第173話 我が家が一番!!

 いっぱいに吸い込んだ息を……


「ふぃ〜」 


 吐き出しながら、ふかふかなベッド様にダイブっ!


「あぁ、疲れた〜!」


 ベッドに飛び乗って寝転ぶなんて、お行儀が悪いけど……こればっかりは仕方ない。

 きっとファナも見逃してくれるはず! なにせ……


「ふふっ、お帰りなさいませ。

 1週間の三大学園交流会はいかがでしたか?」


 そう! ファナがいうように、三大学園交流会を無事に終えて……たった今! 1週間ぶりに、オルガマギア魔法学園にある自室に帰ってきたところなのだっ!!


 三大学園交流会の期間中、学園が用意してくれたホテルの居心地もよかったけど

 だけど……うんうん! やっぱり、我が家が一番落ち着くわ〜!!


 しかし、交流会はどうだった、か〜。

 ミスコンに出場することになったり、雷帝と謳われる伝説の英雄であるアークさんが学園の結界を破壊して乱入してきたり。

 他にもこの1週間、いろいろなことがあった。


「う〜ん」


 なにから、どうやって説明しよう?



 バンっ!



「ソフィアお姉様!」


「うぇっ! ミ、ミネルバ?」


 いきなり寝室の扉を開け放って、文字通り飛びつくようにミネルバが抱きついてきた!

 まぁ、そのおかげで、ちょっと貴族令嬢らしからぬ変な声が出ちゃったけど……


「お姉様! お帰りなさいっ!!」


 ニパァ〜って、キラキラした満面の笑みを向けられたらなにもいえないっ!

 あぁ〜! もうっ、私の妹はなんて可愛いのかしら!!


「ふふっ、ただいま」


 もう、頭をなでなでしちゃう!


「えへへ〜」


 ちょっとまえまでは、こんな光景は考えられなかったけど……ミネルバが私に抱きついて、頭を撫でられて嬉しそうにニコニコしてる。

 うん、よきかな!


「もう! ミネルバ様!!

 お気持ちはわかりますが……ノックもせずに部屋に入るのみならず、いきなり抱きつかれるなんてはしたないですよ!」


「うっ、ごめんなさい……」


「まぁまぁ、ちょっとくらいいいじゃない」


「お姉様っ!」


 そりゃあ私だって公爵令嬢なわけだし、仮にも第一王子の婚約者って立場。

 それ相応の立ち振る舞いをする必要があるのは認めるけど……


 1週間ぶりの再会なわけだし、何より! ここは公の場じゃなくてプライベートな空間!!

 よって! ちょっとくらいハメを外しても、なにも問題はないのであるっ!!


 つまり! 私がベッドにダイブしたのも、なにも問題はないのだっ!!

 ふふん〜、どうよ? この完璧な理論武装っ!

 うんうん、さすがは私! 我ながら完璧だわ!!


「では! 私もソフィーお嬢様のことを抱きしめてもよろしいのでしょうか?」


 えっ? いきなりどうし……あっ、なるほど。

 ほほう、そういえば私の完璧な理論武装を突破できると?

 あまい! あまいぞ、ファナっ!!


「もちろん!」


「そうですか……ふふっ、では遠慮なく」


「えっ?」


 ファナが満面の笑みで近寄ってくるんですけど……


「えっ、ちょっ、ファナ?」


 や、やばい! ファナのこの目は……私を着飾ろうとしているときの、メイド軍団を率いているときの目っ!!

 このままじゃあ、ファナが満足するまで延々と撫で回される明確な未来が見えるっ!!


「それでは、失礼いたしま……」


「あはは、ソフィーお嬢様はミネルバに甘すぎですね」


 ウェ、ウェルバーっ!!

 ナイスタイミングだわっ!


「チッ」


「えっ、今舌打ちしました?」


「いえ、舌打ちなどと……」


 思いっきりウェルバーのことを睨んで、はっきりしてたけどね……まぁ、うん。

 このことは触れないでおこう。


「こほん、それよりも! 交流会の話を聞きたくない?」


「っ! 聞きたいです!!」


 ふふっ、やっぱりミネルバは可愛い!

 そして……


『あら?』


 ベッドの上で、我関せずって感じで寝転んでた猫ちゃんサイズのルミエ様も可愛い〜っ!!


『別に気を使わなくてもいいのよ?』


 気を使うなんてとんでもないっ!

 ルミエ様が思わず抱きしめたい衝動に駆られるほどに可愛いのは、誰もが認める周知の事実っ!!

 とりあえずルミエ様を膝の上に置いてっと……これでよし!!


「こほん、では! まず最初に交流会で行われたミスコンで私が特別賞を受賞した話から……」


「ミス、コン……お姉様が?」


「ソフィーお嬢様、そのお話を詳しくお願いします」


 あ、あれ? なんかミネルバもファナも顔が怖いんですけど……

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