!」


 勢いで仮面を外しちゃったけど、リアットさん以外の人に……バレルさんや他の騎士、サイラスに見られたらまずいっ!

 と、とりあえず周囲に誰もいないから確かめ……


「っ!?」


「ソフィア様?」


「夜襲ですっ!

 リアットさん、こっちにっ!!」


 首を傾げるリアットさんを引き寄らせて、即座に結界を展開して……



 ッ────!!!



 瞬間。

 耳をつんざく轟音が鳴り響き……私達の周囲が爆ぜた。

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