第169話 轟く雷鳴
「流石のソフィアさんでも驚いたみたいね。
まっ、学園の妖精を見た者には幸運が訪れるって言われるほどだし、ソフィアさんが驚くのも当然だけどね」
「えっ? その……」
いや、確かに驚きはしましたけど……そうじゃなくてですね。
サリエラさんは昨日も目の前に、レフィーちゃんがいたってことに気づいてないみたい。
まぁ私が腕に抱いてた子ネコが、レフィーちゃんが変身した姿なんてさすがに思わないだろうし……うんうん、サリエラさんが気づかないのも無理はない。
「あっ! 見て見て!!
レフィー様がこっちに手を振ってるよ!!」
「そ、そうですね……あはは〜」
うん、ややこしいから昨日のことは黙っておこう。
それにしても……レフィーちゃんが審査席の机いっぱいに広げてる大量のお菓子。
もしかしてあれ全部、各学園の生徒達から貰った貢ぎ物なのかな?
「さっそく一次選考に参りましょう!!
一次選考の内容は応募要項にもあるように、各出場者による3分間の自己PR! ご自身の魅力を存分に伝えてください!!」
「自己PR……」
さて、どうしたものか。
私はミラさん達にいきなり参加させられたから、応募要項なんて一切知らないし。
自己PRなんて考えてないんですけど……
「う〜ん……あっ!」
さっき解説? 実況? の人がいってたように、もう私が……オルガマギア魔法学園の新人戦で優勝したソフィアが、ナルダバートを倒した冒険者ソフィーだって噂は広まってる。
とはいえ! 私自身が表立って冒険者ソフィーだって明言したことはないし……よし! ここまで来たらもうこの際、はっきりと私が冒険者レフィーの正体だって宣言しちゃおう。
「むふっ」
幸いなことに、この交流会で発表される技術や研究内容とかは結構重要なものが多い。
そのため発表した技術とかを流用して悪用されないために、この交流会に参加する一般客には交流会で知り得た情報を流出できないように制約魔法を結ばされる。
そして学生や教師陣はいわずもがな。
こっちは学園に入学したとき、学園に就職したときに情報漏洩を禁止する制約魔法を結んでる。
つまりっ! たとえこの交流会で、知り合いに会おうとも……
私の本当の身分。
私がイストワール王国のルスキューレ公爵令嬢にして、第一王子セドリックの婚約者だと知ってる人に見られても、それが外部に露見することはない!!
「なにかいい自己PRを思いついたようね」
「はい!」
むふふ〜! もし私が冒険者ソフィーだって公言しちゃえば、話題になること間違いなしっ!!
なんで私がミスコンなんて……って未だに思わなくはないけど、ここまで来たらもう後戻りはできないわけだし!
どうせやるなら当然! 優勝を目指すっ!!
サリエラさんや、他の出場者の人達には悪いけど……栄えある初代ミス三大学園の座! この私、ソフィア・ルスキューレが貰い受けてやるわっ!!
「む……」
ん? レフィーちゃんがいきなり空を見上げて……
「っ!?」
なに、これ……
「では! エントリーナンバー1番……」
────ッ!!!!
実況の人の声を掻き消す轟音が。
大地を揺るがし、空を青白く染め上げる雷鳴が鳴り響き……
パリィッン!!
王立神聖レフィア学園を守っていた結界が砕け散る。
「間違いない……あの人だ」
「ソフィアさん、大丈夫?
いったいなにが……」
「サリエラさん、下手に動かない方がいいです」
さっき一瞬だけ空から感じた膨大な、まさに圧倒的といえる凄まじい力の塊。
今はそれほどでもないけど……学園の結界を簡単に打ち砕き、雷鳴と共に現れたあの人から感じる魔力と同じ……
「あの人はやばすぎます」
なに者かは知らないけど……はっきりいって、今の私とではまるっきり格が違いすぎる。
一応ミラさん達は結界を展開してるけど、それもどこまで意味があるか……
「はぁ」
「っ!」
来るかっ!?
「やっと見つけましたよ……お嬢様」
「えっ……」
今なんて?
聞き間違いかな? あの人いま、レフィーちゃんに向かってお嬢様っていったような気が……
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