第191話 刮目せよ!!

「とはいえ……」


 迫り来る大量の水、水、水っ!

 いくら高位冒険者が集結してるとはいえ、これはさすがにヤバい!!

 あの勢いの水に呑み込まれたらひとたまりもないっ!


「とりあえずあの水を堰き止める!

 アース・ウォール!!」



 ズドォッ!!



「おぉ〜」


 すごい、一瞬にして広場全体を囲うように土の壁が築かれた!

 さすがは高位冒険者だわ!! けど……土や大地の魔法で地面を操作して、障壁を作ってたとしても……



 ピシッ



「チィッ! マジかよっ!!

 統括! やべぇぞ!!」


 とめどなく凄まじい勢いで、ダンジョン内から溢れ出す濁流の前には焼け石に水!


「総員! 屋根の上に一時退避!!

 魔法が使えるヤツ、遠距離攻撃ができるヤツを主軸に、他はそいつらのフォローに回れ!!」


 まっ、普通はそうするしかないよね。

 七大迷宮の一角である大海のスタンピードなわけだし、冒険者ギルド本部が……この街がダンジョンから溢れ出す大量の海水で、洪水みたいになるのは防ぎようがない。


「なんて……そう簡単に諦めると思ったら大間違いよ!」


 この私がいて! そう簡単に街に被害を出すなんて、許されるはずがないっ!!


「ふふっ!」


 七大迷宮のスタンピードだろうが、なんだろうがやってやろうじゃないっ!

 この私が! これ以上この街に! 冒険者ギルド本部に被害を出さずに、この事態を収めて……


「仕方ない……ソフィー、僕のそばを離れないで」


「えっ……ちょっ!?」


 な、なにっ! なんでいきなりお姫様抱っこっ!?


「じっとしてて」


「っ〜!」


 確かに私はお父様達で抱きしめられたりするのは慣れてるけど! さすがにこれは恥ずかしすぎるっ!!

 というか耳元で呟かないでぇっ!?


 お、落ち着け! 落ち着くんだ私っ!!

 ここは戦場! 戦場で取り乱すなんて命取りだぞ!?

 私はソフィア・ルスキューレ! いずれ最強に至る者っ! この程度で取り乱す私ではないっ!!


 すぅ〜はぁ〜……よし! だいぶ落ち着いた。

 けど、とりあえず仮面をつけててよかった!

 でもなんでいきなりお姫様抱っこなんて……


「ん?」


 フィルの魔力が! これはっ!!

 白い光の衣を纏って、背中には天使みたいな光の翼が!

 これは新人戦のときにフィルが見せた、フィルの本気の戦闘スタイル!!



 バサッ!



「わっ!」


 思わずフィルの首に手を回してしがみついちゃったけど! これは仕方ない! 不可抗力だっ!!

 だって、フィルが翼をはためかせると同時に、身体が浮き上がったんだもん!!


「っと」


 おぉ〜、フワッと軽やかに屋根の上に着地した!


「ったく、この状況でなにイチャついてるんだお前らは?」


「イチャっ──!?

 ガ、ガガガガルドさんっ!? な、なにをいっ、いってるんですかっ!?」


 私とフィルがイ、イチャついてるなんて!

 ここは戦場ですよ!? それも、冒険者ギルド本部の! この街の存続をかけた一大事っ!!

 そんなときにイチャついてるだなんて……!


「まったく……油断も隙もないわね」


「ふふっ、微笑ましいじゃないですか」


 ルミエ様とクリスティアさんはなんの話をしてるんですかっ!?


「あはは、ソフィー、焦りすぎだよ」


「べ、別に焦ってなんか……」


「はい、足元気をつけてね」


「むぅ……」


 降ろしてくれたのはいいけど……フィルはちょっと私のことを子供扱いしすぎるじゃない?


「それと、ガルドさん。

 僕はソフィーを屋根の上まで運んであげただけですよ?

 今のは他に他意はないので、変な詮索はやめてください」


「今のは、ね」


 ガルドがなにやら小声で意味深に呟いてるけど、それよりも! 今ちょっと聞き捨てならないセリフが聞こえた!!


「ねぇフィル、別にフィルに運んでもらわなくても、私が転移した方が早かったと思うんだけど?」


「まぁ、それはそうだろうけど……う〜ん、今はこの後の戦闘に備えて少しでも魔力を温存しておいた方がいいでしょ?」


「な、なるほど」


 そういわれると納得せざるを得ない。

 まっ! なにはともあれ……


「統括っ! もう保たねぇ……!!」


 この状況は私にとっては好都合っ!

 広場に集結してた冒険者達が全員、屋根の上に避難したから……誰かを巻き込む心配もないし、細かいことは気にせずに全力でやれるっ!!


「ふふっ! 魔力解放っ!!」



 ピキッ──!!



 瞬間──辺り一帯の温度が一瞬にして冷え込み……


「っ! これは……」


「予想以上ですね……」



 パキパキッ──!



 私の周りの空気が。

 足元の屋根が。

 私の周囲が凍りついて、遠目からでも目視できるほどの氷の結晶ができあがるっ!


「氷冷の太刀」


 翳した私の手の中に現れるは、美しい水色の氷の太刀っ!


「ソフィー、まさか……」


 さぁ、冒険者達よ! 吹き荒れる膨大な私の魔力を!

 この私、ソフィア・ルスキューレの! 新たな英雄として名を馳せる冒険者ソフィーの力を……刮目せよ!!


「凍りつけ……白銀世界シルバー

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