第188話 ……なんだと?

「「……」」


 えっ、なに? なんでルミエ様もフィルも黙り込んじゃうの!?

 私なにか変なことをいった?


 はっ! ま、まさか!!

 これがスタンピードの序章なんかじゃなくて、ギルドが用意したS級試験の試練の一環っ!?


「まぁ、その方がいいだろうね。

 てってきり、ソフィーの事だから、この場所でスタンピードを食い止めるとか、無茶な事を言い出すと思ってたけど……安心したよ」


 いや! さすがにそこまで無謀じゃないから!!

 スタンピードを……それも、七大迷宮のスタンピードをここにいる3人とキューちゃんだけで、食い止められるなんて思い上がっては……


「ん?」


 ちょっと待てよ。

 確かに私の実力なら、七大迷宮のスタンピードを食い止めるなんて不可能だろう。

 そこまで自分の力を過信してないし、思い上がってもいない。


 けど……私とフィルはともかく、ルミエ様ならこのスタンピードを鎮めることができるのでは?

 あれ? となると、一度ギルド本部に戻って報告したり、警告したりせずに、確実に外での被害をゼロに抑えられるここで対処すべき?


「ソフィー? なんか嫌な予感がするんだけど……」


「ここはギルドに戻って、ガルド達に協力をさせた方が最善だと思うわよ?」


「なるほど」


 ルミエ様がそういうのなら、そうなんだろう。

 確かにあれだけ広範囲で大規模な津波と、魔物の大群なら取りこぼしちゃう可能性もあるもんね。

 うんうん! 納得だわ。


「では! 転移魔法を使って早急に、ギルド本部に帰還しないとっ!!」


 ダンジョン内部から外部へと直接転移することはできないから、一度ダンジョンの入り口付近に転移しないとダメなのが手間だけど……こればっかりは仕方がない。

 とりあえず、ダンジョンの入り口に転移……


「ふふっ、わかったわ」


 ルミエ様が笑みを浮かべた瞬間……


「えっ?」


「は?」


「キュ?」


 唖然と呟く私達の眼下に広がるのは、大都市といっても過言ではない規模を誇る冒険者ギルド本部の街並み。

 そう、眼下に……


「キュイッ!?」


「ちょっ、え!?」


 ふむ、キューちゃんとフィルがびっくりして取り乱すのも無理はない。

 だって、さっきまでダンジョンの中にいたのに……一瞬で冒険者ギルド本部の上空に転移したわけだし。


「さすがはルミエ様!!」


 本来ならダンジョンの中から、直接外部へと転移することは不可能なはずなのにっ!

 まさかダンジョン内から、冒険者ギルド本部の上空に転移しちゃうなんて!!


「なんでそんなに落ち着いてるのっ!?

 今落下してる真っ最中なんだけどっ!!」


「キュ! キュウっ!!」


「むふっ」


 フィルったら、取り乱しちゃって!

 キューちゃんも可愛い〜!!


「大丈夫だよ、ほら」



 パチンッ!



 さすがにこの一瞬で、ルミエ様みたいにノーモーションでの転移はできないけど……


「ふふん〜!」


 私にかかればこの通りっ!!

 冒険者ギルド本部の上空から、一瞬で冒険者ギルド統括グランドマスターであるガルドさんの執務室に到着っ!


「ははは……」


「キュイ?」


 フィルが苦笑いを浮かべて、キューちゃんはキョトンとしてて撫で回したいけど……今はこっちが優先!!


「……お前らなぁ、統括グランドマスターの執務室に転移して来るなよ。

 それも、水竜を連れて来るとか……いったいどういう状況なんだ? 流石の俺でもちょっと混乱してるぞ?」


「流石はあのお方の……と、言ったところですね」


「今はそんな話をしている暇はありません!!」


 なにせ! 私達の推測が間違っていなければ、今はまさに冒険者ギルド本部の存続がかかった一大事なのだ!!


「おそらくですが、私達がS級試験に向かった七大迷宮・大海で……スタンピードが発生しました!!」


「……なんだと?」

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