第149話 雷

「うふっ! 許しません?

 貴女が私をですか?」


「他に誰がいると?」


「ふふっ、うふっふっふっふ!

 面白い、面白いですね!」


 この殺気と、禍々しくも強大な魔力による威圧。

 確かにすごいけど……魔王ナルダバートとも渡り合った私が、今更この程度でビビると思うなよっ!!


「ふん!」


 ミネルバは会うたびに数々の嫌がらせをしてきた、性格の悪いお子様だけど……それでも! ミネルバはか弱い貴族令嬢で、まだ8歳の子供だぞ!!

 そんな子供を洗脳までして利用し、あまつさえ用済みとなれば殺そうとするなんて……


「この下種が」


 教団の少女が放つ殺気と威圧……禍々しい闇の膨大な魔力。

 並大抵の者なら絶望に叩き落とされて、抗う気力すら喪失させられるだろうけど。

 受けてたってやるわっ!!



 ッ────!!



 魔力と魔力の衝突。


「「っ!?」」


 周囲を駆け巡った、大地を揺らすような衝撃に。

 吹き荒れる膨大な魔力の奔流に、ウェルバーとミネルバが目を見開いた息を呑む。


「うふっ! 凄い凄い! 流石は特異点たる愛子ですっ!!

 けど……いい加減、手を離してくれませんかねぇ?」


 掴んでいた手から、私の顔に向かって放たられる黒い魔力の塊。

 このゼロ距離でこれを避けるのは至難の業! だけど…… この私には通用しないっ!!


 雷を纏って反射神経を強化っ!!

 さらにっ! 身体強化と、叡智をフル稼働させて……むふふっ! 私がちょっと本気になれば、お前の放った魔力弾なんて止まって見えるのだよっ!!


「はっ!」


「っ!!」


 至近距離から顔に向かって飛来する魔力弾を体を捻って、回転しながら回避しつつ、ガラ空きの腹部に回し蹴りを放って蹴り飛ばす!!

 ……が、手応えはなし、か。


「ふむ……まさか、この私が蹴り飛ばされるとは、なかなかやりますね」


 このヤロウ……自分から後ろに飛んで、完璧に回し蹴りの威力を相殺したくせに!

 ニヤニヤ笑いながら、ぬけぬけと!!


「さぁ! もっともっと、貴女の……特異点たる愛子の力を見せてくださいっ!!」


 なめやがって……!


「いいだろう」


 ならば! 様子見なんてやめだ!

 初っ端から全力全開! 本気でいってやるわっ!!


「魔闘法・纏」


 私の本気の戦闘スタイルである魔闘法・纏は、全身に纏った魔力を雷属性に変質させる事で全身に雷を纏うことで、反射速度をはじめとした全ての身体能力を底上げする。

 とまぁ、ここまではいつも通りなわけだけど……


「すぅ〜、はぁ〜」


 今まで以上に全身に。

 表面的に纏うだけじゃなくて、もっと深く……もっともっともっと! 纏うんじゃなくて、全身を雷属性の魔力と一体化させる!!



 バチィッ……



「……魔闘法・イカズチ


 私自身を雷と化すっ!!

 むふっ! 新人戦の決勝でフィルが見せた姿、あのあと根掘り葉掘り話を聞いて私なりに昇華させたのだ!!

 この姿となった私は雷そのもの、物理攻撃なんて当然効かないし……


「っと」



 チンッ



 私の愛刀が鞘に戻る音が鳴り響き……



 ボトッ



 切り落とされた教団の少女の腕が地面に落ちる。


「……は?」


「今の私の全力は、さっきまでの比じゃないですよ?」

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