第128話 そっち!?
「ふぅ〜疲れた……」
フィルとの試合よりも、むしろそのあとのアルトお兄様と実況の人との間で繰り広げられた会話のせいで……
「はぁ〜」
アルトお兄様がオルガマギア魔法学園の新入生ソフィアが魔王ナルダバートを倒した冒険者ソフィーだってことを匂わせたあとも、延々と続く恥ずかしいやり取りの数々!!
新人王としての私も、妹としての私もまるで自慢するかのように誉めそやす。
止めようもなく目の前で繰り広げられる公開処刑に尻尾を巻いて転移陣で逃げてきたわけだけど……
「気が重い」
なにせ、学園が設置してる転移魔法陣で転移する先はSクラスに割り当てられた控え室代わりの訓練場。
さっきまではミラさん達も試合会場の観客席にいたけど……
「ソフィーちゃんっ!!」
「むへっ!?」
ミ、ミラさんっ!?
転移で戻ってくると同時に仮面を取っちゃってたから視界と呼吸がぁっ!!
「ソフィーちゃん! アレはどういう事なのっ!?」
「っ!!」
やっぱり……そうなるよね。
そりゃあ、魔王ナルダバートを倒した冒険者ソフィーの正体が今までごく普通のクラスメイトだと思ってた私だったって知ったらびっくりするだろうし……
なにより! 私はミラさん達のお友達なのに、その事実を隠してたってことにショックを受けたはず。
私としてはみんなに話す機会がなかっただけで別に隠してたつもりはなかったんだけど、こんなことならもっと早くに話しておけばよかった!!
「まぁまぁ、ミラさん落ち着いて」
えっ? この声は……フィルっ!?
な、なんでフィルがここに? 救護室に居なくていいの?? っというか、そろそろ息が……
「ほら、ソフィーが苦しそうだし」
「あら! ソフィーちゃん、ごめんね」
「ぷはっ!」
お、落ちるかと思った。
この私を落としかけるとは……お母様やアルトお兄様の婚約者であるフィアナお姉様、エレンお兄様の婚約者のディアお姉様もだけど、やっぱりお胸の攻撃力は侮りがたい!
「ふむ」
抱きしめるだけで敵を窒息させて、意識を落とすことができるなら最強を目指す上で是非とも身につけておきたいスキル!!
まぁ、それにはある程度のスタイルを持ってることが大前提なわけだけども……お母様やお姉様達、ミラさんに比べて私は……
「うぅっ……」
「ソ、ソフィーちゃん!?」
い、いや! 私はまだ10歳だし。
前世の記憶によれば身体は第二次成長期? で成長するはずだし! 乙女ゲームの中の私はそれはもうスレンダーで……
「ス、スレンダー……?」
い、いや! 希望は捨てないっ!!
なにせ私はあのお母様の娘なのだ! 素晴らしいスタイルに成長する!! はず……たぶん、きっと!
「えっ! ど、どうしたの!?
どこか痛いの?」
「いや、たぶんアホな事を考えてるだけだと思いますよ?」
「むっ!」
フィルめ! アホなこととは失礼な!!
「それより! ソフィーちゃん!!」
「は、はい!」
「アレはどういう事なのかしら?」
ニ、ニコニコと微笑んでるはずなのにミラさんが怖い……
「そ、それはですね……」
むぅ〜、アルトお兄様めっ!
そりゃあ、もちろんアルトお兄様にもなにか考えがあってあんな行動に出たんだろうけど……一言いってくれれば先にミラさん達には伝えたのにっ!!
ええい! ままよっ!!
「実は私が魔王ナルダバートを倒した冒険者ソフィーの正体なんです!!」
「そっちじゃなくて!」
「へ?」
そっちじゃない??
「最年少賢者! アルト・ルスキューレ様と知り合いって本当なのっ!?」
「えっ、あの、それはそうですけど……」
「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」
えっ? えっ!? ミラさん達がいってるアレって、私が冒険者ソフィーだってことじゃなくて、アルトお兄様と顔見知りってことなのっ!?
「ソフィーちゃん。
後で賢者アルト・ルスキューレ様について話を聞かせてくれない? お願いします!!」
「そ、それは別にいいですけど……」
こんな真剣な顔で頼まれたら断れない。
けど、みんなして喜んでるところに水を差しちゃって悪いんですけど……
「あの、私が冒険者ソフィーだってことには驚かないんですか?」
「ふふふっ、だってそんな事は同じSクラスのみんなはとっくに気づいてたもの」
「なるほど……」
だからアルトお兄様が匂わせるようなことをいって、私が認めてもそんなに驚かなかったわけか〜。
「ん?」
気づいてた……?
「えぇっ!?」
で、でもなんで!?
「まぁ、さっきも言ったけど、僕達はみんなこの1ヶ月間ソフィーと一緒にすごしてたからね」
「うそ……」
まさか、私の得意な魔法属性のみならず冒険者ソフィーだってことまでみんなにバレてるなんて!!
「っと! そろそろ時間ね。
じゃあソフィーちゃん! 表彰式が終わったら、打ち上げで賢者アルト・ルスキューレ様についての話を聞かせてね!」
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