第136話 デジャブ

 四大国が一角にして、超大国の片割れである帝国……ネフェリル帝国の守護神。

 400年間も帝国を守り抜き、帝国を常勝無敗の超大国へと導いた現人神と称される皇帝陛下を……


 ここまでボロボロになるまで物理的に叱って、さらには伝説に謳われる英雄である皇帝陛下や帝国守護の五姫をまるで配下のように派遣できる〝あの方〟っていうのが誰なのか。


「う〜ん」


 知りたいけど、知らない方がいいような気する。

 でもやっぱり気になるけど……とりあえず、それはひとまず置いておいて!


「厄介な連中、ですか?

 教団っていってましたけど……」


「そう、自らを光の使徒と呼ぶ秘密結社で通称〝教団〟。

 正式な構成員の数も、拠点の場所も一切不明。

 まぁ、実際……」


「皇帝陛下?」


「いや、なんでもないよ。

 とにかく! ヤツらはここ数百年間、歴史の陰に暗躍してきた厄介な連中でね。

 四大国が主導して、評議会でも探ってはいるんだけど殆ど何もわかってないんだよ」


「ほぇ〜」


 評議会っていうと、イストワール王国も含めて殆ど全ての国家が所属してる四大国が中心となって設立された世界最大の国際機関。

 そんな国際機関で、それも四大国が主導して探ってもわからないとは……


「そんな組織……教団が今、イストワール王国で起こっている騒動の裏で暗躍していると……」


「むしろ、今回の騒動がここまで大きくなったのもヤツらが原因である可能性が高い」


「なるほど……」


「ソフィー」


「ん? お父様?」


「そんな変態皇帝と話してないでこっちにおいで」


 へ、変態皇帝っ!?


「お父様! 仮にもネフェリル帝国の皇帝陛下に向かってなんてことをっ!!」


「そうだ! そうだ!

 ソフィー、もっと言ってやって!!」


「実はソフィーにプレゼントがあるんだ!」


「プレゼント!?」


 そ、それはいったい……


「ソフィー……」


「まぁまぁ、そう落ち込まないでください」


「ユミルっ!」


「でも、私は公爵が怒るのも仕方ないと思う」


「確かに……元はと言えば、ショウ様がルスキューレ公とユリアナさんに嘘をついていたのが悪いわけですからね」


「確かに……」


「まぁ、自業自得ですよね〜」


「お、お前らなぁ……」


 皇帝陛下の嘘?


「むふふっ!」


 まぁ、それも気にはなるけど!

 今は……お父様が用意してくれたっていうプレゼントの方が気になるっ!!


「オルガマギア魔法学園に主席入学、さらには新人戦で優勝したお祝いだよ」


「ふふふ、ソフィーちゃんが気に入ってくれるといいのだけれど」


「きっと気にいると思うよ」


「さぁ、ソフィー目を瞑って」


「わ、わかりました!」


 お父様達が用意してくれたプレゼント……な、なにだろ?


「はい、目を開けていいよ」


 あぁ〜! ドキドキするっ!!


「ッ〜! こ、これはっ!!」


「そこの変態皇帝にも手伝わせて作った特別なケーキだよ」


「ッ!!」


 お父様達がまさか……


「あのさ、今更だけど本当にそんなプレゼントでよかったの?

 もっとこう、宝石類とかの方がよかっ……」


「ありがとうございますっ!!」


「……」


 特別なケーキ! さすがは私のお父様達だわっ!!


「ふふふ、ソフィーちゃんに気に入ってもらえたようでよかったわ」


「にゅふふ! 早速みんなで食べましょう!!」


 ケーキ! ケーキ! 美味しいケーキっ!


「ふふっ、すぐに切り分けますね」


「やった!

 っと、そうだ! 皇帝陛下、お父様達についた嘘ってな……」


「お待ちをっ!!」


 あっ、なんかデジャブ……というか、またこのパターンか。



 バンっ!!



「ソフィア嬢っ!!」


「セドリック……殿下」


 このバカ王子は!!

 何度も何度も何度も! いきなり扉を開け放って押し入ってきやがってぇ〜!

 事前に使者を出して、約束を取り付けてから来るってことができないのっ!?


「あぁ、やっと会えましたね」


 私はまったく会いたくなかったけど。


「あの噂のせいでここ暫く会えていませんでしたが、もう大丈夫です。

 私が必ず貴女を守って見せますので」

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