第7章 新人戦編

第110話 ご所望の物

「ファ、ファナ、もうそのくらいで……」


「ダメです! 何を仰っているんですか、お嬢様!!

 今日は学園内どころか魔導学園都市王国中が、世界中が注目する晴れ舞台なんですよ!」


 いやまぁ、それはそうなんだろうけど。


「オルガマギア魔法学園の新人戦といえば、世界的にも有名な大会なのですから!」


「大袈裟すぎだよ」


 確かにオルガマギア魔法学園の新人戦は有名な行事らしい。

 ミラさん達いわく、優秀な魔法使いをスカウトしたい各国の重鎮が来ることもあるんだとか。

 この大会が重要な大会で、多くの注目を集めてるのはわかる。

 わかるけど……


「そんな事はありません!!

 現にアルト様をはじめ、この大会で優秀な成果を収めて一躍有名になった方は大勢いるんですから!」


「むぅ〜」


 だってぇ〜……鏡のまえに座らされてからもう1時間はこうしてるじゃんっ!!


「ふふっ、もう少しですからこのファナにお任せください!!」


「でも……仮面で顔も隠すんだよ?」


「それでもです!

 オルガマギア魔法学園の新人戦という晴れの舞台! そのような場に出られるお嬢様の身嗜みを整えさせていただくのが私の役目です!!」


 う〜ん、でもマリア先生の説明によれば新人戦は予選と決勝にわかれてて、予選は出場する新入生ををランダムに36の組にわけて総当たり戦。

 そして各組の予選で勝ち抜いた1人、決勝トーナメントに出場できるって感じらしいし。


 入学試験の実技で行われたっていう、的に向かって魔法を放つだけってわけじゃなくて魔法戦闘が行われる。

 それなのにせっかく髪の毛を整えてもらっても崩れちゃうと思うんだけどなぁ……


「……お嬢様は、私にお髪を整えられるのは嫌ですか?」


「そ、そんなことないよ!」


 そんな悲しそうな顔をするのはずるいっ!! そんな顔されちゃったらなにもいえないじゃんか!

 な、なんとかして話題を逸らさなければ……!!


「それじゃあ、頑張るからファナも応援してね?」


「ふふっ、もちろんです!

 ルミエ様と一緒に観客席でしっかりとお嬢様の勇姿を見届けさせていただきます」


 ふぅ〜よかった、なんとか話を逸らせたようだわ。

 まっ、この学園に来て1ヶ月。

 これまで着飾ることもなかったし……よし! もうファナが納得するまでとことん付き合ってあげるとしよう!!


「まったく……ソフィーは甘いわね」


「甘い?」


 それってどういう……


「あら、学園寮の部屋の中だからってルミエはその人の姿でいても大丈夫なの?」


「っ! マリア先生!!」


 いつのまにっ!


「問題ないわ、ソフィーの部屋には私が結界を展開しているからね。

 誰かが部屋に来たらすぐにわかるし、転移で自由に入って来れるのは貴女くらいよ」


 うんうん! ルミエ様の結界を無視して直接私の部屋に転移できるなんて!!

 さすがは大賢者と称されるマリア先生だわ!!


「マリア先生はどうしてこちらに?」


「お嬢様! あまり動かないでください」


「う、うん、ごめん」


「ふふっ、ファナも相変わらずのようね」


「お久しぶりです、マリア様」


「あの、それで……」


「もうすぐ開催式が始まるから、その前にこれをソフィーちゃんに渡しに来たのよ」


 これ?


「はい、これがソフィーちゃんのご所望の物」


「っ!」


 こ、これは……いや、これがっ!

 いつも使ってる物とはちょっと違って、白を基調に淡い青色のラインでなされた装飾!!


「今日の新人戦でソフィーちゃんが着ける特注の仮面よ」


 いつも冒険者として活動するときに使ってる金色が混じったような白銀に紫、2色のラインの仮面もカッコいいけど……


「綺麗〜!」


 こっちは優美な感じがして、これはこれで素晴らしいっ!!

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