第170話 誰か説明してくださいっ!!

「さぁ、お嬢様……」


「やだ」


 ちょっ! レフィーちゃんっ!?

 なに者かは知らないけど……上空でこの人が発しただろう圧倒的な力の波動。

 あれは魔王ナルダバートや、光の使徒の最高幹部たる十使徒が第七使徒ピアよりも……


 悔しいけど……はっきりいって、今の私達とは文字通り格が違う。

 学園を守護する結界が破られたわけだし、もうすぐここにはマリア先生やガルスさん達がやって来るはず。

 それまでは可能な限り穏便に、あの人を刺激しないほうがいいんじゃ……


「やだって……まだ何も言ってないじゃないですか」


「お前の、言う事なんて、わかってる」


「はぁ、そんな事言ってないで……さぁ、一緒に帰りましょう」


 帰る? それに、やっぱりレフィーちゃんのことをお嬢様って呼んでるし。

 あの人とレフィーちゃんって、いったいどんな関係なの?


「ふんっ、この裏切り者。

 私を連れて、行きたかったら、力ずくで、やってみろ」


 ちょっとぉーっ!!

 レフィーちゃん! 本当になにいってるのっ!?

 いくら学園の妖精であるレフィーちゃんでも、さすがにあの人には勝てるはずが……


「あれ?」


 そういえば、私はレフィーちゃんの実力をまったく知らない。

 レフィーちゃんのこの態度……もしかして、レフィーちゃんって私が思ってる以上に強いのかな?


「どうしても、素直に俺と一緒に来るつもりはないと?」


「っ!!」


 あの人から発せられる、さっき一瞬だけ上空で感じたのと同じ圧倒的な力の波動っ!

 レフィーちゃんとどんな関係なのかは知らないけど……ここでやる気かっ!?


「ん、当然!」


 すごい……レフィーちゃん、このすさまじい力の波動を真正面から受けて平然としてる。


「お前は、私を裏切った。

 その罪は重い」


「別に裏切ったわけでは……」


「それに……これ以上、私のソフィアを、怖がらせるなら、容赦はしない」


「は? 私のソフィア……」


 あっ、すさまじい力の波動を発してる人と、ガッツリ目が合っちゃった。


「「……」」


 な、なに?

 なんで私を見て黙り込むの! なにこの気まずい空気っ!?


「まったく……本当に貴方達は何をしているのよ?」


「マリア先生っ!」


「ソフィーちゃん、遅くなったわね」


「いえ……ん?」


 見間違い、もしくは幻覚かな?


「マ、マリア先生」


「どうかしたかしら?」


「その手にぶら下げているのはいったい……」


 なんか、めっちゃ既視感があるんですけど……


「あぁ、ね。

 懲りずに学園に侵入しようとしてた、教団のおバカさんよ」


「あの……ものすごく見覚えがある人なのですが……?」


 身動きが取れないように簀巻きにされて、猿轡をつけられてるけど……間違いない。

 マリア先生に連れられてるのは、教団……光の使徒の最高幹部、十使徒が1人。


 このまえの騒動で私達のまえに立ちはだかった第七使徒、慈愛のピア!!

 なんでピアがここにっ!? あのとき、八魔王が一柱ヒトリである鮮血姫ルーナ様に倒されたはずじゃ!!


「まぁ驚くのも無理はないわね。

 あの時、ソフィーちゃん達が戦ったのも、ここにいるのも分体で本体じゃないのよ」


「っ!!」


 分体……いやまぁ、今にして思えばピアよりも格下、十使徒の末席だったナルダバートも使ってたわけだし。

 ピアが分体を使えても不思議じゃないのかな?


「それにしても……随分と派手にやってくれたわね?」


「あ、あはは……あの結界を破るにはこうするしか……」


「……」


「申し訳ありませんでした」


 お、おぉ〜、さすがはマリア先生!

 あの圧倒的な力の波動を放つ人を、一睨みにで謝らせた!!


「レフィーお嬢様もですよ。

 お戯はそのくらいにしてくださいませ」


「むっ、シルヴィア……」


 今度は誰!?

 なんかいつの間にかレフィーちゃんの隣に、メイド服に身を包んだ絶世の美女が……


「むぅ〜、シルヴィアが言うのなら、仕方ない。

 今は特別に、許してあげる」


「まっ、そういうことだ。

 無駄な抵抗はせずに降伏した方が身のためだぞ?」


 ガルスさんまで!!


「はぁ……わかってますよ、師匠」


 し、師匠っ!? 今あの人、ガルスさんのことを師匠っていった!?


「もともとお嬢様とやり合う気なんてないですよ……」


 うん、もうわけがわかんない。

 なんか全員集合! って感じだけど……誰か! この状況を説明してくださいっ!!

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