第157話 大団円……?

「と、いうわけなのです」


「つまり、ルミエ様が仰っていた〝あの人〟は、八魔王が一柱ヒトリである鮮血姫ルーナなのね?」


「それで、その鮮血姫がソフィー達を助けてくれたと」


「その通りです!」


 ルーナ様の力はまさに圧倒的っ!

 私が手も足も出なかったピアを、なんでもないかのようにあっさりと瞬殺しちゃったし!!


「そして、鮮血姫の加護を授けられたんだね?」


「はい!」


 その通りなのですよ、お父様!

 そしてっ!!


「頭もなでなでされちゃいました!!」


「あはは……まったく、ソフィーは……」


 むっ、なぜかエレンお兄様に苦笑いされてしまった。


「まぁ、ソフィーは昔から鮮血姫に憧れてたからね」


 アルトお兄様まで……だって、ルミエ様から聞いたルーナ様は、まさに私の理想の姿っ!!

 冷静沈着なクールビューティーで、気品に満ちいるにも関わらず、どこか妖艶な雰囲気がある。


 そしてなにより……支配者然としたあの態度!!

 決してルーナ様の楽しみを邪魔してはならないと…… 苛烈で無慈悲な女王の怒りを、買ってはならないといわれるほどの圧倒的な実力っ! もう、カッコよすぎるっ!!


「まぁ、大体の状況はわかったよ。

 しかし、まさか教団の最高幹部が暗躍していたは……本当にソフィーが無事でよかった」


 もう、お父様ったら……ここにはウェルバーとミネルバもいるのに、また抱きしめるなんて!!


「あ、あはは……」


「本当に、お姉様がご無事でよかった……!」


 ……ミネルバは若干ズレてるけど、ウェルバーは苦笑いしちゃってるじゃん!

 こ、この恥ずかしい状況をどうにかしなければ!!


「あっ、そういえば! ピアが王都も大騒ぎになってるって、いってたのですが……」


 この場にアルトお兄様の転移魔法でやってきたのは、お父様達とルミエ様のみ。

 ファナもマリア先生も皇帝陛下達もいないし……


「あぁ、実は……」


「ソフィーちゃんがウェルバー殿下と一緒にダンジョンに向かった直後に、魔物の軍勢が大挙して押し寄せたのよ」


「ユリアナ、それ私のセリフ……」


「それも、ただの魔物じゃないわ。

 アレは無理やり限界以上に強化された上に、洗脳されて理性を欠如した魔物達ね。

 まっ、それでもあの程度の雑魚は私達の相手じゃなかったけどね」


 なるほど……つまり王都には野生の本能を喪失して、死を恐れることのない魔物達が何者かによって強化された状態で押し寄せたと。

 まぁ確かに脅威ではあるけど、その程度ならルミエ様のいう通りお父様達にとっては大した脅威じゃない。


 なにせ、王都にはお父様やお母様、お兄様達にお姉様達をはじめ、ルミエ様にマリア先生や皇帝陛下達もいたわけだし。

 それこそ、魔王の軍勢が攻め込んできても撃破できる戦力だと思う。


 まぁ、お姉様達はルスキューレ公爵家のお屋敷を守ってくれてるから、戦闘には参加してないだろうけど。

 とにかく! それだけの戦力がいたにも関わらず、そのマリア先生達がここにいないってことは……


「厄介なのはその後でね。

 実は……」


「王都に殺到した魔物達全てに、死後発動する強力な呪いが仕掛けられていたんだよ」


「ファナやマリア様達がここにいないのは、それの後始末をしてるからってわけだ」


「お、お前達まで……」


 落ち込んでるお父様はあとで慰めてあげるとして……


「なるほど〜」


 だから、ファナ達はここにいなかったのか。

 まぁ、大賢者たるマリア先生や現人神と謳われる皇帝陛下達は当然として、ファナは回復系統のプロフェッショナルだもんね!


「まぁ、なにはともあれ……これで一件落着ですね!!」


 黒幕だったピアは倒したし、王都の危機もさった。

 洗脳されてピアに利用されてたミネルバも、一緒にダンジョンにきたウェルバーも無事だし!!


「ふぃ〜」


「ソ、ソフィアお姉様っ!」


 あぁ〜、さすがに疲れた〜。

 まぁ、ルーナ様に怪我は治してもらったけど、流した血は戻ってないって仰ってたしね。


 ナルダバートのときと同じで、身体的には無傷でも蓄積されたダメージは残ってるし。

 心身共に疲労困憊で、特に精神的にはボロボロだわ。


 もうミネルバの膝枕で休憩するしかない!!

 これは疲れているだけであって、決して私のことをお姉様って呼んで慕ってくれてるミネルバに甘えているわけではないのだ!!


「アルト兄さん、これは……」


「あぁ、思わぬ強敵ライバルの出現だね……」


「あぁ! ソフィーに妹がっ!!」


「ふふっ、こうしていると本当に姉妹みたいね」


「貴方達ね……」


 じゃあ、状況説明もあらかた終わったことだし……


「帰るとしましょう!」


 これで大団円だわ!!


「それと、ミネルバ! 明日は一緒にお茶会をするわよ!!」


「……」


「ミネルバ?」


 どうして、そんな泣きそうな顔を……


「ごめんなさい、ソフィーお姉様。

 お茶会はできません」


「えっ?」


「私のせいでこのような騒ぎを起こしてしまいました……私にはその責任を取る必要があります。

 正式に罰を受け、裁かれなければなりません。

 ですから……ごめんなさい、ソフィーお姉様と一緒にお茶会はできません」

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