第182話 S級試験

「なんで? どうしてフィルがここに……!?」


 これはいったい、なにごとっ!?


「はっ!」


 もしかして……ガルドさんとクリスティアさん、そしてフィル。

 うそ! そういうことなのっ!?


 じゃ、じゃあガルドさんとクリスティアさんに改めてご挨拶しないと!

 なにせ! 私とフィルは……お友達だもんねっ!!


「うん、だいたい何を考えてるのかはわかるけど、普通に違うからね」


「へっ?」


 な、なんですとっ!?

 い、いや! 私の考えを覗き見ることができるルミエ様はともかく、いくらフィルでも私がなにを考えてるのかなんてわからないはず!!


 うんうん、つまり! フィルはなにか勘違いしてるってわけだ。

 むふふっ、隠そうとしても無駄なのだよ!

 謎に包まれていた、フィルの素性を見破ってやったわっ!!


「ふふん!」


「ソフィー、残念だけど、僕は統括グランドマスター達の子供じゃないよ」


「ほぇ?」


 な、なんで!?


「あはは、ソフィーって本当にわかりやすいよね」


「むっ」


 失礼な! こう見えて、私は既に天才と称される公爵令嬢!!

 僅か6歳のときにたった1年ほどで、公爵令嬢としての淑女教育を修了させたし……


 早速始まった王子妃教育でも、教育係の夫人に文句の付け所がないといわしめた才媛なのだ!!

 ポーカーフェイスも完璧である私が、わかりやすいなんてあるはずがない! そもそも、いまは仮面をつけてるし!!


「ごめんごめん、そんなムッとしないで。

 ソフィーは素直だから、なんとなく考えている事がわかるんだよ」


「むぅ〜」


 頭を撫でられても、そんな言い訳では誤魔化されないぞ!

 どうして私が考えていることがわかったのか、絶対に聞き出してやるわっ!!


「あはは、実は僕のご先祖様が神様なんだ。

 そのおかげで僕は他人の考えを少し読めるんだよ」


「神様……」


「そう」


「……はぁ〜」


 まったく、そんなことで誤魔化されると思われてるなんて。


「まぁ、間違ってはいないわね」


「えっ?」


 ル、ルミエ様、いまなんて……


「ったく、なにイチャついたんだよ、お前らは……」


「ほわっ!? イ、イチャっ……もう! ガルドさん、なにをいってるんですかっ!!」


 私が誰とイチャついてると!?

 わ、私とフィルはお友達なのであって、断じてそのような関係ではないっ!!

 そもそも! 不本意ながら私には婚約者がいるわけだし!


「あはは、ソフィー、耳が真っ赤になってるよ?」


「っ〜! う、煩いですよ! お黙りなさい!!」


 お、落ち着け私!


「ふふっ、微笑ましいですね」


「照れているソフィーも可愛いわ〜」


 落ち着くのだ、私!!

 深呼吸、深呼吸……すぅ〜、はぁ〜……よし!

 ここは一度、ビシッと私の威厳をフィル達に見せつける必要があるな。


「こほん、私を誰だと思っているのです。

 私はソフィア・ルスキューレ! 誇り高きルスキューレ公爵令嬢にして、新たな英雄と呼ばれるAランク冒険者ですよ?

 この程度で恥ずかしがったり、取り乱したりする私ではありません!!」


 ドド〜ン! ふふ〜ん、どうよ?

 完璧にビシッと決まったわっ!!


「ソフィーちゃん」


「ん?」


 グレンさん? ミレーネさんも、いきなりどうしたんだろ?


「家名まで名乗ってよかったのか?」


「……あっ」


 や、やばい! ミスったっ!!

 ど、どどどどうすればっ!?


「とりあえず……ソフィーさん、こちらへどうぞ。

 ルミエから話を聞いて、ソフィーさんのために特別にスイーツを取り寄せたんですよ?」


「えっ! そうなんですか!?」


 そうと聞けば、こうしていられない!!

 私のためにわざわざ用意してくれたんだし、美味しくいただかなければ!!


「むむっ、グレンさんとミレーネさんも早く!

 フィルもそんなところで突っ立ってないで、早く座って!!」


「この変わり身の速さ……」


 瞬時にソファーに座った私を見て、ガルドさんが愕然となにか呟いるけど、細かいことは気にしない!!

 もう家名までフルネームで名乗っちゃったし、仮面をつけてても仕方ない! あとは……



 パチン!



 指を鳴らすと同時にフィル達を、空いてる席に転移させてっと!

 これでよし!!


「ふふっ、では用意しますね。

 統括グランドマスターは、その間に試験の説明をお願いします」


「あぁ、わかった」


 おぉ〜、ガルドさんが返事をした瞬間、クリスティアさんが一瞬で消えた。

 さすがは冒険者ギルドの副統括、すさまじい精度の転移魔法だけど……


「試験、ですか?」


「そう、今回Sランクに昇格申請を行った3人、ソフィー、ルミエ、そしてフィル」


「えっ?」


 いまフィルって……


「ソフィー、忘れてるかもしれないけど、こう見えて僕も一応Aランク冒険者なんだよ?」


 そ、そうだった!

 確かにいわれてみれば、初めてフィルとあったときにフィルもAランク冒険者だっていってた。

 なるほど〜、だからフィルもここに来たんだ。


「まぁ、そういう事だ。

 それでだ! お前達3人には、推薦状の提出の後……Sランク冒険者昇格試験、通称S級試験を受けてもらう!!」

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