第212話 衝突
「……」
き、気まずいな……敵の襲撃から早30分ほど。
宣言通り! 速攻で襲撃してきた刺客を片付けて、アバンのギルド本部に引き渡したまではよかったんだけど……
「あの……ソフィー様と、お呼びしてもよろしいでしょうか?」
「えっ! あっ、はい!
よろしいですよ?」
確かにいった。
襲撃されたときに、後で話を聞かせてもらうって、バレルさん達にいったよ?
けどっ! いったけどもっ……
「……」
なんで私達も馬車に乗ることになるわけっ!?
うぅ、なんでこんなことにっ!! 気まずいよ! この沈黙が非常に気まずいんですけどっ!?
さっきからずっと、サイラスが無言で睨んできてるし!
場を和ませようとしてくれてるリアットさんも、この気まず過ぎる空気にさすがに笑みをちょっと引き攣らせて、黙り込んじゃったし……
バレルさん! どうにかしてくださいっ!!
なんのためにバレルさんに同席してもらってると思ってるんですかっ!?
いやまぁ、事情を説明してもらうためだけど……とにかく! この気まずい空気をどうにかしてっ!!
お願いだから、誰か話の口火を切って、この空気を壊してほしい……
「で、なにがどうなっているのか、聞かせてくれますか?」
「ッ〜!」
フィ、フィル〜っ!!
よくいってくれた! さすがは私の相棒だわっ!!
「さっきの襲撃者達、あれは唯の盗賊なんかじゃなかった。
そもそもギルド本部がある都市、アバンのすぐ近くに盗賊団なんて巣食ってませんしね」
まぁ、そりゃあね。
冒険者には盗賊討伐の依頼もあるわけだし、わざわざ冒険者ギルドの総本山であるアバンの近くに巣食う盗賊はいない。
「それに……彼らのあの実力。
こう言っては失礼ですが、一人一人が貴方達が連れている騎士達よりも手練れでした」
うんうん! 確かに全員がかなりの実力者だった。
バレルさんが率いてる騎士達も、Bランクの実力があるけど……あの襲撃者達の実力はそれ以上。
重傷を負って戦闘不能にはなったとはいえ、後衛でさえ私の一撃を凌いだほどだし。
まっ! それでも私達の相手じゃないんだけども!! 私達がいなかったら、ヤバかったのは間違いない。
「ふんっ、だからどうした?
余計な詮索はしないでもらおう。
それとも、貴様らには依頼主の内情を詮索する権利でもあるのか?」
「いいえ、残念ながらそんな権利は我々にはありませんね」
「なら黙って私達の護衛をしていろ」
「へぇ、つまりキミは僕達にはなんの説明もせず、ただ自分達の事を守れと?」
「そうだ。
ふっ、それが下世話な冒険者だろう?」
おぉう、フィルとサイラスの間で火花が散ってるっ!!
「サイラス殿っ!」
「バレルさん」
「っ……」
さすがはフィル! 静かに名前を呼んだだけで、バレルさんを黙らせちゃった。
ここで変に口を挟むと……リアットさんに私の正体がバレちゃう恐れがあるし、ここはフィルに任せるとしよう。
「ふ〜ん、そういう事なら僕達はこの仕事を降りさせてもらうよ」
「は?」
「ちょっ! お待ちくださいっ!!」
「悪いけど、僕も仲間を危険に晒すわけにはいかないからね」
いけいけフィル!
頑張れ頑張れフィルっ!
「なっ、ふざけるなっ!
Sランク冒険者のくせに、途中で依頼を投げ出すような事をっ……」
「途中で投げ出す? さっきまで僕達の事なんて必要ないと言ってたはずだけど」
「そ、それは……」
「それに、知らないのか?
本来Sランク冒険者っていうのは、誰にも縛られない存在だって」
うんうん! 確かにSランクまで上り詰めるような人達は我が強いというか、自分勝手というか……私達と違って、そんな人が多いもんね!!
「僕達は常識的な方だけど……いくら王侯貴族からの依頼でも、
気に入らない依頼をわざわざ受けるつもりはないんだよ」
「っ……そんな事が許されるはずが!!」
「お兄様! いい加減になさってください!!
このお方のおっしゃている事は全て事実です」
「なっ……」
その通り! なにせSランク冒険者といえば、人類最強の一角だもん。
一国の王でもそう簡単には手出しできない存在なのだよ!!
「皆様、兄が大変失礼を……兄は魔法の研究に明け暮れていて、世間の常識に疎いのです。
どうかお許しください」
「リアっ! こんな者達に頭を下げるなんてっ……」
「お兄様は黙っていてください!
もちろん、我々の事情はお話しします。
ですのでどうか、ご判断を下すのは話を聞いた後に……」
「……ご令嬢にここまで言われては仕方ありませんね」
「ではっ!?」
「えぇ、お話を聞かせてください」
「っ! ありがとうございますっ!!」
「はい、では私の方から詳しく説明させていただきます」
おぉ〜、さすがはフィル! なんかうまい具合に、話が落ち着いた!!
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