第142話 王城へ!

「ぇ……」


 第二王子であるウェルバーと、ウェルバーの婚約者であるミネルバが誰かに呪われて昏睡状態?

 まさか、そこまで重篤で危険な状態だったなんて……


「それで、賢者でもあるアルト殿やSランク冒険者であるエレン殿の助けを借りようと思って公爵邸に来たのだ」


 なるほど……確かにこのタイミングで第二王子とその婚約者が、呪いを受けて昏睡状態に陥ってるなんてことが露見したら色々と面倒なことになりかねない。


 まず間違いなく第二王子派閥の貴族達は、セドリックや第一王子派閥、そしてセドリックの婚約者である私を疑うだろうし。

 国民からも疑惑の目を向けられることは確実。


 ただでさえ、今は王位継承争いがいつ勃発してもおかしくない緊迫した状況なのに……そんなことになったら、もはや歯止めが効かない。

 血で血を洗う、泥沼の争いに発展しかねない。


「はぁ……本当に! エルヤード公爵は……」


 自分の娘とウェルバーが呪われて昏睡状態になったことを利用して、私を排除しようしたのはわかったけど……そんなことをしてる場合じゃないのにっ!


「お父様達もです! この状況でなにをくだらないことで言い争いをしていたのですか!!

 ことは一刻を争うというのに……!!」


「ソフィア嬢、一刻を争うとは?」


 今は約400年前の聖魔大戦以降、四大国や不可侵存在とされる魔王の存在。

 そんな微妙なパワーバランスの上で、小さな小競り合いはあっても大きな戦争なんてほとんど起こってない平和が成り立った時代。


 それに、呪いはリスクが大きいことから廃れて久しい魔法。

 私も実際に呪いを見たことは一度もないし、国王陛下達が呪いについて詳しく知らないのも無理はないけど……


「魔法師団や専属医の見立てでは、発熱があり魘されてはいるが命の危険はないとの事だったが……」


 仮にも国家に所属する最高峰の魔法使いや、お医者様がここまで呪いに対して無知だなんて!!


「呪いにはいくつかのステージが存在するのです」


「ステージ……」


「ソフィアちゃん、それはいったい……」


「呪いには様々な種類がありますが、全ての呪いは大きく4つのステージに分けられるのです。

 第一段階ではちょっとした体調不良がある程度ですが、第二段階では発熱、第三段階では昏睡、そして最後には死に至ます」


 そう、アルトお兄様のいう通り!

 そしてウェルバーとミネルバが昏睡状態に陥ってるということは、現在2人は第三段階!!


「どこまで呪いが進行しているかにもよりますが、このまでではウェルバー殿下とミネルバ・エルヤード嬢は死に至るでしょう」


「「なっ!?」」


「そんなっ!」


「とにかく、これからすぐに2人の所へ向かいます!」


「あ、あぁ分かった、すぐに馬車を……」


「その必要はありませんよ。

 ソフィーの言う通り、事は一刻を争う……もたもたしていていては、手遅れになりかねませんので」



 パチン!



 アルトお兄様が指を打ち鳴らした瞬間に視界がパッと切り替わり……はい! 王城に到着!!


「「「っ!?」」」


 まぁ、国王陛下達や騎士の人達が初めての転移魔法に驚くのも無理はない。

 けど! 今は驚いてる場合じゃない!!


「急ぎましょう。

 陛下、案内をお願いします」


「こ、こっちだ」


 陛下の話では、ウェルバーとミネルバが呪われたのは昨日。

 しかも、昏睡状態に陥るほどに強力な呪い……まだ正体を明かしたくはないけど、最悪の場合は私も……


「ふふ、そんな深刻な顔をしないの」


「っ! マリア先生……」


「ここにはアルトやファナ、それに私と変態皇帝もいるのよ?」


 確かに……


「安心しなさい。

 呪い大した問題じゃないわ」


 おぉ〜! さすがはマリア先生、カッコいいっ!!

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