第211話 速攻で終わらせるっ!
「フィル! 結界をっ」
「了解!
閉ざせ……光のベール」
フィルが魔力を解き放った瞬間──馬車を包み込むように天から光が降り注ぐ。
この技量もさることながら……うん、何度見てもフィルの使う魔法は、なんか神聖な感じがする。
なんで私の二つ名が白銀の天使で、フィルは光天なの?
いや、私は認めてないけども! とにかくっ、明らかにフィルの方が天使っぽいじゃんっ!!
全力戦闘のときなんて、白い光の翼を背負ってるし!
光を纏って戦う姿なんて、まんま天使じゃんか!
なのに、なのにぃ〜! フィルもオルガマギア魔法学園の新人戦のときは、黄金の天使とかって呼ばれてたのにっ!!
「むぅ……」
「ソフィー、さすがに襲われてる真っ只中だから、くだらない事を考えるのはやめようか」
「べ、別にくだらないことなんて、考えてないもん……」
これだ。
魔法神ティフィア様のご息女でもあるルミエ様なら、私の思考を読むことなんて容易いからわかるけど……
なぜかフィルも、いつも私の考えを見抜いてくる!!
ますますフィルの方が天使っぽいじゃんか! って、こんなこと考える場合じゃなかった。
「とりあえず……」
魔力感知! 出力最大っ……見つけたっ!
「お返しだっ!」
納刀していた愛刀・白を……一閃。
「ふぅ〜」
音が止んだ森の中で、チンっ! って私が刀を鞘に収める小気味いい音が鳴り響き──
ブワ──ッ!!
「ッ!?」
私の眼前に広がっていた森が、木々が両断されてずり落ち……その先にいた男が。
さっきサイラスに向かって矢を放った男が、息を呑んで後方へ弾け飛ぶ!
「うん」
眼前に広がってた広大な森の一部が、伐採した後みたいになっちゃったけど……細かいことは気にしない!
だってどうせ明日には元通りになってるだろうし。
なんたって目の前に広がるこの森は、私とルミエ様が初めて出会った場所っ!
冒険者ギルドがS級危険領域たる、魔の森なのだから!!
各国に支部がある冒険者ギルドの本部は大陸の中央部、この魔の森のすぐそばに位置する!
まぁ、その方が森の監視もできるし、すぐに本部から各支部へと人を送れるから効率がいいんだろうけど。
とにかく! 魔の森はたとえ業火によって更地になったとしても、豊富な魔素を糧にして1日もあれば元通りに再生する。
つまり! どれだけ暴れても、どれだけ森林を破壊しても、一向に問題ないのである!!
「さて……」
街道のすぐ近くとはいえ……人目につかないように、わざわざ道から逸れた森の中に転移した。
にも関わらず、すぐに場所を嗅ぎつけられて、襲撃されたという事実。
そして……
「ぐっ、ぅぁ……」
重傷を負ったとはいえ、後衛でありながら今の一閃を間一髪で防いでみせたこの技量。
敵は相当な手練れとみて間違いない。
「どうしたものか」
さっき魔力感知で見つけた敵は全部で23人。
しかも、完全に包囲されちゃってるし……本当に、どおりでガルドさんが私達に話を持ってきたわけだわ。
「はぁ……」
こうなった以上、ぐちゃぐちゃ考えていてもどうしようもないし。
「バレルさん、後で話を聞かせてもらいますからね!」
「えぇ、勿論です。
ですが、その前にこの窮地を脱さなければ……」
「バレルさん達は、フィルの結界の中で馬車を守っていていください」
「は? し、しかしっ……!」
「フィル」
「はいはい」
「速攻で終わらせるっ!」
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