第184話 海で遊べると思ったのに〜っ!!

 ここ七大迷宮が一角、大海の第一階層に広がるビーチは、本来は世界有数のリゾート地として賑わってるんだけど……


「むふっ!」


 今日は私達のSランク冒険者昇格試験が行われるとあって、今この場にいるのは私達のみっ!

 つまりっ! この綺麗なビーチは私達の貸切状態であり……貸切状態ってことは、仮面を取っても問題ないということっ!!


「よし!」


 とりあえず、ここで遊……げふん! げふん! 休憩して英気を養うって決まったわけだし、水着に着替えなきゃ!!



 パチン!



 指を鳴らすと同時に発動するのは、私的冒険者必須スキルの1つ。

 空間魔法を応用して、一瞬にして服を着替えることができる魔法……換装魔法ドレスチェンジ!!


「ちょ! ソフィーっ!?」


「ふふ〜ん!」


 どうだ、驚いたか〜!!

 この魔法は空間魔法で構築している魔法空間および、私がマーキングしている場所。

 公爵邸にある私のドレスルームにある服や装備に、一瞬にして着替えることができる、超便利な魔法なのだっ!


 まぁ、実際にはすぐに着替えることができるのは、魔法空間に収納してる物のみ。

 マーキングしてるしドレスルームの物に着替えるときは、空間魔法で一度魔法空間を経由しないとダメなんだけど……うずうず。


「ねぇ、フィル……どう?」


「綺麗だよ……って! そうじゃなくて!!

 なんでいきなり水着に!? 仮面まで外してるし、誰かに見られたら……」


「今はSランク冒険者昇格試験中で貸切だから、私達以外は誰もいないよ?」


 ぷぷっ! フィルったら、私が水着に着替えただけで赤くなってあたふたしちゃって!

 まったく、お子ちゃまなんだから〜。

 冒険者たる者! この程度で取り乱してはならないのだ!!


「ふふっ、ソフィーも初めて水着を着た時は、真っ赤になってたじゃない」


「ル、ルミエ様っ!?」


 それはいわないでください!


「それはそれ! これはこれです!!」


「ふふっ」


 と、とにかく! これで水着には着替えた。

 あとは……



 パチンっ!



 空間魔法で作った亜空間からパラソル! ビーチチェア! サイドテーブルを3セット出してっと!

 サイドテーブルには飲み物を用意っ!!


「ふっ、我ながら完璧だわ」


 さぁ! これで準備は全て整った!!


「むっ、も〜! フィルとルミエ様も早く、水着に着替えてください!!」


「はいはい、わかったわよ」


 さすがはルミエ様! 話がわかるっ!!

 当然ルミエ様も私と同じく換装魔法ドレスチェンジが使えるから、一瞬で黒色の水着に着替えた。

 よって! 残るはフィルだけ!!


「そんなに見つめられても、残念ながら僕は水着を持ってきてないから無理だよ?」


「なっ!?」


 海に……世界的に有名なリゾート地に来るのに、水着を持ってきてないっ!?


「なら仕方ない……」


「ごめんね」


「大丈夫! こんなこともあろうかと、ガルドさんがフィルの分の水着も用意してくれたから問題ない!!」


「……」


 うんうん、さすがは冒険者ギルドの統括グランドマスターたるガルドさん! 素晴らしい慧眼だわ!!

 これぞまさしく、備えあれば憂いなし!


「はい! これ、フィルの水着」


「……うん、ありがとう」


「えへへ、どういたしまして」


 まっ、私が用意したわけじゃないんだけど。

 フィルが着替えるのを待って、それからみんなでビーチバレーをしたり、海で泳いだり、バーベキューをしたり!


「むふふ〜」


 夢が広がるわ〜!!



 バシャァァッン!!



「「……」」


 あれ? おかしいな、今のは……見間違いかな? デジャブってやつ?

 水面でジャンプした巨大な影が大きな水飛沫を上げて、綺麗な虹を作りながら着水する。

 うん、なんかめっちゃ既視感のある光景が見えた気がするんですけど……



「キュィィーッ!!」



「ルミエ様」


「どうしたの?」


「もしかしなくても、ここの海にも水竜がいるんですか?」


「えぇ、ご覧の通りね」


「しかも……なんかめっちゃこっちを見て、威嚇してるみたいなんですが……」


安全領域セーフティーゾーンにあったあの湖とは違って、ここの水竜は普通にダンジョンの侵入者を排除しようとしてくるから当然よ」


「なるほど……」


「って! 呑気に話してる場合じゃない!!

 来るよっ!!」


 せっかく……せっかく、フィルとルミエ様と一緒に、初めての海で遊べると思ったのに〜っ!!

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