第201話 歓声
「あ、あの〜……」
「なぁ〜に?」
「えっと、その……なんでもありません」
さっきまで殺伐した雰囲気で、冷え冷えとした冷笑を浮かべて、すさまじい怒気と殺気を放っていたのに……今は楽しそうにニコニコと、満面の笑顔。
いえない、この状況で恥ずかしいから降ろしてほしいとは断じていえない!!
というか! 本当になんなのこの状況は!?
どうして私はレヴィアさんに抱っこされてるのっ!?
「まったく……レヴィア、ソフィーを解放してあげて」
「ル、ルミエ様ぁ〜!!」
ナイスタイミングです!
さすがはルミエ様! ルミエ様すごい!
かっこよくて、凛々しくて、美しくて……こうして私のことも助けてくれる! もう一生着いていきますっ!!
「なりません!
ここには私の聖域を穢し、ご主人様を貶めたゴミがまだ4匹も残っているのですよ?」
「「「「ヒッ……!!」」」」
おぉう、私の断魔結界で隔離されてる4人が喉をひきつらせた悲鳴をあげたけど……その気持ちはよくわかる。
今4人を睨んだレヴィアさんの目は、底冷えするほどの怒りと殺意に満ちていてすごく怖かったし。
「この子になにかあったらどうするのですか!? この子は私がお守りします!!」
えっ? わ、私を守る?
それってどういう……レヴィアさんとは完全に初対面だし、私とはなんの接点もないはず。
それにさっきまでは、邪魔をするなら当然私のことも含めて皆殺しにする! って感じだったし。
現に愚かな人間共は皆殺し、的なことをいってたのに……
「レヴィア様、大丈夫ですよ。
ソフィーも困惑してるみたいですし、降ろしてあげてください」
「あら、貴方は……フィルではありませんか! お久しぶりですね。
しかし、なぜ貴方がここに?」
「あはは、やっぱり僕には気づいていませんでしたか。
ここには冒険者ギルドのSランク冒険者昇格試験で来ていたんですよ」
「えっ、えっ?」
なになに! どういうこと!?
この感じ……もしかしなくても、フィルとレヴィアさんって知り合いなのっ!?
「まぁ! 貴方がSランク冒険者に!
ふふっ、成長しましたね」
「いや、今回の騒動で試験は中断しちゃってるんですけどね……ソフィーも僕と同じく、Sランク冒険者昇格試験を受けていたんです。
レヴィア様はこの4人に、ソフィーが遅れを取ると思いますか?」
そうだ! そうだ!
レヴィアさんが私を守る云々? はちょっとわからないけど、私はこの4人に負けるほど弱くないのだっ!!
「ふふっ、成長したとはいえ、まだまだ甘いですね。
この世の中には何事にも、例外や万が一というものがあるのです」
おおぅ、軽く論破されてしまった。
まったくもってその通りだけど……フィル! もっと頑張ってっ!!
「ったく、何やってるんだよ……」
ガ、ガルドさん!!
「まったくね」
「呆れた顔をしてますがルミエ様、貴女もですよ。
人前で竜の姿から人の姿に戻らないでください……まったく……」
た、確かに! 自然すぎて普通にスルーしてたけど、この広場にいるら冒険者達はルミエ様が人間じゃないってことを知らない。
にも関わらず、こんな人前で人間の姿に戻っちゃったら……騒ぎになることは必至!
だって最強の種族とされる
「問題ないわ。
どうせレヴィアが彼等の記憶を操作して、自分自身についての記憶は削除するでしょうしね」
「それは……そうかもしれませんが」
そ、そうかもしれないの? 記憶を削除って……
「とにかく! 場所を移すぞ、ここじゃあ目立つ」
そりゃまぁ、ここは冒険者ギルド本部の中心に位置する広場のど真ん中だし。
この広場を包囲してる、高位冒険者の皆さんが見てらっしゃるからね。
「だが、その前に……」
「?」
いったいなにを……
「テメェら〜っ!! 詳しくは後で説明するが……俺達の街は守られたっ!
これで正真正銘、スタンピードは収束したっ!!!」
「「「「「「「「──ッ!!!」」」」」」」」
「っ〜!」
す、すごい歓声っ!!
「今夜はギルド本部全体を上げての祭りだっ!
テメェらは避難していたヤツらを呼び戻して、宴の準備を進めくれ!!」
う、宴!!
いい! なんか冒険者って感じがしてすごくいい!
絶対に私も参加するっ!!
「ティア」
「はぁ、これだから男は……」
クリスティアさんが呆れた様子で、でもちょっと楽しそうに笑みを浮かべて……
パチン!
指を打ち鳴らした瞬間。
一瞬にして視界が冒険者達が歓声をあげる広場から、
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