第138話 お断りしますね

「おぉ〜」


 さすがは皇帝陛下!

 イストワール王国の国王陛下と王妃フローラ様に対して、ビシッと! それでいて強者の余裕が感じられるこの態度っ!!


 ソファーに腰掛け、足を組んで、優雅に微笑む!

 これが帝国を統べる皇帝陛下の……その地位も、実力も! 人類の中で限りなく頂点の一角に立つ人の姿!!


 うんうん! これこそが、私が目指すべき姿!!

 たとえ一国の王が相手だとしても下手に出ることはなく、対等かそれ以上の余裕がある堂々とした優雅な態度!


「ネ、ネフェリル帝っ!」


「皇帝陛下!!」


「ち、父上!? 母上っ!?」


 国王陛下と王妃であるフローラ様が驚愕に目を見開いて、そんなお2人を見てセドリックが焦ってる!

 う〜ん、なんか最近しょっちゅう見てるし。


 マリア先生とかガルスさんやルミエ様には変態とかロリコンだって揶揄われてるし。

 お父様達にも結構無碍に扱われてるから、皇帝陛下って既に私の中ではすごい人ってイメージが崩壊してたんだけど……


 ふ〜む、これが帝国の!

 四大国が一角にして400年間無敗を誇る、レフィア神聖王国と並んで超大国と称されるネフェリル帝国の皇帝というネームバリュー!! だけど……


「そのお姿はいったい……」


 そうっ! 国王陛下のおっしゃる通り、今の皇帝陛下はまさしくボロ雑巾と称するに相応しい姿!!

 ボロボロじゃなかったらカッコよかっんだろうけど……ボロボロなせいでイマイチ、ビシッと決まらないっ!


 なんだろう? このなんともいえない残念感。

 すっごく威厳ある態度だっただけに、ボロボロな姿との落差が激しくて違和感がハンパない。


「まぁ、色々とあってね。

 別に何か問題が発生した訳じゃないから気にしなくていいよ」


「そ、そうですか……」


「ち、父上! あの者は僕とソフィア嬢を侮辱し、帝国の皇帝を騙る愚か者ですよっ!?」


「ッ! 愚かなのはお前だっ!!」


「っ!?」


「ネフェリル帝、私共の息子が申し訳ありません」


「まだ子供であり、貴方様のお姿を拝見した事がなかったために貴方様が何方なのか分かっていなかったようです。

 どうかお許しを」


「さっき一度、自己紹介したんだけどね」


「なっ!」


「っ!?」


「まぁ、今は私がこんな姿になってる事もあるし。

 ここはルスキューレ公爵家のプライベートな空間で公の場所ではないから見逃してあげるよ」


「感謝します」


「ありがとうございます」


 う〜ん、国王陛下達も大変そうだな〜。


「な、何故!

 そのような者に頭を下げるなんて……」


 おぉう……国王陛下達の会話を聞いていて、まだ理解してないとは。

 さすがは自分の信じたいことだけを信じて、自分の都合の良いように解釈するセドリックだわ。


「セドリック! お前はまだ、あのお方が何方かわからんのかっ!?

 このお方はネフェリル帝国の……四大国に数えられる帝国の皇帝陛下だ!!」


「なっ!?」


 まぁ、セドリックと王族一家のことはひとまず置いておいて……とりあえず!


「皇帝陛下は近所のお兄ちゃんじゃなかったのか……」


「ちょ! ソフィー、今なんて言った!?

 ボソッと呟いたけど、しっかりきこえたからね!!」


 おぉ〜、さすがは現人神と称される伝説の英雄。

 今の私の呟きを拾うとは……でもこればっかりは仕方ない。

 だって私の中の皇帝陛下のイメージは、ちょくちょく顔を合わせる近所のお兄ちゃんって感じなのだから!!


「っと、それより……」


「ん? あぁ、どうやら彼らも来たようだね」


 まったく……どうして、みんなして公爵邸に来るかな〜。


「おやおや、これはなんの騒ぎで?」


 数名の騎士を引き連れて、でっぷりとしたお腹を揺らしながら我が物顔で現れたのは……


「エルヤード公、何故貴殿がここに?」


「おぉ! これはこれは、国王陛下に王妃陛下、ご機嫌麗しゅう。

 実はそこにいるソフィア・ルスキューレ嬢に用がありまして」


 うわっ! エルヤード公爵が私を見てニヤッて! うぅ〜、鳥肌がっ!!


「ソフィア・ルスキューレ公爵令嬢。

 其方には今、我が娘ミネルバを暗殺しようとした疑惑が掛かっているのだ。

 無駄な抵抗はせずに我々と同行してもらいましょうか?」


「そうですか……わかりました」


「クックック、賢明な判だ……」


「ですが、お断りしますね」

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