第210話 敵襲です

 とりあえず……いつまでも、この場所にいたら目立つ。

 私達3人はただでさえ目立ちやすいのに、こんな馬車に騎士達がいたらそれはもう目立つ!


「お前っ! なにを勝手に……」


 てなわけで! とりあえず……



 パチンっ!



 冒険者の都市アバンの外まで転移っ!!


「っと!」


 これでよし!

 サイラスが何やら騒いでいたけど、細かいことは気にしないっ!!

 なにせ、ことは急を要するのだ!!


 ぶっちゃけ、もう私の正体がバレちゃうのは問題ない。

 だって今の私は世界に10数名しか存在しない、Sランク冒険者の1人だし!

 確かに、さすがにまだ一国を相手に、1人で対等に渡り合えるとはいえないけど……


 それでも! 今の私を国も無碍にはできないだろうし、そう簡単に手出しはできないはず。

 国も私を相手取るなら、それなりの覚悟が必要になるだろうし。

 それ程までにSランク冒険者っていう、肩書きの持つ力は高い!!


「問題なのは……」


 私がバラすのではなく、私の正体が第三者によって見破られちゃうということっ!!

 今までルー達に協力してもらってまで隠してたのに、それが自分から明かすでもなく! 普通にバレちゃったら……カッコ悪すぎるっ!!


「うん」


 何としてでも……何としてでも、リアットさんに私の正体が露見しないようにしなければっ!!


「おいっ! 私の話を聞いているのかっ!?」


「サイラス殿っ!!」


「……」


 や、やばい! まったく聞いてなかったっ!!

 なに! なんていってたのっ!?

 と、とりあえず、なんとかして不自然じゃないように誤魔化さないと……!!


「こほん! 騎士の隊長さん、お名前はバレルさん、で大丈夫ですか?」


「っ! これは失礼いたしました。

 私はイストワール王国第二騎士団所属、バレルです。

 以後お見知り置きください」


 やっぱり第二騎士団の人だったか。

 まぁ第二騎士団は、要人警護を主な任務としてるしね。


「私はSランク冒険者、白銀のソフィーです」


「白銀……? 失礼ですが、ソフィー様の二つ名は白銀の天……」


「こほん! それで、こっちがパーティーメンバーの……」


「フィルです」


「ルミエよ」


 バレルさんの言葉を途中で遮っちゃったけど、こればっかりは仕方がない。


「それで、バレルさん。

 そちらのお坊ちゃんことは別に気にしていないので、ご安心ください。

 子供が生意気なのは当然のことですからね」


「なっ!?」


 ふっ、どうよ?

 このいかにもな大人の態度っ!

 お子様扱いしちゃったサイラスには悪いけど……これで話をまったく聞いてなかった事実を誤魔化してやるわっ!!


「それよりも、今後の予定を相談しましょう」


 ふっ、完璧だわ!

 これでバレルさんと護衛形態とか、今後の日程とかの話をするという口実でこの場所から……リアットさんの近くから離れられっ……


「ソフィー」


「うん、わかってる」


 どうりで、バレルさん達が……Bランクの騎士が14人に加えて、Aランクの強者がいるのに、ガルドさんが私に話を持ってきたわけだわ。


「バレルさん、すぐにあの2人を馬車中に。

 そして他の皆さんは、馬車を中心に周囲の警戒を怠らないでください」


「ソフィー様、それは……」


「はい」



 ヒュッ!!



 空気を切り裂いて、サイラスの眉間へと真っ直ぐに飛来する矢を切り落とす。


「「「「「「「「ッ!!」」」」」」」」


「敵襲です」

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