第204話 慣れって怖い!

 どの国にも属していない中立都市でありながら、大国の首都と比べても遜色がないほどに栄えている大都市。

 世界各地から集った多くの冒険者をはじめとする人々によって形成された街……アバン。


「うんうん! やっぱりこの街は賑わってるな〜!!」


 久しぶりに来たけど、やっぱりこの熱気はすごい!

 最近はイストワール王国の王都ノリアナも、かなり賑わってるけど……それでもここには負ける!!


 なんというか、こう……いる人達の気質が違うのかな?

 この街には冒険者が多いからか、熱気がすごいんだよね〜。

 けど……嫌いじゃない! こういうのも嫌いじゃないっ!!


「ソフィー、そんなにはしゃいだら危ないでしょ?」


「むっ、フィル……」


 はしゃいだら危ないって……別にはしゃいではないし。

 そもそも! フィルは私を何歳だと思ってるわけっ!? 私はもう12歳なのに、いつまでもお子様扱いして!!


 そりゃあフィルは知らないだろうけど、こう見えて私は修行時間を確保……じゃなくて、冒険者活動を……でもなくて!

 とにかく! この一年半の間に王子妃教育は既に終わらせて、王妃教育も終了間際まで進めている天才って名高いのにっ!!


「ふふっ、可愛いからいいじゃない」


 そうそう! 可愛いから……


「ん?」


 ルミエ様、ちょっと待ってください!

 それじゃあ私が幼子みたいに、はしゃいでたってことが否定されてないように……むしろ肯定されてるように聞こえるんですけど!?


「まったく……ルミエ様はソフィーに対して甘すぎですよ」


「そうかしら?」


 なんだろう、このなんともいえない微妙な気持ち……


「一応このパーティーのリーダーは、私なのに……」


 どちらかというと保護者的立場であるルミエ様はともかくとして、フィルはもうちょっとリーダーたる私に敬意を持ってくれてもいいと思う。


「というか、なんで2人も一緒に?

 呼ばれたのは私なんですけど……」


 そう! そもそもギルド本部からの連絡で召集されたのは、最年少Sランク冒険者〝白銀〟の二つ名を持つこの私なのだ!!

 なのになんで2人も着いてくるかな……


「なんでって、僕達はパーティーでしょ?」


「それは、そうだけど……」


「それに、今日は元々僕達と予定があったんだからね?

 ソフィーが急遽来れないって知って、ミラさん達が悲しんでたよ」


「うっ……」


 そ、それは、本当に申し訳ないけど……仕方ないじゃん!

 イストワール王国の王都支部で顔見知りの受付嬢さんから聞いた、ギルド本部からの連絡で至急来るようにって呼び出されちゃったんだもん!!


「みんな楽しみにしてたんだから、後でちゃんと謝っておくんだよ?」


「うん……ちゃんと埋め合わせはする」


「ふふっ、ならさっさと用事を終わらせて帰るわよ」


「そうですね!」


 本音をいえば、この街をもっと観光したいところだけど……あっ! 閃いちゃった!!

 今回なんで呼び出されたのかは知らないけど、速攻で用事を終わらせてミラさん達と一緒に観光しよう!!


「むふふっ!」


「じゃあ行くわよ──」


「行くわよ、じゃありません!」


「あら、突然不躾ね」


 おぉ〜、さすがはルミエ様!

 一切気配を発することなく、視覚外から放たれた一撃を軽やかにかわした!


「クリスティアさん!

 お久しぶりです」


「ふふっ、お久しぶりです」


 う〜ん、それにしても……やっぱりクリスティアさんは綺麗だわ。


「フィルくんも、こんにちは」


「ご無沙汰しています」


「それにしても……ルミエ様、以前にもお伝えしましたが、冒険者ギルド統括グランドマスターの執務室に転移しようとしないでください」


「いつもの事じゃない」


「はぁ……ただでさえSランク冒険者が3人並んで歩いてるだけで目立っているのですから、街中でいきなり転移魔法を使わないでください、と言っているのです」


「はいはい、次からは気をつけるわ」


 おぉう、適当な返事だ。


「はぁ……」


 うん、今度クリスティアさんにリリラックス効果のある茶葉をプレゼントしてあげよう。


「とりあえず、これ以上騒ぎになる前にギルド本部に移動しましょう」


「わかりました」


 もう慣れちゃって、感覚が麻痺してたけど……確かに私達の周りに人だかりができちゃってますしね。

この状況でなんとも思わなくなってるとは……我ながら慣れって怖い!!

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