第172話 責任とって

「むふっ」


 世界三大学園。

 オルガマギア魔法学園、オルガラミナ武術学園、王立神聖レフィア学園の交流会2日目。

 昨日に引き続き、今日も特に問題なくつつがなく終了した。


 かつてマリア先生やガルスさんと一緒に聖魔大戦で活躍した、伝説に謳われる英雄。

 雷帝アークが突然学園の結界を破壊して、ミスコンの会場に現れたりしたけど……


「むふふ〜」


 そのあとなぜか、レフィーちゃんにマリア先生達や雷帝アーク達とお茶会を一緒にしたりしたけど!!

 とにかくっ! 交流会2日目もつつがなく、無事に終了したっ!!


「あの……ミラさん? これはいったい……」


「それがね……実はマリア先生に連れられて、帰って来てからずっとあの調子なのよ」


「ふんふんふ〜ん」


 ベッドにうつ伏せで寝転んで、頬杖をつきながら足ぷらぷら揺らす。

 いつもなら公爵令嬢として、仮にも第一王子の婚約者としてはしたないってファナに怒られるけど……


 今は交流会の真っ最中っ!!

 学園が用意してくれたホテルの2人部屋で、ここ部屋にいるのは私とルームメイトであるミラさんだけ!

 つまり……ふっ、私を咎める者は、誰もいないっ!!


「にゅふっ!」


 この姿勢で、思う存分!

 満足のいくまでこうしてやるわっ!!


「ご覧の通り、ずっと心ここにあらずって感じでね。

 マリア先生や他の方々と一緒に転移で移動した後に、いったいなにがあったのかしら……」


「まぁ、少なくとも悪い事ではないようですけどね。

 ずっと、何かを眺めながらニマニマしてますし」


「もう! ソフィーちゃんっ!

 いい加減、こっちに戻って来てっ!!」


「な、なんですかっ!?」


 びっくりしたぁ〜。

 もう! ミラさんったら、いきなり肩を掴んで揺さぶらないでくださ……


「ぇ……?」


 な、なにこれ?

 なんでフィルが……それに、ヘレンさんにセレナさん、クラスのみんなもっ!?


「ひっ……」


「ひ?」


「ひゃぁぁぁっ〜!!」


「「「「「「「っ!!」」」」」」」


 見られたっ! フィ、フィルに、クラスのみんなにっ! パ、パジャマ姿を見られちゃったっ!!

 い、いや! クラスのみんなといっても女性陣だけだし、問題なのはそこじゃない……問題なのは……


「ソ、ソフィーちゃん?」


「うぅ……もう、お嫁にいけない……」


 殿方に! フィルにパジャマ姿を見られたということっ!!

 こうなったら、もうフィルに責任を取ってもらうしか……


「フィル、責任とって」


「うん、まぁ……こうなるような気はしてたよ」


 フィルめ! 私のパジャマ姿を見たくせに、夜に令嬢の部屋に入ってるくせになにを平然とっ!!


「フィル、これはどういう事かしら?」


「ソフィーちゃんに何かしたの?」


「事と次第によっては……」


「ちょっ、皆さん落ち着いて。

 ソフィーの家柄については、もう薄々……というか、普通に気づいてるでしょう?」


「ソフィーちゃんが由緒正しい家柄の、貴族のお嬢様って事?」


「それはまぁ……」


「なるほど……そういう事ね」


 えっ? ちょ、ちょっと待って!

 みんなして、うんうんって感じで頷いてるけど……なんでみんな当然のように貴族だってバレてるのっ!?


「えぇ、こう見えてソフィーは結構箱入りのお嬢様。

 異性である僕にパジャマ姿を見られて、取り乱したってわけですよ」


「うぅ〜!」


 やめて! 恥ずかしいから冷静に説明しないでっ!!


「ソフィーもとりあえず落ち着いて」


 これが落ち着いていられるかっ!!


「僕達は同じ学園の同級生で、クラスメイトで、なおかつ友達」


「そ、それはそうだけど……」


 それとこれと、いったいなんの関係が?


「その上、今は交流会……クラスのみんなで旅行に来てるみたいなものだよ?

 クラスのみんなで夜に集まって話をする程度は普通だよ」


「普通……?」


 この状況が?

 殿方であるフィルに、パジャマ姿を見られちゃったこの状況が??


「そう、普通」


「……ふぅ〜、そうなんだ」


 もう! 私としたことが取り乱しちゃったじゃんかっ!!

 普通のことなら、普通だって最初にいってくれたらいいのに……


「ソフィーちゃん、ちょろい」


「確かに」


「ちょっと心配になりますね」


 ミラさん達がなにかいってるけど……うん、まぁいいや。


「えっと……それで、どうしてみんなはここに?」


 というか、いったいいつから……


「っと、そうだったわ。

 ソフィーちゃん! マリア先生達と転移した後になにがあったの? あの人はいったい何者なのっ!?」


 あっ、なるほど。

 そりゃあ、ミラさん達はあの謎の侵入者が雷帝アークだって知らないわけだし、気になるのも当然か。


「ふっふっふ〜!」


 ならば! この私がしかと説明してさんぜようっ!!

 交流会の夜はまだまだ長いわけだし……むふふっ、今日はクラスのみんなと夜更かししちゃおうっ!!


「こほん! 実はですね……」

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