第190話 あとは……

『緊急警報! 緊急警報!

 冒険者ギルド本部全域に特級緊急警報が発令されました!

 繰り返します、冒険者ギルド本部全域に特級緊急警報が発令されました!

 冒険者の指示に従い、ただに避難を開始してください』



 ウゥ〜! ウゥ〜! と、サイレンが鳴り響き、警報が繰り返し流れる冒険者ギルド本部。

 ついさっきまでは多くの人で活気に満ちていたのに、今はすっかり誰もいなくなった街の中央に位置するお城……本部前の広場にて!


「つい先程この本部にあるダンジョン、七大迷宮・大海の内部にてスタンピードが目撃された。

 街の人は早急に避難させたが、もう猶予はねぇ!

 今すぐにでも、ダンジョンから魔物の大群が溢れ出てくるだろう……」


 集まった数百名もの冒険者が……冒険者ギルド本部にて活動していた、Bランク以上の高位冒険者が一堂に会す!!

 高位冒険者がこんなに……さすがは冒険者の街と呼ばれるギルド本部! 壮観だわっ!!


「はっきり言うぞ、ここから先は未知数だ。

 なにせ七大迷宮のスタンピードなんて前代未聞だからな、なにが起こるのかなんて誰にもわからねぇ」


 Bランク以上の高位冒険者なんて、小さな街だと2人いればいい方だし。

 イストワール王国の王都は……まぁ、例外だとしても、大都市でも20人もいれば多い方なのに……高位冒険者が数百人もっ!!


「冒険者といえど命あっての物種だ、去りたいヤツはここから去っても構わない。

 この俺が誰にも文句は言わせなねぇ。

 死ぬ覚悟のあるヤツだけがここに残れ……」


 さすがにSランクはいないけど、クリスティアさんに聞いた話によればAランク冒険者も50人以上いるらしいし。

 パッと見ただけでも、二つ名を持ってるような有名な冒険者がいっぱいいるっ!


「テメェら、いいんだな? ったく、せっかく逃げるチャンスを作ってやったのによ……バカどもが!

 この街は俺達の、冒険者の街だ!

 野郎共っ! 俺達の街は、俺達の手で守り抜くぞっ!!


「「「「「「──ッ!!!」」」」」」


 おぉ〜! 皆さんすごい気合いだっ!

 いいね! いいね! これぞ冒険者って感じだ!

 私もテンションが上がってきた〜っ!!


「クックック、久しぶりに血湧き肉躍るじゃねぇか!

 なぁ、クリスティア?」


「そこで私に話を振らないでください。

 まったく、これだから男は……」


「あっ、クリスティアさん!」


 準備をしてくるっていってたけど……こんな軽装で大丈夫なのかな?

 防具はほとんどないし、武器も腰にあるレイピアだけだし。


「クックック、そうは言いつつも……その格好、やる気満々じゃねぇか。

 お前がフル装備してる姿なんて、久しぶりに見たぞ?」


「えっ?」


 これでフル装備?


「まっ、ソフィーが不思議に思うのも無理はねぇな。

 だが……ティアは強いぞ? なんたって、昔は血塗れブラッディ……」


「ガルド、私その二つ名は好きじゃないんです」


「ま、まぁとにかくだ! ティアの事は心配しなくても問題ないって事だ!!」


「わ、わかりました……」


 クリスティアさんの二つ名、血塗れブラッディ……なに!?

 めっちゃ気になるんですけどっ!!


「っ!!」


 この感じっ!


「フィル」


「うん」


「ソフィーとフィルも感じたか?」


「はい」


「残念ながら、しっかりと」


 まぁ、フィルの気持ちもわかるよ?

 私達の勘違いだったら一番よかったんだけど……一般人は避難させたし、冒険者達も集結して待ち構えてる状態。

 この短時間でできる限りのことはした! あとは……


「きた!」



 ドゴォォォオッ──!!!



 冒険者ギルド本部の、この都市の中央に位置する七大迷宮・大海の入口から視界を埋め尽くすほどに大量の水が。

 魔物の大群が溢れ出す!!


「ふふっ!」


 あとは、このスタンピード食い止めるだけっ!!

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