第130話 魔塔選考
どうして……
「……」
どうして、こんなことになっちゃったんだろう?
ゴウッ!!
炎が吹き荒れ。
バリィィィィ!!
雷鳴が轟き。
ドゴォオ!!
水が荒れ狂い。
ヒュッ!!
鋭い風が飛び交って。
「「「「「「「──ッ!!!」」」」」」」
新人戦を観に来た大勢の観客が。
見学している学園の生徒達が沸き立って、歓声をあげる。
まぁ、たった今私達の目の前で繰り広げられてることを考えればみんながこんな反応になるのも大いにわかる。
わかるけども……! 声を大にしていいたいっ!!
「どうしてこんなことに……」
「あはは、まぁまぁそんな死んだ魚みたいな目をしないで」
「フィル……」
「なにせ、これはソフィーを巡っての戦いなんだから!」
だからこそ! こんな顔になっちゃってるのっ!!
「いや〜、でもまさかこんなところで大賢者マリア様と天才と名高い最年少賢者アルト・ルスキューレ様の戦いを観れるとは思ってなかったよ」
そう、フィルのいう通り今……私達の目の前で繰り広げられているのは世紀の戦い!
大賢者と最年少賢者の戦いなんて、そりゃあ私も興味あるし、観客も学生もみんな興奮して見入っちゃうのはわかるよ?
けど……けどだよっ!?
「その理由が私ってっ!」
ことの発端は約10分ほどまえ。
表彰式が終わり、オルガマギア魔法学園の理事長であるマリア先生が終了の宣言も終わって、つつがなく新人戦が終了したかと思ったら……
『ではこれより、魔塔選考に移らせていただきます』
新人戦では審判も務めてた司会のラミネさんがそう口にしたことが全ての始まりだった。
さっき、フィルやミラさん達から聞いた話によると……
魔塔選考とは!
魔導学園都市王国に存在する15の魔塔の主人。
つまりマリア先生やアルトお兄様、その他の13名の賢者の方々がオルガマギア魔法学園の生徒を自身の魔塔にスカウトする場とのこと!!
そんな魔塔選考は年に何回かあるらしいけど、その一回がこの新人戦のあと!
これも毎年行われてる恒例行事で、この魔塔選考は対象が新入生のみだから一年生が選ばれるには1番のチャンスなのだそう。
まぁ、実際にはいかにすさまじい倍率を勝ち抜いた新入生の中でも優秀な成績を収めた者とはいえ、そこはオルガマギア魔法学園クオリティー。
毎年誰も選ばれないことがほとんどらしいけど……今はそんなことはどうでもいい!! 重要なのは……
『では、新人王に輝いたソフィアさんをスカウトしたい魔塔主の方は名乗り出てください』
ラミネさんがそういった直後……マリア先生やアルトお兄様はもちろん、15人の魔塔主全員が名乗り出たこと!!
この場にいない魔塔主、13名の賢者の方々もどうやら魔法で会場を観ていたようで……
一斉に空中に第二魔塔から第十四魔塔って光の文字が浮かび上がり、その下には〝希望〟の2文字!
瞬間、会場全体がどよめきに包まれた。
そして!!
『あら? 流石は我が魔導学園都市王国が世界に誇る十四賢者。
うふふっ、この私とソフィーちゃんを巡って戦う覚悟があるようね』
妖艶な笑みを浮かべたマリア先生の言葉によって会場が静まり返って、第二から第十四魔塔の下に出ていた希望の文字が辞退に変わり……
『あはは、当然じゃないですか。
私の愛しい妹であるソフィーとも仲良しのソフィアさんには、この私の魔塔に所属していただかないと。
こればかりはいくら貴女様が相手でも譲れませんよ』
アルトお兄様が当然のように言い放った。
『ふふふ、私とやる気かしら?
可愛い妹の前で醜態を晒す事になるわよ?』
『その言葉、そっくりそのままお返ししましょう。
可愛い教え子の前で恥をかく事になりますよ? マリア先生』
『ふふふ』
『あはは』
とまぁ、そんなわけでマリア先生か、アルトお兄様か。
どちらが私を自身の魔塔にスカウトするかの争奪戦が勃発したわけだけど……
「ソフィー……ソフィアさんをスカウトするのはこの私だっ!!」
「ふふふ、私はソフィーちゃんの担任なのよ?
私の魔塔に所属した方がいいに決まっているでしょう?」
飛び交う魔法の数々は確かにすごい。
私とフィルの試合は短期決戦を狙ったパワー勝負だったけど、マリア先生とアルトお兄様の勝負は強大な魔法もさることながら、その技巧がすごい。
すごいんだけども……
「うぅ〜!」
私のことを可愛い可愛いっていいながら交互に魔法を放つのはやめてほしいっ!!
恥ずかしすぎるっ!
こんなセリフを……乙女ゲームとかでヒロインが使うこのセリフを実際に使う場面なんてあるのか?
こんなセリフを当然のようにいっちゃうとか、ヒロインってちょっと自意識過剰で恥ずかしいって思ってたけど……
まさに、私のために喧嘩しないでっ! って場面じゃんっ!!
まさか、悪役令嬢たるこの私がこのセリフを使うべき場面に直面することになるなんて……
「まぁ、恥ずかしがる気持ちはわかるけ……ソフィーは愛されてるね」
「むっ」
フィルめ! 他人事だと思って……!!
「あっ!!」
ん? ミラさん……?
「「「「「「「──ッっ!!!」」」」」」」
「っ!」
び、びっくりした〜、なにこのすさまじい歓声。
「ソフィーちゃん! ソフィーちゃん!
決着がついたわよ!!」
なるほど、だからこの歓声なわけね。
まぁ、私にこの戦いの結果は最初からわかってたけど……
「勝者はマリア先生よっ!!」
いかにアルトお兄様といえど、マリア先生には敵わない。
「また腕を上げたようだけど……私に挑むにはまだまだね」
「くっ……言ってくれますね……」
「さて……ちょっと邪魔が入ったけれど。
ソフィーちゃん、貴女を私の魔塔に招待するわ」
肩で息をしながら仰向けになって地面に倒れ伏すアルトお兄様の前に悠然と佇み。
服に砂埃ひとつ付いていないマリア先生が妖艶な笑み浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます