第137話 ちょっとお邪魔しているよ?

「……」


 なんかキメ顔でめっちゃカッコつけてるけど……背筋がゾワッてして、鳥肌が立った!

 そもそも! まだまだ最強には程遠いとはいえ、私はセドリックに守ってもらわないとダメなほど弱くないっ!!


「ッ! それ程までに……」


「えっ?」


 な、なに? なに勘違いしてるの?

 いきなり押し入ってきたことに対する呆れ。

 楽しい私の時間を邪魔したことに対する怒り。

 その他もろもろのないまぜになった感情を抑えるために、頑張って黙ってたのに……


「ソフィア嬢、私も会いたかったですよ」


「っ!?」


 私って! 、ってなにっ!?

 誰がいつ、セドリックに会いたかったなんていったのよ!!


「あはは、これが噂のソフィーの婚約者か……ソフィーも大変だね」


「はぁ……もう慣れましたよ」


 王子妃教育で文句のつけどころがないと称されたこの私にため息を吐かせるとは……さすがというか、何というか。

 そりゃあ、いくら前世の記憶が。

 乙女ゲームの記憶があるからといって、ここがゲームの中の世界なのか、ただ乙女ゲームに酷似してる世界なのかはわからない。


 ただ1つだけわかるのは、ここで生きている私達にとっては紛れもない現実という事実のみ!!

 まぁ、最初のころからセドリックの印象は悪かったし、セドリックと婚約なんてしたくなかったけど……


 それでも! 5年前、セドリックが私を振り向かせようとして、嫌がらせのように付きまとって来るようになった当初は友人として良い関係を築こうと努力はした。


「大丈夫?」


「大丈夫です」


 ちょっと、この5年間を思い出して頭が痛くなってきたけど……セドリックは何度注意しても、勝手に扉を開け放って私の部屋にも入ってくるわ。

 それを咎めるファナを侮辱するわ。


 しかも、私が注意すれば注意するほど、僕の興味を引こうとしているんですね? とかいって、嬉しそうに笑ってくる始末。

 セドリックは人の話を聞かないし、言われたことも自分の都合がいいように捻じ曲げて曲解する。


「貴様、何者だ?

 彼女が次期イストワール王国王妃だと、僕の婚約者だと知っているのか?」


 うわぁ〜、私が皇帝陛下と話してるのが気に食わなかったんだろうけど……四大国が一角にして、隣国であるレフィア神聖王国と双璧をなして超大国と称される帝国。

 ネフェリル帝国の皇帝陛下に対してなんて態度を……


「勿論、ソフィーの立場も、キミが誰なのかも知っているよ」


「ッ! この無礼者を捕らえろっ!!」


「し、しかし……」


 あれ? セドリックの命令を受けたガイルが他3人の近衛騎士団の方々と一緒に戸惑ってる?


「むふ」


 まぁ、ガイル以外の他3人の方達が戸惑うのも無理はない。

 だって皇帝陛下のことを知らなくても、ルスキューレ公爵家にいて、お父様達と同じ席についてる時点でそれなりの地位にある人物なのは間違いないわけだし。


 でも……セドリックの側近の1人で、乙女ゲームにおける攻略対象の1人でもあるガイルは正義感が強い脳筋タイプ。

 セドリックや同じ側近である攻略対象、ヒロインの話を疑うことなく信じ込む。


 そして主人であるセドリックの命令や、ヒロインのお願いには盲目的に従うおバカのはずなのに……現にナルダバートのときはセドリックと同じようにノックもなしに乗り込んできたし。


「それはやめた方がいいよ」


「何だと?」


「自己紹介が遅れたね。

 私の名前はショウ・アラキ・ネフェリル」


「「「「ッ!?」」」」


 おぉ〜、ガイルも含めてセドリックの護衛をしてた4人の近衛騎士達が一斉に息を呑んで目を見開いた。


「ネフェリル? ふんっ、聞いたこともない名前だな」


 えっ……


「で、殿下っ!?」


 いやまぁ、確かにネフェリル帝国は有名すぎて帝国だけで通じるから逆に正式な国名はあまり聞かないけども!!


「ネフェリル帝国の皇帝だよ」


「帝、国……だと? ま、まさか!?」


「そのまさか。

 キミ達が帝国と呼ぶ国で間違いないよ」


「っ!? う、嘘だっ!!

 第一何故、帝国の皇帝がここにいるっ!? ルスキューレ公爵家とは何の関係もないではないか!!

 貴様が帝国の皇帝だなど嘘に決まっている!!」


 まぁ、帝国の皇帝といえば伝説に語られる存在。

 そんな人がここで普通にお茶を飲んでるなんて、信じられない気持ちはわからなくもないけど……ルスキューレ公爵家と関係ないって……


 ナルダバートの一件で、公爵家と親交のあった帝国の皇帝陛下や大賢者であるマリア先生、冒険王と称されるガスターさん達が協力してたことは正式に発表されてるのに。


「セドリック、何を騒いでいるのだ?」


「そんなに大声をだしたら、ソフィアちゃんがびっくりしちゃうでしょう?」


「父上! 母上っ!

 即座にあの者を捕らえなければなりません!

 私や私の婚約者にして未来の王妃であるソフィア嬢に無礼を働き、更には帝国の皇帝陛下を騙る愚か者ですっ!!」


「何だと……っ!?」


「あ、貴方様はっ!!」


 おぉ〜、国王陛下と王妃であるフローラ様が驚愕に目を見開いてる!

 さすがに、このお2人は皇帝陛下とも面識があったみたいだわ。


「やぁ、久しぶりだね。

 ちょっとお邪魔しているよ?」

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