第158話 帰るとしましょう!!

「ミネルバ、なにを……」


 だって、今回の騒ぎはピアに洗脳されて……操られて起こしたことじゃんか!

 ミネルバに責任なんてまったくないっ!!


「お父様! ミネルバはピアに洗脳されていたんです!!

 ミネルバには非はありません!!」


 せっかくミネルバとも仲良くなれたのに……ピアに洗脳されて、操られていたミネルバが罰を受けるなんてあんまりだわ!


「ソフィアお姉様……ありがとうございます。

 ですが、今回の騒動は全て、私のくだらない劣等感や嫉妬心が原因。

 それに、このような騒動にまで発展してしまった以上、誰かが責任を負う必要があります」


「でも!」


 ピアは教団の……光の使徒の最高幹部である十使徒の一角!

 それも、末席だったナルダバートよりも上位で強い第七使徒? だったらしいし。

 もし仮に、ミネルバの負の感情が根底にあったとしても! ミネルバがピアに抗えるはずがないっ!!


「ふむ……確かに、エルヤード嬢の言う事にも一理ある」


「お父様?」


「これ程の騒動に発展してしまった以上、国の内外に何らかの発表しなければならない。

 つまり、誰かがこの騒動の責任を背負う必要がある」


 な、なにを……


「そして、君は国王であるエルヴァンや王妃であるフローラ……両陛下の前でアレだけの事をした。

 なんのお咎めもなしと言うのは難しい、下手をすると極刑すらあり得るだろうけど……エルヤード嬢、君はそれも覚悟の上なのかな?」


「お父様!」


「もちろんです」


 ミネルバまで!?


「私がしでかしたことは、紛れもないイストワール王国に対する叛逆です。

 むしろ、公開処刑されるのが当然でしょう」


「そんな……ウェルバー殿下もなにかいってください!!」


「……」


 自分の婚約者がこんな状況なのに、なんで黙り込んでるのっ!?


「本気、のようだね」


「お父様! ミネルバはピアにっ!」


「ソフィー、どうやら彼女の覚悟は固いようだ。

 まだ幼いのに、ここまでの覚悟があるなんて大したものじゃないか。

 まぁ尤も、そんな覚悟なんて必要ないだろうけどね」


「へっ?」


「公爵様、それはいったい……」


「ソフィーの言う通り、エルヤード嬢は敵の洗脳下にあった。

 それも、相手が教団の最高幹部となると、情状酌量の余地は十分すぎるほどにある」


「じゃあミネルバは……」


「何かしらの罰を受ける事はないと思うよ」


 よ、よかった〜。


「で、でも私は……」


 ミネルバが困惑してるけど、細かいことは気にしない!!


「でも! じゃあなんで、わざわざこんな問答を?」


「いやぁ、焦ってるソフィーが可愛くてつい……」


「……」


 お父様……


「そ、それに! なにも問題がないわけじゃあないんだよ」


「問題?」


「エルヤード嬢は罪に問われなくても、エルヤード公はそうはいかない」


「あっ」


 そういえば、エルヤード公爵のことを忘れてた。


「敵の洗脳下にあったエルヤード嬢の誘導があったにせよ、彼は自身の判断でソフィーに冤罪を被せようとし、帝国の皇帝陛下に対する数々の無礼。

 それ以外にも色々とね」


 むぅ〜、確かにエルヤード公爵は色々と悪どいことに手を出してそうだもんね。


「恐らく、最低でも爵位の剥奪に投獄は免れない。

 そうなるとエルヤード嬢もただではすまない……というわけで! エルヤード嬢、我がルスキューレ家の養女になる気はないかな?」


「へっ?」


 おぉ〜! さすがはお父様! ナイスアイデアっ!!


「ちょっ! ルスキューレ公っ!!」


「ウェルバー殿下、申し訳ないが私にはソフィーと、ソフィーを姉と慕う彼女を引き離す事なんてできません!!」


「?」


 なんでここでウェルバーが?


「あぁ、実はソフィー達がダンジョンに向かう前に、ウェルバー殿下から相談を受けてね」


「相談、ですか?」


「そう、ウェルバー殿下としては、ここでウェルバー殿下とエルヤード嬢は死んだ事にして他国に亡命をしようと考えてたようでね。

 事前に手助けをして欲しいと相談されていたんだよ」


 ほほう、さすがは兄よりも優れた弟!

 そこまで考えていたとは……だからミネルバが罰を受けるっていい出したときも、黙ってたのか。

 まぁ、ルスキューレ家の養女にって提案は想定外だったみたいだけど。


「ウェルバー殿下、ミネルバは私の妹です!

 たとえ王族が相手だとしても、そう簡単には渡しませんからね!!」


「ソ、ソフィアお姉様っ!?」


「ね! お母様っ!!」


「ふふっ、そうね。

 私の娘になった以上、望まない結婚なんて絶対にさせないわ」


「あ、あの! 私は……」


「あぁ! もうわかりましたよ!!

 僕の練った計画が……はぁ、帰ったら早々にパワーバランスの調整をしないと……」


 よし! ウェルバーも納得したようだし。


「では! 改めて、帰るとしましょう!!」

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