第129話 表彰式

 決勝戦のあと、学園の先生達が荒れた試合会場を整備して会場を整えてから執り行われる表彰式。

 この場で表彰されるのはベスト8まで残った8人だけど、閉会式も兼ねてるから今この場所には出場者210名全員が勢揃いしてて……


「ふふっ、見て見て! ソフィーちゃんったら緊張してるみたい!」


「あぁ〜! 可愛いですね」


「まぁ、ソフィーはああ見えて結構小心者なところがありますからね」


「「「「「「確かに」」」」」」


 だって仕方ないじゃないですか!

 その210名の……正確には私を省いて209名だけど、とにかく! 今年の新入生全員の先頭に私が立ってるんだもんっ!!


 そりゃあ、私は最強を目指してるわけだし、目立つのは大いに結構だけども……この状況で緊張するなっていう方が無理があると思う。

 というか! みんなして確かにってなにっ!?


「むぅ〜」


 私の背後に立ち並ぶ7人。

 フィルが中心に立ち、フィルの左右にベスト4まで勝ち上がった2人。

 左側にミラさん、右側にセリナさん。


 そしてミラさんとセリナさんの隣には私達を除いたベスト8の4人。

 ミラさんの左側にはヘレンさんとムオーラさん。

 セリナさんの右側にはケルンさんとアルバートさん。


 フィル達7人の背後にはSからFまでの7クラスの生徒達がクラスごとに一列になって整列する。

 まぁ、確かにこの場で表彰されるのはベスト8まで残った8人だし、一番綺麗な形で整列してると思うけど……


 なんで整列の方法がこんな形なの!?

 フィル達が仲良く横一列に並んで話してるのに、私だけ1人で先頭に立たされるとは……いやまぁ、優勝者だから仕方ないんだろうけども! クラス数に対して8人だと1人あまるし。


「はぁ……」


 今回の新人戦はベスト8が前代未聞の全員Sクラスだし、私もフィル達とお喋りしたかったのに……


「見て! あそこっ!!」


「ん?」


 ミラさん、いったいなにをそんなに興奮して……


「あっ」


 アルトお兄様がこっち向かって満面の笑みで手を振っ……


「っ〜!!」


 ア、アルトお兄様!? なにやってるんですか!!

 どういうこと? なんでアルトお兄様と一緒にイストワール王国で私の代わりを演じてくれてるルーがここにっ!?


「はっ!」


 そういえば、さっきアルトお兄様が一緒にきた妹も楽しみにしてるっていってたけど……一緒に来た妹ってイストワール王国で私の代わりを演じてくれてるルーのことだったのかっ!


「では、これより上位入賞者の表彰式を開始します。

 まず最初はベスト8の成績を残したSクラス・ヘレン! Sクラス・ムオーラ! Sクラス・ケルン! Sクラス・アルバート!

 以上4名、前へ」


「「「「はいっ!」」」」


 っ! 表彰式が始まっちゃったっ!!

 と、とりあえず! こんな大勢の観客達の前で失態を晒すわけにはいかないし、今は表彰式に集中しないと!

 でも……なんでルーがここに?


「う〜ん」


「続きまして、ベスト4の成績を残したSクラス・ミラ! Sクラス・セリナ!

 以上2名、前へ」


「「はい!!」」


 しかし……こうして改めて見ると、我ながらルーが私にしか見えない!!

 さすがは私のルーちゃん! 素晴らしい変身魔法だわ!!


 この1ヶ月間、毎日寝るまえにルーやお母様、お父様にお兄様達との通信で報告してもらってたけど、これなら事情を知ってるルスキューレ家の人以外にバレないのも頷ける。


「続いて、準優勝者! Sクラス・フィル!!」


「はい」


 いやいや! 納得してる場合じゃない!!

 とりあえず、今は表彰式にちゃんと集中して、アルトお兄様にはあとでしっかりとお話を聞かないと!!


「オルガマギア魔法学園、新人戦優勝者! 新人王、Sクラス・ソフィア!!」


「っ!? は、はいっ!!」


 えっ! えっ!?

 い、いいいいつの間に私の番にっ!? お、落ち着け私!

 とりあえず、優雅な所作を心がけてステージの上で待ってるマリア先生のところまで行かないと!!


「ふふっ、ソフィーちゃんったら考え事をしてたでしょ」


「うっ……す、すみません」


「まぁ、気持ちはわかるけど。

 後でアルトからしっかりと話を聞くといいわ」


「はい」


 さすがはマリア先生。

 私がアルトお兄様とルーに気を取られてたことに気づいているとは……


「ふふふ……こほん、Sクラス・ソフィア。

 新人戦優勝、おめでとう」


「はい、ありがとうございます!」


 まぁ、なにはともあれ! これで私の力を世界に見せつけることはできた!! ……はず。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る